生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2009年02月20日

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 02月号

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 02月号 [雑誌]
出版社: 日経ナショナルジオグラフィック社; 月刊版 (2009/1/30)
ASIN: B001P83QTI
発売日: 2009/1/30


スーパーのレジの隣にナショナルジオグラフィックがあったので、パラパラ見てみると、見覚えのあるヒゲもじゃの人が、キリンにすりすりしている写真が載っている…最近マスコミに出ずっぱりのボスです。ダーウィンの生誕200年スペシャルということで、現代の進化生物学者の一人として紹介されているのです。上のリンクは日本語版ですが、たぶん同じ記事が出ていると思います。

また、Discoverのダーウィン特集号にもインタビュー記事が出ています。こちらでは、なぜかフクロウのぬいぐるみを抱えた写真と、スープにハエが入ってしまって困っている写真を掲載されていて、ちょっとカメラマンのセンスを疑いますが…。(もちろんラボ内では大ウケです。)

某有名トークショーにも出ることが決まったそうで(日本で言うと、さんまのまんまとクローズアップ現代を混ぜたような…)、ここしばらくは、時の人ですね。

地元の新聞にも出ているようです。以下のリンクは、インタビュー動画つき。よりによって、ラボでいちばんキタナイ一角で撮影してますが…。実験室っぽくて良い?

Evolutionary biologist Sean Carroll honors Darwin, other naturalists (with video)
posted by シロハラクイナ at 09:22| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月17日

続 Impact Factorとは (数値をつりあげる、よくない方法)

学術雑誌の編集長としては、いかにインパクトファクターを上げるかに関心があるでしょうし、雑誌の置かれている状況によっては(存亡の危機とか…)、数値を上げることが急務になっている場合もあろうかと思います。理想論では、掲載される論文の質が上がれば自然に数値も上がると思われますが、当然どの雑誌もそのような努力はしているはずですので、そのうえさらに、となると何か思い切った方法が必要なのかもしれません。

一時的にしろ、(場合によってはフェアでない)何らかの方法によって数値を引き上げることができるならば、それによって雑誌の人気も高くなり、増えた投稿論文のなかから厳選して掲載することにより、さらに数値が上がる…という好循環が生まれることが予想されるため、そうしたいと思う編集者の方もいるのではないかと思います。

おだやかな方法は、論文の投稿者に対して、同じ雑誌に既に掲載されている論文を積極的に引用してくれるように依頼するというもの。大きな声ではいえませんが、私もそういう要請を受けたことがあります。(採否に関わるタイミングでのプレッシャーではなくて、アクセプトの通知に、これからもよろしく的な感じで書かれていた。)それだけが原因とは思いませんが、実際にその雑誌は、その前後でImpact Facotorが2倍近くに上昇し、その後、数年に渡ってそのままの水準を維持しています。

英語版のWikipediaには、"Manupilation"として、いくつか、数値をひきあげる方法が紹介されています。最も面白かったのが、Impact Factorの不条理さに怒った、ある雑誌の編集者がとった行動。(なお当時の雑誌のImpact Factor 0.66、これはかなり”低め”と言っていいと思います…。)

"Editorial" の記事を自分で書いて掲載し、そのなかで、前年と前々年に同じ雑誌に掲載された論文をすべて引用し、Impact Factorの弊害、それを分野ごとの予算配分に使うことへの異議を述べています。ついでに投稿や掲載の傾向についてのちょっとした分析も加えていますが、これは明らかに"ついで"のようです。何しろ、論文の中で、このように明言してしまっていますので…。
"While the primary goal of this article is to increase the impact factor of the journal, it also provides potentially useful information on the distribution of the articles published in the journal."
"(意訳)この記事の主な目的は、本誌のインパクトファクターを増加させることにあるが、ついでに、この雑誌に掲載された論文の普及に、もしかしたら役立つかもしれない情報も載せておくことにする。”

この結果として、翌年のImpact Factorは、2倍以上である1.44に上昇したとのこと。これで良かったのか、何なのか…。上がったと言って喜んでは、記事の趣旨に反するような気もしますしね。

