生物学・科学に関する雑感。

現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中


2009年07月07日

アリと次世代シーケンサーと高校生

ウィスコンシン大などのチームは、3種のハキリアリと、共生菌類およびバクテリア14種のゲノム配列を読むプロジェクトを開始します。

Sequencing effort to chart ants and their ecosystem

ポイントは、ロシュの協力により、FLX Systemが大量のシークエンスを吐き出してくれることと、アノテーションなどの手のかかる部分を、学部生や高校生に手伝わせる、というところですね。

研究室のUndergradの話によれば、すでに授業中に勧誘が行われている模様です。最新の研究に触れるチャンス!とか言って…。猫の手も借りたいってところですかね。

なんか、この手の話は、どこかで聞いたような…と思ったら、ミルウォーキーの博物館の話でした。ボランティアを巧みに使うのは、ウィスコンシンの伝統か…。
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2009年07月06日

Genome-wide analysis of Notch signalling in Drosophila by transgenic RNAi.

Genome-wide analysis of Notch signalling in Drosophila by transgenic RNAi.
Mummery-Widmer JL, Yamazaki M, Stoeger T, Novatchkova M, Bhalerao S, Chen D, Dietzl G, Dickson BJ, Knoblich JA.
Nature. 2009 Apr 23;458(7241):987-92. Epub 2009 Apr 12.

Notchシグナリングに関する因子のスクリーニングを、ゲノムワイドなRNAi系統コレクションも用いて行った…という論文で、すでに丹羽さんのところでも紹介されていますし、Notchシグナリングの役者はまだまだ沢山あるってことと、こりゃやる気になれば何にでも使える方法ですよ〜という主要なメッセージはOKだと思います。

私が気になっているのは、スクリーニングの「外道」の部分で、ノックダウンにより体色に異常を起こす遺伝子が350くらい見つかっているということです。Supplementary Informationに少し詳細が載っているので、ちょっといくつかの遺伝子に当たってみましたが、これまで「機能未知」とされてきたものが多いようです。pigmentationの研究者にとって、宝の山かも。
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2009年07月04日

The Making of the Fittest

The Making of the Fittest: DNA and the Ultimate Forensic Record of Evolution
Sean B. Carroll (著), Jamie W. Carroll (イラスト), Leanne M. Olds (イラスト)
ペーパーバック: 304ページ
出版社: W W Norton & Co Inc; Reprint版 (2007/9/30)
言語 英語
ISBN-10: 0393330516
ISBN-13: 978-0393330519



ボスのポピュラーサイエンス2作目。ハードカバー、ペーパーバックが米英それぞれから出ているので、お好きなデザインをお選びください。リンクしたのはアメリカのペーパーバックですが(2重らせんの表紙)、イギリスのペーパーバックの方が今は安いようですね(チンパンジーの表紙)。

メッセージは、進化の証拠がDNAに刻まれている、というものです。この手の本は、どこかで聞いたような話で構成されていることが多いですが、本書の場合は、あまりよそでは見聞きしない研究の例が多く、二次文献としてはオリジナリティーが高いと言えるでしょう。アイスフィッシュのヘモグロビン、オプシンの適応進化、など。独特の、知的ながらくだけた文体も魅力のひとつです。

日本語版ももうすぐ出る、と2年くらい前から聞いているのですが、そろそろですかね?
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2009年07月02日

実践生物統計学

実践生物統計学―分子から生態まで (単行本)
東京大学生物測定学研究室 (編集)
単行本: 186ページ
出版社: 朝倉書店 (2004/03)
ISBN-10: 4254420277
ISBN-13: 978-4254420272



なんだか色々な統計手法について、具体例に基づいて解説した本です。研究室の棚にさりげなく置いてあると助かりそうな本です。QTL(量的遺伝子座)マッピングの項目が読みたくて買いました。読んでしっかり理解したかというと…やっぱり良くわかりません。一応、概略はわかっているつもりなのですが、いまひとつピンとこない、というか。座学ではなく実際にやってみるのが一番早道なのかもしれません。実際問題、どのくらいのマーカー密度で、どのくらいの数の交配をするか、というのが解像度を決めるのでしょうが、その具体的数について見当もつかないので。
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2009年07月01日

1Q84

1Q84 BOOK 1 (単行本)
村上 春樹 (著)
単行本: 554ページ
出版社: 新潮社 (2009/5/29)
ISBN-10: 4103534222
ISBN-13: 978-4103534228



空前のベストセラーですから、お祭り気分で読んでみるのもよいかと。

「ねじまき鳥クロニクル」以降、歴史や宗教などの社会派テーマを取り入れるようになった村上作品ですが、今回は、満洲から引き揚げてきた主人公の父の半生、安保闘争に挫折した人間の行き場所、新興宗教と社会とのかかわりなどをストーリーに絡めようとしています。

重要な登場人物である「ふかえり」と、その影響を受けた人たちの精神世界があまりにもファンタジーなので、それをリアルなものとして受け止められるかどうかで、評価が分かれてしまいそうです。私は、社会派の部分と、ファンタジーの部分がうまく混ざり合っていないように感じました。やはり「ねじまき鳥」が最高傑作だと思います。




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2009年06月30日

Impact Factor 2008

うっかりしているうちに、Impact Factor 2008が公表されていました。

例年通り、定番どころと、気になる動きをメモ。


---有名ジャーナル編---

Nature 31.434 微増

Cell 31.235 微増

Science 28.103 微増

PLoS Biology 12.683 微減

Current Biology 10.777 微増

P NATL ACAD SCI USA 9.380 微減


---気になった動き編---

PLoS Genetics 8.883 微増 かなり高いレベルをキープ

Development 6.812 微減 凋落傾向で心配

Developmental Biology 4.416 減 もっと心配


---常連ジャーナル編---

Naturwissenschaften 2.126 微増

Insectes Sociaux 1.015 大幅減(どうしたー!?)

Zoological Science 1.100 微減

Entomological Science 0.522 減

Journal of Morphology 1.702 微増

Evolution & Development 3.627 微減


---活用してはいかが編---

Journal of Insect Science 0.963 微増
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2009年06月21日

テントウムシの自然史

テントウムシの自然史 (Natural History) (単行本)
佐々治 寛之 (著)
単行本: 251ページ
出版社: 東京大学出版会 (1998/01)
ISBN-10: 4130601717
ISBN-13: 978-4130601719


ここマディソンでは、テントウムシが多く見られ、特に秋の暖かい日には信じられないくらい大量のテントウムシが飛び回り、家にも侵入してきます(おそらく越冬のため)。さすが(?)アメリカの昆虫はエグイなと思っていたら、これは移入種だとのこと。学名を調べてみると、Harmonia axyridis、ん、これはナミテントウでは?

どうも近年、アメリカではアジアから移入されたナミテントウが爆発的に増えて、在来種を駆逐しつつあるようなのです。しかし日本では良く見る黒いモルフ(二紋型、あるいは四紋型というらしい)は、こちらでは見た覚えがありません。斑紋の遺伝様式はどうなっているんだったっけ?と思い、本書をアマゾンにて購入。さすが、同胞種クリサキテントウとの関係も含め、詳しく載っていました。

東アジアでは、多型の比率に明瞭な地理的勾配があり、シベリアでは紅型と斑型が、日本の南部では四紋型と二紋型が優占するようです。マディソンで紅型が多いのは、移入された集団がたまたま紅型だったという創始者効果なのか、緯度に関連した何らかの選択によって優勢なのか。アメリカでも誰かが調べているでしょうから、そのうち論文でもあさってみたいと思います。

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2009年05月20日

盲目の時計職人

盲目の時計職人 (単行本)
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆 (監修)
単行本: 529ページ
出版社: 早川書房 (2004/3/24)
ISBN-10: 4152085576
ISBN-13: 978-4152085573



ドーキンスの代表作の一つであるし、良く売れている本なのだと思います。ダーウィニズム擁護のために書かれているということで、内容的には、これといって引っかかるところもないのですが、相変わらず回りくどいというか、論理展開が細かいので、読んでいて疲れます。それでも確かに勉強になるから読むわけですが。やはり個々の事象なり、学問のトレンドについて深く考えて書かれているようで、基本的な概念について改めて考えるきっかけになるセンテンスに満ちています。

特に分類と分子系統について、また適応進化と分子進化の中立説の関係などへのコメントは、独断的でありながら的を射ていて面白かったのですが、原著が1986年に書かれたことを思うと、これらの分野の勃興期にすでに今日とかわらない結論めいたところに到達しているのに感心しました。
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2009年05月17日