ちなみに、その記事を読みたい方は以下のリンクからどうぞ。雑誌は、音声医学・言語医学の雑誌のようですね。ともかく面白い編集長ですね。

Reaction of Folia Phoniatrica et Logopaedica on the Current Trend of Impact Factor Measures.
Harm K. Schuttea, Jan G. Svec (2007)
Folia Phoniatrica et Logopaedica 59(6): 281–285.
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月16日

Impact Factorとは

Impact Factor (インパクト ファクター) とは、Thomson Reuters (トムソン・ロイター) によって算出、発表されている、科学雑誌の”質”を示す指標です。ある雑誌に掲載された論文が、2年以内に他の論文に引用された回数の平均を示す、とされています。現実的には、0から50くらいの値をとります。超一流誌といわれるNatureやScienceが、だいたい30前後です。

所属している大学や研究機関が契約していればJournal Citation Reportsから見ることができます。個人で見たい場合には、適当にgoogleなどで検索すると、どなたかが勝手に公開してしまったリストなどで見ることができます。

実際の計算では、例えばImpact Facotor 2007の計算においては、2007年に引用された事例の全てについて、特定の雑誌に2005年に発表された論文を引用した件数と、2006年に発表された論文を引用した件数を合計し、それをその特定の雑誌の2005年、2006年の総論分数で割る、という算出方法です。ですので先ほどの書き方は厳密性を欠きますが、ひとことで説明したらこんなものでしょう。実際に自分で計算する人はほとんどいないでしょうし。

まぁとにかく、善し悪しはともかくとして、研究者は多少なりとも気にしなければいけない数値です。どんな指標や格付けも、鵜呑みにしたり絶対視したりするのは禁物ですし、重視しすぎることによる弊害もありますが、何も情報がないよりはずっとましでしょう。一般的に言われる問題点については、日本語版のwikipediaによくまとめられているようです。
インパクトファクター (Wikipedia)

また、トムソン・ロイターの公式サイトにも、よい解説があります。
インパクトファクターについてのQ&A

英語版のwikipediaはさらに充実していて、インパクトファクターの問題点に加え、雑誌編集部の努力(?)によってつりあげる方法や、世間のイメージによりよく一致する指標の試みなど、とても面白く、勉強になります。
Impact Factor (Wikipedia)

(ところで、なぜいきなりこんなエントリーを書いたかというと、今日すごく久しぶりにアクセス解析を見てみたところ、google経由でこのページに来る人のほとんどが、インパクトファクターに関する検索語で来ていることがわかったからです。ちなみに、次に多かったのが ”バロット” で画像検索というパターン。どんな記事でも、書いてみるもんだ…!)
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月15日

Natural variation in the splice site strength of a clock gene and species-specific thermal adaptation.


Natural variation in the splice site strength of a clock gene and species-specific thermal adaptation.

Low KH, Lim C, Ko HW, Edery I.
Neuron. 2008 Dec 26;60(6):1054-67.

キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は、夏の暑い日には”Siesta" (お昼寝)をします。季節による温度変化が少ない熱帯に住むDrosophila yakubaなどの近縁種にはこの習性が無く、昼寝は、温帯に進出したmelanogasterとsimulansに特有の適応だと考えられているそうです。これは、温度の情報が何らかのかたちで体内時計に作用していると考えられているのですが、この論文では、periodのイントロンが温度依存的にスプライスされることが、その入力の実体だと主張しています。

本当にそのとおりであればすごい論文だと思って読み始めたのですが、しかし論文の後半に行くにしたがってデータが怪しくなっているような気がします。特にFig 5.のレスキューの実験はわけがわからないし…。全くレスキューできていないように見える…。per変異体にmelanogasterのイントロンを付けたper配列を入れようが、yakubaのイントロンを付けたものを入れようが、どっちもしっかり昼寝しているようなのだが…。
posted by シロハラクイナ at 08:24| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月07日