龍樹

龍樹 (講談社学術文庫)
中村 元 (著)
文庫: 459ページ
出版社: 講談社 (2002/06)
ISBN-10: 4061595482
ISBN-13: 978-4061595484



ちょっと宗教の話を。

実験がうまくいかなくてもケロッとしている私を見て、NY育ちのイラン系アメリカ人ポスドクT氏が、「その平静さは、東洋思想に関係しているんじゃないか。禅か?」と言い出しました。T氏に言わせれば、彼を含め他の人は、実験が不調だとかなりはっきり態度に出るが、私はそうではない、と。単に、日本人だから感情表現が控えめなだけのような気もしますが。

しかし、思想的というほどのものではないけれど、努力をするだけしてして、あとの結果はなるようにしかならないと思っています。もっと一般的なことを言えば、そもそも人は、それぞれに与えられた環境の中で本人なりにベストの選択をしているわけで、そしてその選択も、生まれつきの素養と、本人のこれまで過ごしてきた環境に依存しています。つまり自分というのはパッシブなもので、どんな行いにも、その結果にも、究極的な意味での因果的責任をもたない(というか自分という実体が幻想である)ということです。どんなひどい失敗も、「そうなる運命にあった」というだけです。こういう考え方を東洋思想のなかに探すとすれば、仏教の中観派(ちゅうがんは)の考えに近いと思います。

評論家の宮崎哲弥氏は自分の思想は中観派だとして、以下のように述べています。
「『自分』とは独立的実体ではなく、他の『流れ』に依存しながら生起し、一時すらも留まることなく流動している無数の『流れ』の、たまさかの『淀み』に他ならぬ」
[宮崎哲弥(wikipedia)]

中観派の開祖とされるのが龍樹(ナーガールジュナ、西暦200年前後のインドの人)で、大乗仏教の祖とも言われます。仏教を哲学的に突き詰めた人の一人のようです。その考えは、一切は空である、というもので、現代風に噛み砕けば、すべての存在は、関係性のなかで成り立っていて、個別的な存在は重要ではない、ということになるでしょうか。

このような考え方は、現代的にブラッシュアップすれば、科学との相性も悪くないのではないでしょうか。ちなみに私は仏教徒というわけではなくて、実家は神道です。しかし仏教哲学はなかなか深いというか、そこから学ぶべきものは多いと感じています。
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2009年05月15日

遺伝子には何ができないか

遺伝子には何ができないか (単行本)
レニー モス (著), Lenny Moss (原著), 長野 敬 (翻訳), 赤松 眞紀 (翻訳)
単行本: 346ページ
出版社: 青灯社 (2008/02)
ISBN-10: 4862280196
ISBN-13: 978-4862280190



遺伝子概念に関する論考です。遺伝子という概念は、遺伝子Pという概念と遺伝子Dという概念がつぎはぎされたもので、その意味をよく考えろ、という主張のようですが、あまりピンと来ませんでした。遺伝子の実体がかなり正確に把握されつつある現在、あえてその概念の成立過程に立ち返って、複数の方向から到達した概念であることを示すのにどんな価値があるのか、疑問です。もっと言うと、概念をもてあそんでいるだけのように思えます。

がんについての論考もあり、興味深い部分もあったのですが、概念を考え直すばかりで前に進んでいかないようなもどかしさも感じました。例えば、がんは細胞の病気か、組織の病気か、などという問いかけには、現実的な意味があるのか?細胞自体が異常な特徴を示す場合もあるでしょうし、そうでなくて組織レベルでのみ異常がみられるケースもあるでしょう。そもそもここで言う「異常」とはどのレベルの問題を指しているのか?分裂を続けることさえできれば「正常」?何かとても生産的でない議論に付き合わされた気分です。
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2009年05月14日

新しいMacが欲しい

そろそろ新しいMacが欲しい今日この頃ですが、おもしろいニュースがあったのでリンクします。記者はぜったいにMacユーザーでしょうね。ちなみにC研ではMac派とPC派が拮抗しています。

「マイクロソフトのMac批判広告」はMacで作成 (Wired Vision)
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2009年04月10日

人間の測りまちがい

人間の測りまちがい〈上〉―差別の科学史 (河出文庫) (文庫)
Stephen Jay Gould (原著), 鈴木 善次 (翻訳), 森脇 靖子 (翻訳)
文庫: 376ページ
出版社: 河出書房新社 (2008/6/4)
ISBN-10: 4309463053
ISBN-13: 978-4309463056



グールドのリベラルな側面が全開の本作。文庫化されたので読んでみました。

つまるところ、学問の世界で主流派である北ヨーロッパ系の人々が「他の地域の人たちがいかに知的に劣るか」ということを示すために、頭蓋の容積を測ったり、IQを考案して広範な調査を行ったりした、ということです。そして、それらの研究の結果は意図的に、あるいは無意識のうちに歪められていたというお話です。外れ値を意図的に外したり、データのグルーピングを工夫(?)したり、手法はいろいろですが、グールドは時折生データも参照しつつ批判をしています。

舞台は主にアメリカであり、自由の国を標榜しつつも、いかに過去に人種差別的な移民政策を行ってきたか、そしてそれが研究者や政治・行政による「善意」によって行われてきたか、考えさせるものです。現代からみるとナンセンス、滑稽にすら見える事例もありますが、それもグールドの狙いなのでしょう。

多変量解析など統計学の歴史が、優生学と不可分であることもわかり、統計学のマメ知識としても面白いかと。しかし、もう少し統計の中身について突っ込んだ解説を加えてもよかったのではないかとも思います。
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2009年03月28日

生き物をめぐる4つの「なぜ」

生き物をめぐる4つの「なぜ」 (集英社新書) (新書)
長谷川 真理子 (著)
新書: 221ページ
出版社: 集英社 (2002/11)
ISBN-10: 4087201686
ISBN-13: 978-4087201680



4つの「なぜ」とは、進化における、至近要因、究極要因、発達要因、系統進化要因のことです。これは進化生物学をまさに学ぼうとしている人にぜひとも読んで欲しい本です。私も10年前にこれを読んでいれば、人生変わっていたかも…(そのころには、まだ出版されてないけど)。修士課程の研究を始めてしばらくしてから、自分がやっているのは至近要因の研究だと気づきました(遅すぎる)。

時は流れて、いまや図々しくも「究極要因を明らかにするためには至近要因の理解が必須である」と主張する日々ですが、もとを正せば、何も分からずに始めたのが、たまたまメカニズム(至近要因)志向の研究だった、というだけのような気もします。もちろん指導してくれた先生方はわかって狙ってやっていたわけですが。これは個人の人生における歴史的要因(=系統進化要因)ですかね。
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2009年03月25日

余剰博士問題

どうも、余剰博士のシロハラクイナです。余剰博士の問題について、かなり辛辣に、しかし的確な指摘をされているブログを見つけたので、リンクさせていただきます。どこかの研究者の匿名ブログのようですね。気持ちが落ち込んでいる若手研究者の方は、みないほうがいいかもしれません…。

唯乃博の博士万歳

なんというか、辛口ですが、厳しい言い方をするとそんなもんかな、と。言いにくいことをズバッと言ってくれていますし、おおむね同意できます。

でも、このブログで紹介されている、「博士たちのワーキングプア」の番組(テレビ東京・テレビ大阪制作?)に登場する京大のニクラグァ研究者の佐々木さん、とても幸せそうに見えてしまいました。食費を削って、本をどっさり買って、職は非常勤講師だけれど、近い分野の研究者にも評価されているみたいだし、廃業した病院で暮らして、京都の街を自転車で講義に出かけて…。色々な見方があるでしょうけれど、ある種の贅沢というか、充実した暮らしなのではないかと感じました。ちょっとロマンチックすぎるかな?

ついでに、この問題についての個人的な気持ちを書いておきたいと思います。私自身はこの道に進んだことを後悔していませんし、これまで過ごしてきた研究環境も、恵まれているほうだとも思います。生命科学は、分野としても非常に優遇されていますし。

家族には迷惑や心配をかけていますが、自分としては最も幸せな人生を歩んでいると思っていますし、もういちどやり直せるとしても同じ道を選ぶと思います。いや、やり直せるなら認知科学とか、そっちのほうも面白いかもしれない…いずれにしろ、研究者ほど面白い仕事はほかにないと思っています。