ダーウィン年につき

今年はダーウィン生誕200年。「種の起源」刊行から150年。世界中で様々な記念イベントが行われているようです。

そんなわけで、ダーウィンの思想を継ぐ者として活動中のボスのもとには、連日マスコミの取材がやってきます(ダーウィン年に合わせて、にわかダーウィニストになっているような気がしないでもない。流行に乗るのが本当にうまい)。ナショナル・ジオグラフィックとか、地元のラジオ局とか。先月はBBCの番組制作のためにイギリスに出張していたし、本当にフル回転です。そして、このタイミングに合わせて、ダーウィンと同時代の冒険家たちの活躍の記録をたどった本「Remarkable Creatures
」も書いて、マスコミ露出のたびにしっかり宣伝している…。

今朝ラボに来たら、実験室の一角にテレビの撮影機材が並べられていて、ボスが顕微鏡を覗いて何かしゃべっている…というか、ディレクターにしゃべらされている模様。しかたないので実験室の反対側で、実験を始めたら、「お、あそこにちょうどいいヤツがいるぞ!ちょっと撮らせて。」という感じで否応なく撮影され…。ディスカバリー・チャンネルらしいので、そのうち全世界に放送されてしまうかも。寝癖がついたまま、E.coliのコロニーを拾ってmilliQで薄めている姿が…。

明日は、ダーウィン・デーと称して、学内で記念イベントが行われます。ボスの講演会と、サイン会もあるのだとか…。
posted by シロハラクイナ at 10:36| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月06日

Evolutionary analysis of the well characterized endo16 promoter reveals substantial variation within functional sites.

Evolutionary analysis of the well characterized endo16 promoter reveals substantial variation within functional sites.
Balhoff JP, Wray GA.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jun 14;102(24):8591-6.

アメリカムラサキウニの種内、および近縁種間で、 endo16という遺伝子のcis領域がどのような変異を持つか調べた論文。驚くべきは、転写開始点に近い部分を除けば、cis領域は非常に変異に富み、タンパク質の結合が知られている部分ですら、他の"無意味な"配列と比べても変異の量に変わりがないということ。

これは、cis領域にまったくと言っていいほどに拘束がかかっていないことを意味するのか、はたまた、ネガコンとして使っている"無意味"な配列が、実はしっかり拘束を受けているのか。cis領域内のタンパク質結合配列は、"群れ"をなしている場合も多いので、そのうちのひとつやふたつ無くなっても構わない、そしてそうこうしているうちに偶然に新しい結合配列が生じることで、常にターンオーバーしているのだ、という考え方もできますが、それにしてもまったく拘束されていないということは無いと思うし。単に検出力が低すぎて、選択の痕跡がノイズに埋もれているのか。いまひとつ釈然としない読後感でした。
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月05日

Two or four bristles: functional evolution of an enhancer of scute in Drosophilidae.

Two or four bristles: functional evolution of an enhancer of scute in Drosophilidae.
Marcellini S, Simpson P.
PLoS Biol. 2006 Nov;4(12):e386.

最近になって存在に気づいた論文。私たちとやっていることが近いので、どうしていままで知らずに来たのか不思議なくらいです。

ほどんどのショウジョウバエは、背中に2対の剛毛をもちますが、Drosophila quadrilineata (ダイダイショウジョウバエ)というハエは、例外的に4対の剛毛を持ちます。そしてこれはachaete-scute complexという遺伝子群のcis制御領域に起きた進化によって説明できる、という結論です。quadrilineataのcis領域に、melanogasterのscuteをくっつけて、内在のcis領域を欠失したmelanogasterに導入してやると、ちゃんと4対の剛毛ができるのです。

胸部のトランス・ランドスケープについても勉強になったし、面白い論文なのは間違いないです。しかし、やはり注目しているcis領域に結合する因子を特定できなかったのが弱いところか。melanogasterを含む多くのショウジョウバエにおいて、胸部の前のほうで剛毛ができないように抑制している因子、というものがまだ特定されていない、ということが響いているようです。これでその因子まで特定でき、近縁種も含めてcis制御の進化を辿れていれば、間違いなくNature行きだったんでしょうけど。