おそらく余剰博士の問題は、個々人としては、どこまでわがままが許されるか、まわりの理解が得られるか、という問題ですね。なので、自分ではわがままを貫いているくせに、後輩に同じ道を勧めるのには気がひけます。とはいえ、止められてもそれを振り切って研究者を目指してほしいし、そのくらいのガッツがないと生き残れませんしね。私もいつかこの道を断念しなければいけない時が来るとしたら、潔くやめることもやぶさかではありませんが、いまのところいい風が吹いている気がしますし、このままいければいいなと思っています。研究のみに関して言えば、自分の研究者としての発達段階というか、いまのステージにしては、いまの環境はこれ以上ない最高のものだと思います。

余剰博士問題は、政策的な観点からは、またいろいろな議論がありうると思いますが、自分が政策を立案する立場だった時に、より有効な提案ができたかと問われれば自信がありません。文句をいうのは簡単ですが、ほかにどんな手があったのかと。これについては、自分がたまたまうまくサポートを受けてきているために、批判しにくいということもありますが。
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2009年03月24日

ニッチ構築

ニッチ構築―忘れられていた進化過程 (単行本)
F.John Odling Smee (著), 徳永 幸彦 (翻訳), 佐倉 統 (翻訳), 山下 篤子 (翻訳)
単行本: 400ページ
出版社: 共立出版 (2007/8/31)
ISBN-10: 4320056477
ISBN-13: 978-4320056473
発売日: 2007/8/31



Lewontinの古い論説などを漁っているうちにたどり着いた本。生物は遺伝によって形質を次世代に渡していくけれど、同時に環境にも働きかけ、環境を改変し、その環境をも次世代に引き渡すことができる。いってみれば当たり前のことですが、著者らがそれをきちんと理論化し、研究プログラムに取り込んできたことが重要なのでしょう。

私が取り組んでいる(と思っている)分野、エヴォデヴォ(Evo-Devo)では、いま、明らかに、生態学との接点を模索していて、特に近縁種間での形質の進化を扱う場合には、それぞれの種の置かれている環境の違い、あるいはニッチの違いというものが決定的な要因になっていると思われます。ここの形質が、どのような選択を受けたことによってそうなっているのか?本書で論じられているように、環境は決して不変のものではなく、生物が働きかけることによって変わりうる。そして、環境側から生物へのフィードバックもあることによって、双方が変化していく、と。

とすると、従来の固定的なニッチの考え方は捨てなければならないのか、あるいは、だいたいの場合は、ニッチを固定したものと(近似として)考えて差支えないのか、研究プログラムによってケースバイケースなのでしょう。とりあえず、覚えておくべき概念だと思いました。
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2009年03月23日

Distinct developmental mechanisms underlie the evolutionary diversification of Drosophila sex combs.

キイロショウジョウバエとその近縁グループにおいて、オスの特徴であるsex combの形態の特徴と、その形成メカニズムが、複数回独立に進化しているのでは?という可能性を示した論文。

Distinct developmental mechanisms underlie the evolutionary diversification of Drosophila sex combs.
Tanaka K, Barmina O, Kopp A.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Mar 2. [Epub ahead of print]

sex comb (性櫛) は、キイロショウジョウバエに近いグループのオスのみにみられる特徴で、前脚のフ節にくっついているように見える、黒い櫛状の器官です。種間でバリエーションがあり、縦長のもの(longitudinal)と横向きにちょこっとついているもの(transverse)があります。その発生過程を見てみると、縦長のもののなかに、いきなり縦長に配列した前駆体として形成されるタイプ(Pre-specified)と、横向きに作られた前駆細胞群が、表皮もろとも90℃回転して縦長に配列するタイプ(Rotating)がみとめられました。

さらにこれらは、系統樹上にのせてみると、ばらばらに分布していて、ベイズ法によって (oriental + montiumの) 祖先の形質を推定すると、transverse 45%、rotating 15%、pre-specified 40%と、どの可能性もありえるような結果です。つまりいずれのシナリオが正しいとしても、これらの発生形式の間でのスイッチが複数回独立に起きているであろうという結論です。

ただ、rotatingとtransverseの中間というか、ほどほどの長さのsex combが斜めについている種もいるようなので (bipectinataとかsuzukiiとか)、これらは連続的に捉えることが可能で、pre-specifiedのみが、とても長いsex combを作る場合に起きた特殊化なのかなと思いました。そう考えると、ficusphilaとmontium両グループでこの特殊化が起きて、のこりは長くなったり短くなったり、長いと脚の横幅に収まらなくなるのでちょっと斜め方向に回転したり、というイメージです。
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2009年03月22日

Pigment pattern in jaguar/obelix zebrafish is caused by a Kir7.1 mutation: implications for the regulation of melanosome movement.