関係ないけれど、quadrilineataというのはショウジョウバエの中では美しい種類の一つで、オレンジ色の胸部に、黒い縦縞が入っています。(元M本研の方たちは、Gさんが趣味で飼っていたハエといえばわかってもらえるでしょうか。覚えてないですか?)ショウジョウバエには、他にも明瞭な縦縞を持つものが何種もいるので、その模様の役割や、模様形成のメカニズムも含めた進化の背景にはすごく興味があります。
posted by シロハラクイナ at 13:28| シカゴ ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月30日

An optimized transgenesis system for Drosophila using germ-line-specific phiC31 integrases.

An optimized transgenesis system for Drosophila using germ-line-specific phiC31 integrases.
Bischof J, Maeda RK, Hediger M, Karch F, Basler K.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Feb 27;104(9):3312-7. Epub 2007 Feb 22.

最近はp-elementによる遺伝子導入の代わりに、もっぱらintegraseを使った系を用いています。これはそのシステムの構築を報告した論文。いま私がいるラボでは、この論文が公表される前から、著者たちから系統をもらって使い始めていたようです。p-elementよりも優れている点は、導入効率がやや高いこと、酵素の供給源となるヘルパーを同時にインジェクションする必要がないこと(integraseを生殖系列で発現する系統が利用できるため)、導入場所をあらかじめ指定できるので導入位置の効果を考えずに済むこと、などでしょうか。なお、導入場所となる”着地点”は、marinerというトランスポゾンに乗せて導入してあります。integraseは、p-elementを用いて導入してあります。

ところで、ここからは論文の内容とは関係ないですが…。ラボでは、大量に遺伝子導入系統を作る場合には自分でどんどんインジェクションしないといけないですが、ちょっとやる場合には技官さんにお願いしてしまうのが楽ちんです。導入したいコンストラクトを精製して技官さんに渡せば、しばらくしたら赤眼のハエが渡されるという寸法です(white遺伝子をマーカーとして導入するので、赤眼のハエは導入された遺伝子を持つ個体)。

こういうサポート体制の充実も、研究をスピードアップするのにとても有効だと思います。そのほか、DNAシークエンス、LBやPBSなどの調整、ハエのエサの準備、洗い物、物品の発注など、かなりのことを専門のスタッフさんがやってくれます。それぞれ熟練するとかなりのクオリティとスピードが実現できることなので、ビル単位で専門家がやった方がずっと効率的なわけです。研究者は「考えるのが主な仕事」。また、必ずしもPI(教授など)に向いているとは言えないけれど、大学での研究に携わっていたい人にとって、Research scientistとかResearch associateとかResearch assistantなど色々な職種があって、ほどほどに頑張りながら食っていける場を持てるというのもこのシステムのメリットだと思います。

このような分業はいかにもアメリカ的と言われ、日本の大学ではあまり見られないと思います。理研などリッチな研究機関はちょっとアメリカに近いかもしれません。考えてみましたが、特にこの分業システムのデメリットは見つからない気がします。あえて言うなら、若者に全て自分でやる能力をつけさたり、根性を育てたりする機会を失ってしまう?
posted by シロハラクイナ at 09:44| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月29日

Arcana Naturae

日本在住フランス人のSparnosさんによるブログ「Arcana Naturae」をリンクに追加させていただきました。なんと日仏2言語対応です!

写真のクオリティが非常に高いし、日本の風物を新鮮な感覚で紹介してくれているので、見慣れた風景も違って見えてきます。正直、すべてのものが本物より美しく見える気がします(笑)。見ていると日本に帰りたくなります。

タイトルのArcana Naturaeはラテン語でしょうか?たぶん自然の神秘、みたいな意味ではないかと思っています。ハンドルネームは、…ギリシャ語??ですか?
posted by シロハラクイナ at 11:08| シカゴ ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月25日

Human vision fails to distinguish widespread sexual dichromatism among sexually "monochromatic" birds.

Human vision fails to distinguish widespread sexual dichromatism among sexually "monochromatic" birds.
Eaton MD.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Aug 2;102(31):10942-6.

バードウォッチングをする人にとっては、鳥の羽衣の性的二型はおなじみだと思います。要は、オスとメスで色が違うということです。

私は、バードウォッチャーとしては「カモ好き」なのですが、常々疑問だったのは、マガモはオスが青首といわれる緑の顔でメスが地味な茶色、それに対して非常に近縁で雑種がよく見られるほどのカルガモは、オスもメスも茶色くて区別がつかないということです。近縁種で繁殖行動も似ているだろうに。マガモのオスの羽衣はとても派手で、維持にはコストも掛かっていると考えられ(作るための資源も、捕食リスクの増大も)、シーズンオフにはエクリプスと呼ばれる地味な羽衣で過ごすこともその証拠の一つと言われているはずです。でも近縁種ではオスも地味。鳥のことをちょっと知っている人ならば、こういう例はたくさんあげられると思います。

今日紹介したい論文は、この疑問に対して、意外な答えを与えてくれました。我々が見えていないだけで、鳥たちからしてみれば、多くの鳥(ここではスズメ目のデータを示している)は色彩に二型がある、というものです。人が見てオスメス同色の139種の鳥の標本を用いて、光の反射スペクトルを測定、鳥は一般に紫外光が見えるといわれているので、そのデータに基づいてデータ解析すると、90%以上の種が、鳥から見ればオスメス別の色に見えている、という結果。識別できる閾値の設定によって多少結果はかわるようですが、いずれにせよ驚きの結果です。ということは、そのあたりを歩いているスズメを紫外線撮影したら、オスメスでまったく別の模様に写ったりするのでしょうか…。
posted by シロハラクイナ at 16:50| シカゴ ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月22日

澄江生物群化石図譜

澄江生物群化石図譜―カンブリア紀の爆発的進化 (大型本)
X. ホウ (著), J. ベルグストレーム (著), デイヴィッド・J. シヴェター (著), X フェン (著), デレク・J. シヴェター (著), R.J. アルドリッジ (著), Xian‐Guang Hou (原著), David J. Siveter (原著), Jan BergStr¨om (原著), Richard J. Aldridge (原著), Derek J. Siveter (原著), 大野 照文 (翻訳), 鈴木 寿志 (翻訳), 伊勢戸 徹 (翻訳)

大型本: 232ページ
出版社: 朝倉書店 (2008/03)
ISBN-10: 4254162596
ISBN-13: 978-4254162592



これは買わずにはいられなかった。澄江(チェンジャン:中国雲南省)はバージェス頁岩に優るとも劣らない、カンブリア紀化石の名産地です。カンブリア紀の化石は、小さく平べったいものが多いので、化石図譜との相性はばっちりです。仮に現物を見る機会があったとしても、細部はよく見えないだろうし、よく工夫して撮影された図譜はとても手軽かつ有用だと思います。あのマロカリス類も色々な種類が掲載されているし、ミクロディクティオン(有爪動物っぽいけど体側にプレートがついているやつ)もバッチリ。

あえて不満があるとすれば、値段が高め。「バージェス頁岩化石図譜」よりもさらにお高いです。しかし内容には大満足です。
posted by シロハラクイナ at 16:07| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月21日

Drosophila melanogaster's history as a human commensal.

Drosophila melanogaster's history as a human commensal.
Keller A.
Curr Biol. 2007 Feb 6;17(3):R77-81.