ゼブラフィッシュの模様の変異体の解析。動物の模様の理解にとても重要な仕事だと思いますが、原因遺伝子は少し意外なもの。

Pigment pattern in jaguar/obelix zebrafish is caused by a Kir7.1 mutation: implications for the regulation of melanosome movement.
Iwashita M, Watanabe M, Ishii M, Chen T, Johnson SL, Kurachi Y, Okada N, Kondo S.
PLoS Genet. 2006 Nov 24;2(11):e197.

ゼブラフィッシュには色々な模様の変異体があるらしく、jagur/obelixというのは縞模様が幅広くなったり、とぎれとぎれになってしまう変異です。この論文は、その原因遺伝子を特定した、という仕事で、大変興味深く読ませてもらいました。Kir7.1というカリウムチャネルの遺伝子であったとのこと。

ちゃんとレスキューの実験も効いているし、電気生理学的な方法で、変異体はチャネルがおかしくなっていることも示している。じゃあこのタンパクに変異があるとどうして模様が乱れるでしょうか?色素細胞間の連絡がうまく取れなくなるからではないかと考察されていますが、たぶんそうなのでしょう。だとすると、反応拡散モデルとの関係はどうなってしまうのでしょうか。遺伝子のmolecular functionがわかっても、表現型が理解できるとは限らない、ということを改めて考えさせられました。しかしなんといっても、この仕事が、ゼブラの模様形成を理解するために重要な一歩であるのは間違いないでしょう。

同様に、以下の論文ではleopardという、サケ科魚類を思わせるようなスポットパターンをしめす変異体の解析をし、原因遺伝子はconnexin41.8という、細胞間のギャップ結合に関連するものであることを明らかにしています。やっぱり色素細胞の移動と配置がキーポイントになっているような気がします。

Danio is caused by mutation in the zebrafish connexin41.8 gene.
Watanabe M, Iwashita M, Ishii M, Kurachi Y, Kawakami A, Kondo S, Okada N.
EMBO Rep. 2006 Sep;7(9):893-7. Epub 2006 Jul 14.
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2009年03月21日

RNAiヤメタ

ここのところ、RNAiコンストラクトを作ろうとしていたのですが、おきまりの組み替えに悩まされ、関係諸氏と協議した結果、いさぎよくやめることにしました。

ショウジョウバエでは、同一の遺伝子配列を向かい合わせに並べて、プロモーターとつないだものを導入することで、RNAiの実験を行うのが普通です。ゲノム中に導入された後、転写され、ヘアピン構造をとったRNAが、Dicer等で切断されて、siRNAになるわけです。私もかつて別の虫をやっていたときには、in vitro転写で手作りした dsRNAを個体に注射して、体全体に効くことを期待していました。ハエのように、遺伝子導入に基づいた方法ならば、GAL4-UASシステムと組み合わせて、望みのタイミングと場所で、遺伝子をノックダウンできることから、なかなか便利なわけです。

しかし、導入するコンストラクトの準備にはそれなりの手間がかかるし、同一配列を向かい合わせたものをプラスミドに持たせるために、大腸菌の機嫌が悪いと(?)、すぐにそのヘアピン部分を組み替えて捨ててしまうようなのです。まぁこういうことが起こるのは有名な話で、培養時間を短めにしたり、ヘアピンの間にスペーサーを入れたり、組み替えを起こしにくい大腸菌株を使ったり(酵母を使うという技もあるらしい…)、いろいろやってみたのですが、だめ。まだまだ試していないオプションはいろいろあるのですが、他にも平行していろいろやっているので、これだけにこだわることもなかろうということで、やめました。まぁ昔風にいえば転進というやつです。

しかし、今回は戦わずして逃げますが、いつかまた同じ敵に遭遇しそうな予感がしています。
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2009年03月20日

Theoretical analysis of mechanisms that generate the pigmentation pattern of animals.

反応拡散モデルによって動物の模様をどこまで説明できるか?について論じたレビュー。面白いです。

Theoretical analysis of mechanisms that generate the pigmentation pattern of animals.
Kondo S, Shirota H.
Semin Cell Dev Biol. 2009 Feb;20(1):82-9. Epub 2008 Oct 19.

脊椎動物の模様は、やはりだいぶ昆虫の模様と違うようで、体全体を覆うようなパターンがよく見られる気がします。例えば、シマウマとか、ヒョウのような。非常に大きな範囲にわたる模様をどのように制御しているのか、大変興味をそそられます。ショウジョウバエの場合だと、転写因子か何かのプレパターンがあって、その大まかな下書きにそって表皮の着色が起こるのですが、脊椎動物はもうワンステップ、複雑になっているような印象です。

このレビューでは、反応拡散モデル(チューリングモデルとも言われる、発生学の教科書にも良く出てくるアレです)によって、どこまで動物の模様が説明できるのか、そして、現実のメカニズムとどのように対応するのか、ということについて概説されています。数式をほとんど使わず、言葉によって説明してくれているので、私のような数学が不得意なものでもそれなりに理解できます。基本となる水玉模様、入り組んだ縞模様などに加えて、モデルにちょっとした条件を付加することで、ヒョウ柄や渦巻き状の模様なども描くことができるそうです。ジンベイザメの模様もできるのにはびっくり。

では反応拡散モデルが現実にはどのような分子に対応するのか?教科書などでは、もっとも考えやすい例として、拡散速度の異なる二つのモルフォゲン分子を想定していると思いますが、実際にはどうなのか?近年、ゼブラフィッシュの変異体の解析により、そのあたりが一気に解明されると期待されていましたが…。続きはまた、変異体解析の論文紹介として書きたいと思います。私は、数年前に進化学会でこの話のさわりを聞いて以来、興味を持っていたのですが、いつのまにか重要な論文がいくつも出ていたのでした。
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2009年02月24日

Vector and parameters for targeted transgenic RNA interference in Drosophila melanogaster.

キイロショウジョウバエ用の、RNAiベクターの開発と条件検討。この新しいベクターのポイントは、integraseに対応していること、可視マーカーとしてwhiteの代わりにvermilionを使っていること、ヘアピンの間にイントロンを挟んでいること、などです。

Vector and parameters for targeted transgenic RNA interference in Drosophila melanogaster.
Ni JQ, Markstein M, Binari R, Pfeiffer B, Liu LP, Villalta C, Booker M, Perkins L, Perrimon N.
Nat Methods. 2008 Jan;5(1):49-51.

昨日の論文とは別のグループによる、RNAiベクターの論文。p-elementによる導入だと、導入された場所による効果が出てしまって、効果が思ったより強かったり弱かったり、他の系統との統一的な比較が困難になったりするので、integrase系を用いてあらかじめ指定したドッキングサイトに入れられる方が好ましい、ということのようです。

whiteの代わりにvermilionを使っているのは、whiteの発現量(または遺伝子の存在量)は行動に大きな影響を与えてしまうので行動解析に向かない、という欠点を解消するためだそうです。表現型が微妙だから、スクリーニングはしづらいけど…。

私にとって(たぶん)重要なのは、ヘアピンの間にイントロンがあること。昨日の論文では、cDNAの配列を直接に逆向きに接続していて、間には制限部位(6bpのEcoRIサイト)しかありませんでした。ウワサですが、これだとクローニングの際に、組み替えでこの部位を消失しやすいのか、とにかくクローニングが難しくなるのだそうです。なぜイントロンを間に入れることで、それが解消するのかわかりませんが…(ここの根拠については調べている最中)。また、イントロンがあることで、RNAが細胞質に移行しやすくなり、効率が上がるのだとか(ここの根拠も調べています)。

あとは、まめちしきとしては、Dicer-2の過剰発現よりも、単に(エンハンサー+GAL4)のコピー数を増やした方が、効率があがるということ。それから、UASの個数を調節しても、大して効率は変わらないということ。これは、系のうちのどこの部分が律速段階になっているかにもよるんでしょうけどね。

とにかく今このベクターは手元にあるので(誰かが使おうと思って取り寄せてあったが、そのまま…というパターン)、そして昨日の論文のベクターは取り寄せに少し日数がかかりそうなので、とりあえずこちらで挑戦してみようかな。私の材料はmelanogasterではないので、いずれにしろベクターをだいぶ改造しなければいけませんが。
posted by シロハラクイナ at 13:20| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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