Drosophila melanogaster (キイロショウジョウバエ)が、いかにして世界中に広まったのか、に関するレヴュー。

アメリカ大陸に侵入したのはわずか100年前であるとか、ハワイに侵入したのはハワイ大学から逃げたせいだとか、役に立つような、そうでもないような知識が満載でした。melanogasterのもともとの食物が何だったのかはよく分かっておらず、野生のバナナを含む複数の果物であったのではないかと言われているようです。
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月20日

ぼくゴリラ

「ぼくゴリラ」の短歌で市長賞

朝日新聞より。千葉っぽいニュースではありますが…。新聞に載るまでには多くの関門があるはずなのですが、そのすべてを、どうやって突破してしまったのでしょう。虚構新聞ではなくて、本当に朝日です。
posted by シロハラクイナ at 09:09| シカゴ ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月18日

視覚の心理物理学

視覚の心理物理学 (最新応用物理学シリーズ (3))
池田 光男 (著)
-: 248ページ
出版社: 森北出版 (1995/06)
ISBN-10: 4627840306
ISBN-13: 978-4627840300



最新応用物理学シリーズと銘打ってありますが、実は30年以上前に書かれた教科書です。第1版第1刷は1975年。視覚の特性について、その発見の経緯と、オリジナルの実験を提示しつつ解説しているのがとても良いです。例えば、暗順応のおこる仕組みであるとか、眼球運動の測定法であるとか。ヒトを使った実験をベースに、あとはどうしても倫理的にヒトではできないようなことを、サルやラットの知見で補うことができるので、この分野の知見は哺乳類が圧倒的に充実しているようですね。(少なくとも30年前は。今もたぶん同じ?)側抑制という現象のところに、ちょっとだけカブトガニが出てくるのがほほえましい。確かにカブトガニの複眼は大きいので、視神経ごとのパルスを拾うには良さそうです。

なお、この著者は「どうして色は見えるのか」も書かれています。
posted by シロハラクイナ at 11:55| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(和書) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月17日

Sociobiology as an adaptationist program

Sociobiology as an adaptationist program
Behav Sci. 1979 Jan;24(1):5-14.

ルウォンティンによる、ウィルソン「社会生物学」批判。私はその批判の内容にはあまり興味はなくて、先日触れたマルピーギ管の話の部分を詳しく読みたくて、学内の医学・保健系の図書館でコピーを入手。

学内でだいたい欲しい文献が手に入ってしまうのは、この大学の良いところのひとつです。日本だと、生物学の文献が一番充実しているであろう東大や京大でも、中堅どころのアメリカの大学にはかなわないと思います。(もちろんアメリカの大学は主に英語の文献を収集するだけでいいので、楽なわけですが。)

それで、肝心のマルピーギ管の話ですが、先日引用した部分以上のことは全く書かれていませんでした…。もっと詳しい説明とか、引用文献があることを期待していたのですが。red eye pigment metabolismなんていう書き方は、おそらくショウジョウバエを想定して書いていると思うのですが。ショウジョウバエの複眼色の変異体(whiteとかvermilionとか)ではマルピーギ管の色も薄いことが知られているので、おそらくそのことでしょう。

しかし、考えてみれば内臓の色というのは、まったく自然選択にさらされていない、制約のない状態で進化した色であり、それでも生物によって臓器によって色はさまざまであるというのは面白い気がします。グラスフィッシュのように、(捕食者からの隠蔽のため?)内臓ごと無色にするには、逆にコストが発生するのでしょう。
posted by シロハラクイナ at 19:40| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月15日

Introduction: Experimental Approaches to Testing Adaptation

Introduction: Experimental Approaches to Testing Adaptation
Johanna Schmitt
Am Nat 1999. Vol. 154, pp. S1–S3

生物の形質が「適応的」なものかどうか、判別するのはとても困難なことで、実験的に証明できれば一番なのはいうまでもないけれど、その「証明」にも様々なレベルのものがあると思います。

比較的やりやすいのは、特定の2地域に適応していると思われる地域系統を取ってきて、環境を入れ替えてやり、元よりも適応度が下がったことをもって、元の地域に適応していた証拠とするもの。しかしこれでは、どの形質が、環境のどのような要素との関係において適応的なのか、示すことは難しい。

そこで、生物の形質の側を操作してやって、適応度がどのように変化するか見る。これは理想的ですが、実際にどこまでできるのか、技術的なところが大きな壁ですね。この論文は、そういうチャレンジについてのシンポジウムの特集号のイントロダクションのようですが、興味深いキーワードが多かったため検索に引っかかって目に留まったのでした。

私はマディソンに来てから、ハエの色彩の進化の至近メカニズムに取り組んでいて、それはそれで重要だし面白いのだけれど、やはりそのような形質の進化を引き起こした究極要因と結びついて初めて強力なストーリーになると思っているので、いつかなんとかその境地にたどり着けないか、と考えているのです。いま使っているマニアックなハエでは無理そうだけれど。やっぱり、melanogasterに始まってmelanogasterに終わる、か…。なにしろ、「形質を操作できる度合」でいえば、動物界で間違いなくトップクラスだし…。
posted by シロハラクイナ at 12:18| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月14日

ニワトリの歯

ニワトリの歯―進化論の新地平〈下〉 (ハヤカワ文庫NF) (文庫)
Stephen Jay Gould (原著), 渡辺 政隆 (翻訳), 三中 信宏 (翻訳)
文庫: 326ページ
出版社: 早川書房 (1997/11)
ISBN-10: 415050220X
ISBN-13: 978-4150502201


シマウマが表紙になっているので、下巻のほうにリンクを張りました。グールドのエッセイシリーズ第3作。原著は19871983年*とのことで、さすがに内容は少々古くなってきていますが、それでも十分面白いです。適応主義批判に多くの章が割かれていますが、それも当時の論争の影響なのですね。初めて読んだとき(確かB4かM1くらい)には全く気付きませんでしたが…。

*(leeswijzer先生、ご指摘ありがとうございます。訳者の先生のお手を煩わせてしまった…orz)

下巻の最後に、「シマウマ三部作」として、シマウマ関連のエッセイがまとめられています。特に「シマウマの縞はどうやってできるのか」は大変興味深い仮説を紹介しています。シマウマ好きの人はよくご存知のように(?)、ひとくちにシマウマといっても種によって縞の間隔はだいぶ異なっています。グラントシマウマは幅白い縞で数は少ないですし、グレイビーシマウマは細い縞がたくさんあります。いろいろな動物園をめぐれば、かなりたくさんの種類を見ることができるはずです。(物好きの方は是非。)

Equus_grevyi.jpg

GrantsZebra.jpg

グレービーシマウマ(上)とグラントシマウマ(下)。いずれも英語版wikipediaより。Creative Commons Attribution 2.0, Public domain.

Bard (1977) J.Zool.によれば、種間の縞模様の違いは、胚発生の特定のステージにおいて、縞(またはその位置情報をもつ分子の分布?)が形成されると考えれば、説明がつくのだそうです。いずれの種でも、同じ幅の縞ができるのだけど、その時期が違うのだと。早いステージで形成されると胚は小さいから縞の数は少なく、遅いステージならば大きな胚に多くの縞ができるのだと。ちょっと話ができすぎのような気もするし、実験的に検証されていないので本当にそうかはわかりませんが、エレガントな仮説です。「Developmental Biology」のサイトにわかりやすい解説がありましたのでリンクしておきます。

The Development of Zebra Striping Patterns
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月13日

延長された表現型

延長された表現型―自然淘汰の単位としての遺伝子 (単行本)
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆 (訳), 遠藤 知二 (訳), 遠藤 彰 (訳)
単行本: 555ページ
出版社: 紀伊國屋書店 (1987/07)
ISBN-10: 4314004851
ISBN-13: 978-4314004855

Enchosareta.jpg

ドーキンスの「利己的な遺伝子」の続編である本書は、そこそこ有名なのではないかと思います。しかし著者が自ら「読者が〜専門知識を持っていることを前提としている」、と書いているように、内容がやや難解で、著者の「思考実験」とやらがたびたび出てくるので、行動生態学が得意でない私としては、読みとおすには根気が必要でした。知的パズルなどがお好きな方には面白いのかもしれません。そんなわけで、私は、読み物としてはグールドのほうがずっと好きです。

最近のマイブームである“体色の意味を考える”ことに関して、本書に気になる記述があったのでメモ。ルウォンティンの論文の孫引きになります。

Lewontin(1979)
「昆虫のマルピーギ管の黄色い色は、その色がどんな生物によっても見えない以上、それ自体自然淘汰の対象とはなりえない。むしろその色は、適応的かもしれない赤い眼の色素の代謝の多面発現的結果である。」

マルピーギ管の色のように、他の形質の副産物だとすると、淘汰を受けないからといって必ずしも変異に富むわけではないし、やはり「外から見えないから、見た目に淘汰がかかるはずがない」という点からしか、その色じたいの生態的な文脈での無意味さを示す方法はないのでしょうか。

例えば、真っ暗な洞窟にすむ動物は、体色が真白ないし薄い褐色であることが多いようですが、おそらくそれは見た目の色に関する淘汰から解放された結果なのでしょう(しかし同時に、紫外線から身を守る必要性からの解放の効果もあるかも?)。では、普通に外界を歩行している昆虫は、体色について淘汰を受け続けていて、「必然的に」その色になっているのでしょうか。
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月12日

動物の体色

動物の体色 (UPバイオロジー 52)
日高 敏隆 (著)
-: 120ページ
出版社: 東京大学出版会 (1983/01)
ISBN-10: 4130631020
ISBN-13: 978-4130631020



動物の体色をどう解釈するか、隠蔽や警告など、さまざまな実例を挙げて紹介している、この分野では貴重な入門書だと思われます。アゲハの蛹の色がどのように決定されているか、という話は面白いですし、他にも興味深い現象の実例が多いです。

しかし出版から20年以上経過していますし、読みやすさを意識するあまりか、細部の扱いが甘いように感じました。これはUPバイオロジーというシリーズが、わかりやすさと専門性のバランスをどのように取っていたかという問題でもあると思うのですが、もう少し、個々の現象と、観察者の作業仮説についてシビアな解釈をしてもいいのではという点が多いです。その点では、(書かれた年代が違うので比較はフェアではありませんが、)データの解釈についてシビアである「Avoiding Attack」とは好対照でしょう。
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ 🌁| Comment(1) | TrackBack(0) | 書籍(和書) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月11日

Avoiding Attack

Avoiding Attack: The Evolutionary Ecology Of Crypsis, Warning Signals And Mimicry (ペーパーバック)
Graeme D. Ruxton (著), Thomas N. Sherratt (著), Michael P. Speed (著)
ペーパーバック: 260ページ
出版社: Oxford Univ Pr on Demand (2005/2/3)
言語 英語
ISBN-10: 0198528604
ISBN-13: 978-0198528609



これは面白いです。やばいです。動物の体色、特に攻撃を避けるための、隠蔽、警告、擬態に関するレビュー。

私も子供のころから、誰から教わったのか(たぶん親からでしょうが)、隠蔽色を示す昆虫を見ては「保護色」などと言い、また、当時は教育テレビの番組などでも、よくそのように解説されていました。しかし、実際にその体色が、捕食回避効果を持っているのか、また、どのようなメカニズムで、捕食者から発見されにくくしているのか、ということは、もちろん実験的に示されていないケースがほとんどで、つまり「保護色」のような気がする、という程度の確かさのはずです。この違いは結構重要で、検証された事実と憶測の間には、明確な線を引かなければいけません。

ところが、実際には、研究レベルでもそのような線引きがあいまいであり、批判的に実例を検討しつつ、証明済みのことと、今後検証していくべきことを整理することはとても重要で、本書はその役割をしっかり果たしています。

未検証の仮説で面白いと思ったのは、「Flicker fusion」(訳語は「フリッカー融合」でOKかな?)による隠蔽、というもので、ヘビの横模様がこれにあたるのではないか、ということです。警告色の横縞のヘビが素早く目の前を横切ると、縞模様が融合して別の色に見え、これが隠蔽色になる、あるいは逆に、すばやく動くと単色に見えるヘビが、突然止まるとマダラの隠蔽色になるというものが提案されています。これは、十分な数のヘビが用意できれば検証できそうですが、誰かやりませんかね?
posted by シロハラクイナ at 02:00| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(洋書) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする