生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2009年11月14日

事業仕分け

若手研究者養成のための科学技術振興調整費(同125億円)と科学研究費補助金(同330億円)も削減との結論。
(47NEWSより)

行政刷新会議 「事業仕分け」 評決結果 3日目 第3ワークンググループ (pdf)

一番削ってはいけないところをやってしまいましたね。若手の皆さん、生活に困ったらアメリカに亡命しましょう。

<追記>
投げやりなことを書いてしまいましたが、日本の科学研究の将来に関する深刻な問題であるので、なにか自分にできることはないかと考え、文部科学副大臣の先生に深刻な文面のメールを送りました。読んでもらえるといいのですが。

<追記>
鈴木寛副大臣、中川正春副大臣、後藤斎政務官、蓮舫議員にメールを送りました。またNatureの東京事務所に、本件を取り上げてくれるようメールしました。

何もせずに愚痴を言っていてもしかたないので、皆さんも意見を送ってみてはいかがでしょうか。

「行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください」
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm
鈴木寛副大臣、高井美穂政務官宛 suz-tak@mext.go.jp
中川正春副大臣、後藤斎政務官宛  nak-got@mext.go.jp
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2009年11月13日

見える光,見えない光:動物と光のかかわり


見える光,見えない光:動物と光のかかわり (動物の多様な生き方 1)

見える光,見えない光:動物と光のかかわり (動物の多様な生き方 1)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2009/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




動物の視覚や体色、体内時計などに関する総説集。進化学会@札幌の会場で購入、日本国内を移動中に読んで、その後、船便でアメリカまで輸送され、いま再び手元に来ました。

内容が盛りだくさんで、とても勉強になりました。特にロドプシンについての概説や、複眼の構造についてなど、いままで見たどの教科書よりも丁寧でわかりやすいです。
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2009年11月12日

Is genetic evolution predictable?

Is genetic evolution predictable?
Stern DL, Orgogozo V.
Science. 2009 Feb 6;323(5915):746-51.

またプリンストンからのレヴュー。昨年Evolutionに出たものと似ていますが、少し別の例も出して、形質の進化を引き起こした具体的な遺伝的変異をどのように予測するか、について述べています。

こういうメタ解析的なことは最近の彼らの得意とするところで、よく事例をこれだけ集めるなと感心するばかりですが、例えば形態の進化において、種間の違いはcisの変化による場合が多く、種内や家畜化、栽培化の場合はタンパク質のコード領域にnull mutationが入っている場合が多い、というのはなるほどと思いました。

null mutationによってタンパク機能が失われても、ローカルな集団では環境次第で特に問題なく生存してしまうけれど、そのタンパク機能が再び戻ってくることはないわけで、環境適応への柔軟性を失っていると言えるでしょう。このようなローカルな進化には、ドリフトの効果が強く出るわけで、集団遺伝学の視点が欠かせない、と。

近年、彼らは集団遺伝学とEvo-Devoを融合させようという試みをしていると聞いています。関連する書籍も準備している模様です(polyphenismさんによる紹介にリンク)。なぜ集団遺伝学なのかよくわからなかったのですが、このレヴューを読んで、彼らの考えが少しだけわかりました。(ちなみに、我々のボスは集団遺伝学をあまり評価していません。派手好きだからでしょうか。このあたりが、緻密なDLSさんとの大きな違いだと思います。)
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2009年11月11日

「自分の時代」の終わり


「自分の時代」の終わり

「自分の時代」の終わり

  • 作者: 宮崎 哲弥
  • 出版社/メーカー: 時事通信社
  • 発売日: 1998/08
  • メディア: 単行本




宮崎哲弥氏による評論集。主に雑誌に書かれた記事や短い評論、対談などの寄せ集めです。前半部分はサブカルチャーや世相に関する評論が主なので、あまり読んでも仕方ありませんが、第4部の対談集「神なき時代に信仰を問う」が非常に面白いです。

宮崎氏はどの宗教団体に属しているわけでもないけれど、自身を中観派の仏教者としています。前にも書きましたが、この思想は一見ニヒリズムのようだけれどそうではなく、科学や機械論的唯物論とも相性が良い、魅力的な考え方です。般若心経に出てくる、色即是空というやつです。
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2009年11月10日

Deep homology and the origins of evolutionary novelty.

Deep homology and the origins of evolutionary novelty.
Shubin N, Tabin C, Carroll S.
Nature. 2009 Feb 12;457(7231):818-23.

仲良し3人組で、「またなんかやろうぜ」という企画で書いたレビューだそうです。同じ3人で97年にもレビューがあるのですが、それを踏まえて、ダーウィンイヤーの企画として現代版に仕立てたとのことです。筆頭のShubin氏は、ヒトのなかの魚、魚のなかのヒトの著者でもあり、エボデボ界のリーダーのひとりと言えるでしょう。Tabin氏も、魚類やダーウィンフィンチなど幅広い材料を用いてすばらしい仕事を続けている方です。

このレビューの主眼は、Deep homologyという概念を、最近のEvo-Devoの成果を取り入れた上で再考するというものです。概念自体は、97年のレビューで提唱していたものですが、さらに事例を積み上げようということです。

例として挙げられているのは、後生動物の眼、脊椎動物の鰭と脚、甲虫の角、です。個別にどのような議論がされているのかは、本文をご覧下さい。いずれも、古典的な定義では相同と呼べない構造について、遺伝子発現の類似性を示します。さらにはその遺伝子発現は祖先を共有するらしいこと、そして、構造からは相同性を追跡できないほどに時間が経過した器官どうしに、メカニズムレベルでの「相同性らしきもの」を見出し、このような状況を指し示す用語としての”Deep Homology”を再び提唱しています。

ちなみに、97年の論文はこちら。
Fossils, genes and the evolution of animal limbs.
Shubin N, Tabin C, Carroll S.
Nature. 1997 Aug 14;388(6643):639-48.
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2009年11月07日

Real-time DNA sequencing from single polymerase molecules.

Real-time DNA sequencing from single polymerase molecules.
John Eid et al.
Science. 2009 Jan 2;323(5910):133-8. Epub 2008 Nov 20.

こちらも第3世代シーケンサーについてですが、今年の1月に出ていた論文。巷でも期待されているらしいPacific Biosciences社の技術で、ポリメレースを基盤に固定し、蛍光標識したdNTPの取り込みをリアルタイムで見る方法。

製品化にどれだけ近いかはわかりませんが、潜在的には、ひとつのリードが1000 base以上で、読み取り自体は従来の次世代シーケンサーより4桁速いそうです。(いわゆる次世代シーケンサーは、反応と洗いを繰り替えすので、読み取りは超遅く、読み取り部分を大量に並べることで遅さを補っている。)あとはこの方法でも読み取り部分をたくさん並べれば、大量のアウトプットが可能になりそうです。

私が日本に帰る頃には、若手Bで払える金額で、自分の好みの昆虫のゲノムを受託で読んでもらえるようになりそうです。本気で期待しています。ショウジョウバエ120種ゲノムプロジェクトとか、始まりそうな予感も…。
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2009年11月06日

Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays

Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarray.
Radoje Drmanac et al.
Published Online November 5, 2009
Science DOI: 10.1126/science.1181498

報道で知りました。Science Expressに論文が出ているようです。第3世代シーケンサーの宣伝を兼ねた論文のようですが、コストが低いのがポイントらしく、ヒトゲノムが$4400で読めるようになるというふれ込みです。

DNA断片を増幅してssDNAがボール状にまとまったもの(DNA nanoballs)を作り、これを基盤に固着させたうえで、ラーゲーションベースの方法で、ボールひとつにつき62-70 baseを読めるとのことです。

Complete Genomicsというベンチャー企業からの論文ですので、おそらく近いうちに、パーソナルゲノムのシークエンス、解析サービスでも始めるのでしょう。

ヒト以外の生物でも受けてくれるかはわかりませんが、方法からして、まったくゲノム情報がない生物ではアセンブリが無理かな?もう少し一つのリードが長い方法で、1〜2× くらいで読んでおいて、あとはこの方法で量を稼ぐ、というのがいけそうですがどうでしょうか。
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2009年10月29日

Intraspecific polymorphism to interspecific divergence: genetics of pigmentation in Drosophila

Intraspecific polymorphism to interspecific divergence: genetics of pigmentation in Drosophila
Patricia J. Wittkopp, Emma E. Stewart, Lisa L. Arnold, Adam H. Neidert, Belinda K. Haerum, Elizabeth M. Thompson, Saleh Akhras, Gabriel Smith-Winberry, Laura Shefner
Science 23 October 2009:
Vol. 326. no. 5952, pp. 540 - 544

筆頭著者はC研の先輩で、現在はミシガン大学で独立されている方です。北米のショウジョウバエ、Drosophila americananovamexicanaは、姉妹種でありながら体色が大きく異なっていることが知られていました。americanaが黒、novamexicanaが黄色です。先行研究で、いくつかの遺伝子座がこの違いに関わっていることが推定されていましたが、具体的な遺伝子座にまでは落とせていませんでした。

今回、著者たちはintrogression(この場合の適切な訳語は浸透性交雑でOKでしょうか)によって、体色に違いをもたらす遺伝子座をマッピングし、それがebonytanという、キイロショウジョウバエでもよく知られた体色関連遺伝子に強く連鎖していることを示しています(つまりこれらの遺伝子そのものが正体である可能性が高い)。

ebony近傍は逆位があるため、さらに詳細なマッピングは困難なので、ここでtanに解析を絞り、tanの第1イントロン近傍にまで絞り込みました。piggyBacを用いてamericanatan遺伝子座をnovamexicanaへ導入すると、実際に体色が濃くなるとのこと。

実はamericanaには集団中に体色の多型があり西に行くに従って体色が薄くなる傾向があります。そこで由来の異なった複数の系統を調べてみると、novamexicanaのalleleに酷似したものが見つかりました。つまり、novamexicanaの薄い体色は、americanaの集団中に元々存在していた、体色を薄くするalleleを創始者効果で拾い上げたものか、あるいはnovamexicanaのalleleが遺伝子浸透によってamericanaに広まったか、いずれにしろ、種内多型と種間多型をもたらしているalleleが同一のものだった、というのがこの論文のうりのようです。

テクニカルな面でも、pyrosequenceを使ったり、melanogasterではない種で遺伝子導入をしたり、結構攻めているという印象です。
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2009年10月21日

h 指数

Impact Factorについてばっかり書くと怒られるので、今日は別の指数について書こうと思います。

h指数、またはh-indexと呼ばれるもので、恐ろしいことに研究者個人に点数がついてしまいます。計算方法は至って簡単で、「その研究者が公刊した論文のうち、被引用数がh以上であるものがh以上あることを満たすような数値」ということです。

ここで引用件数と論文の本数が同じhを満たさなければいけないところがポイントで、どんなに高いインパクトの論文を書いても、ただ一報しか書いていなければ、その研究者のh指数は1。どんなに沢山書いても、最大で1回しか引用されていなければ1。

年数を経るにつれ、引用件数は増えることはあっても減ることはないですし、論文の本数も徐々に増えていくでしょうから、年長者が有利なのもポイントです。論文自体の引用件数に基づいていますし、年月を経てから評価される論文も数値に反映されてきます。良い仕事をコツコツ続けた結果が反映されるので、良い指標なのではないでしょうか。

数値の最も高い生物学者は、神経科学者Solomon H. Snyderで、h=191だそうです。

その後に書くとギャップがすさまじいですが、私のh指数は6でした。
(これを引き上げるためには、被引用回数が5〜6回の論文を、頑張ってあと1〜2回、自己引用すればいいわけですが…。操作が効くのはレベルが低いからですが…。)

研究者のキャリアは、特にごく若い頃は論文があるかないか、若手〜中堅になってくるとそれなりに高いインパクトが必要で、ベテランは質と量の両方が重要、と思うのですが、h指数はうまくそれにフィットする気がします。
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2009年10月20日

Novel TCF-binding sites specify transcriptional repression by Wnt signalling.

Novel TCF-binding sites specify transcriptional repression by Wnt signalling.
Blauwkamp TA, Chang MV, Cadigan KM.
EMBO J. 2008 May 21;27(10):1436-46. Epub 2008 Apr 17.

昨日の続きです。TCFは別のドメインを介して全く別の配列(AGAWAW)にも結合して、Winglessシグナリング存在下では転写抑制に働くことも報告されているようです。古典的なTCFの働きとは全く逆ですが、このシステムはWinglessシグナリングで活性化する遺伝子と抑制する遺伝子を最も合理的に制御する方法には違いないでしょう。

このように、単一の転写因子が、結合する配列によって転写促進をしたり抑制したりという例は、私は知らないのですが、何か他にもあるのでしょうか?

TCFは相当にファンキーな転写因子のようですが、あるいは、よく調べられているから色々な機能がわかってきただけで、他の多くの転写因子も、多かれ少なかれこのような複雑な機能を持っているのかもしれません。cis領域の配列から、上流の転写因子をたどれるようになるのが夢ですが、いつかそういう時が来るのでしょうか。ひたすら事例を積み上げるしか無いのか、なにか革新的なアルゴリズムで解けるようになるのか。
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2009年10月19日

Activation of wingless targets requires bipartite recognition of DNA by TCF

Activation of wingless targets requires bipartite recognition of DNA by TCF
Chang MV, Chang JL, Gangopadhyay A, Shearer A, Cadigan KM.
Curr Biol. 2008 Dec 9;18(23):1877-81.

Winglessのシグナリングの転写因子であるTCFがDNAに結合する際に、本命の結合サイトの他に、すぐそばのHelperと呼ばれるサイトも必要としていることを示した論文。

まったくノーマークだった論文ですが、実は自分にとって重要な内容を含んでいます。Winglessのターゲット遺伝子の一つであるnaked cuticle (nkd)のcis制御領域のうち、IntEと呼ばれるエンハンサーに、10bpずつ変異を入れたバージョンを沢山作ってレポーターの発現を比較し、従来から知られているTCF結合モチーフ(SSTTTGW)に加えて、新たなモチーフ(GCCGCCA)を発見、Helperと名付けました。

人工的に構成したコンストラクトをルシフェラーゼアッセイで試してみると、Helperのみでは転写活性が低いけれど、本命のTCF結合モチーフと組み合わせると非常に高い活性を示すことがわかりました。

他のWinglessターゲット遺伝子も調べてみると、Notum, sloppy pairedでもHelperモチーフがあり、さらにUltrabithoraxやeven skippedでもモチーフによく似たサイトがあるとのこと。さらにこれまでWinglessシグナリングに応答するエレメントが知られていなかった遺伝子についても調べ、ladybird lateとpxbという遺伝子についても、cis領域中にTCF結合モチーフとHelperが両方存在し、TCF結合モチーフかHelperのいずれかをつぶすと転写活性が大幅に低下することを示しています。

そして、TCF結合サイトへの結合はHMGドメインが、Helperへの結合はCクランプと呼ばれる領域が担っているとのこと。

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2009年10月10日

Adaptive coloration in animals


Adaptive Coloration in Animals

Adaptive Coloration in Animals

  • 作者: Hugh B. Cott
  • 出版社/メーカー: Methuen young books
  • 発売日: 1940/12
  • メディア: ハードカバー




BookFinder経由でAmazon.comのマーケットプレイスから購入。上記のリンクは1940年版になっていますが、入手したのは1940年のオリジナルが1957年に改訂され、さらに1966年に増刷されたバージョンのようです。新しいバージョンとはいえ、ぼろぼろの古本です。もとニューヨーク州立大学の蔵書だったようです。

動物の色彩研究には書かせないバイブルのような本で、例えばGoogle Scholarによれば、1000回近くも引用されています。カウンターシェイディング(逆影)やディスラプティブカラレーション(分断色)など、基本的なアイディアはこの時代に既にそろって、きちんと体系づけられていたと言えるでしょう。

見所は、膨大な事例が引用されていること、新しい本にはあまりない「ベタな」例を、しっかり押さえてあるところでしょうか。ヨタカとか、カレハカマキリとか。写真は白黒で古い感じは否めませんが、なかなか楽しめます。カラー写真よりも隠れている動物を見つけるのが大変で、一枚だけ、どーーしても、写っているはずの蛾が見つかりません…。
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2009年10月09日

Some fly sensory organs are gliogenic and require glide/gcm in a precursor that divides symmetrically and produces glial cells.

Some fly sensory organs are gliogenic and require glide/gcm in a precursor that divides symmetrically and produces glial cells.
Development. 2000 Sep;127(17):3735-43.
Van De Bor V, Walther R, Giangrande A.

怪しい論文を紹介した効果か、アクセスが増えているので、調子に乗って連続投稿です。こんどはまともな論文です。

研究は思ってもみない方向に行くもので、最近私は神経の勉強をするはめになっています。ハエの翅には、鐘状感覚子(campaniform sensilla)という小さいドーム型の器官があり、飛行中の翅の振動をモニターしていると言われています。外見から見ると、どの鐘状感覚子も似ているのですが、その発生過程をみると、異なった二つの発生様式(neurogenic, gliogenic)があるとのこと。

この論文では、鐘状感覚子の発生過程を丁寧に見て、感覚器前駆細胞から、ニューロン、グリア、その他の細胞が分化する様子を記述しています。

私にとって重要だったのは、L3と呼ばれる翅脈に一列に並んでいる鐘状感覚子の由来が、glionenicとneurogenic、交互に並んでいること、なかでもneurogenicな感覚子は、2つのneuronからなっていることです。これが、私のやっている翅に水玉模様のあるハエでも同様か、模様を形成するシグナルがどの細胞から出ているか、に興味を持っています。
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2009年10月08日

Caterpillars evolved from onychophorans by hybridogenesis

Caterpillars evolved from onychophorans by hybridogenesis
Williamson DI.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Aug 28. [Epub ahead of print]

タイトルを見ただけで絶句してしまいました。チョウの幼虫は、昆虫の成虫とは起源が別で、カギムシなどの別の動物との交雑によって取り込まれた形質だ、という仮説。もう仮説と呼ぶのが不適切なぐらいの超珍説です。エイプリルフール特集かと思ったけどそうではないし、まじめに書いたのだとすればかなりエキセントリックな著者なのでしょう。

内容もずさんで、笑いつつも悲しくなってくるほどの代物です。どうやってPNASに載ったかというと、いわゆる"Communicated by ~"という枠で、要はアカデミーの会員のコネで通したとのこと(なお、この枠は、もうすぐ無くなる予定。)そしてそのアカデミー会員は、…やっぱりあの方でした。エキセントリックな方たち同士、仲が良いようです。

この論文をどのように読めば良いかは、以下の記事によくまとめられていると思います。PNASに掲載されるまでに、7つのジャーナルにリジェクトされたとか。
“Bigwig” ushered “nonsense” paper into top journal, say scientists
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2009年10月06日

ハローウィンに似つかわしいハエ

この時期、マディソン近郊の農場でも、ハローウィン用のカボチャを栽培しているところを見かけます。オレンジ色のカボチャがゴロゴロしているのでとても目立ちます。

中には割れてしまったものもあって、そうするとそれなりに色々な虫が寄ってくるようです。このハエは、この縞々と、野菜を好む性質からして、ヒョウモンショウジョウバエDrosophila (Dorsilopha) busckiiではないかと思います。大きさはキイロショウジョウバエDrosophila (Sophophola) melanogasterと同じくらい、だいたい2mmぐらいでしょうか。

buskii.jpg
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2009年09月30日

サモアで津波

サモアで大地震、津波が発生しているとのニュース。ボスがわざわざみんなに知らせて回っています。というのも、近いうちに数名がサモアに行く予定があったのですが、ハエの米国本土への持ち込み許可を待っている状態だったのです。

この地震のために、少なくとも今年中のサモア行きの可能性はなくなった気がします。道路などが、どのくらいダメージを受けているかにもよりますが。ハエはたぶん大丈夫でしょう。それはそれとして、現地の人々の被害が大きくないことを願うばかりです。
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2009年09月18日

分子進化のほぼ中立説


分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル (ブルーバックス)

分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル (ブルーバックス)

  • 作者: 太田 朋子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/05/21
  • メディア: 単行本




新宿の紀伊国屋で購入。太田先生が「ほぼ中立説」について一般向けに書かれたとあって、買わずにはいられませんでした。しかしブルーバックスにしては難しすぎるし、全体のまとまりもイマイチです。ちょうど、昔から教えている項目に、ところどころ新しいトピックを挿入した大学の講義をそのまま本にしたような印象です。編集部が付け足したとされる、巻末の用語解説もイマイチ…完全に間違っているわけではないけれど、ちょっとちぐはぐです。まぁしかし、フォローしておくと、自分にとってはとても勉強になる本でした。
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2009年09月12日

複雑系入門


複雑系入門―知のフロンティアへの冒険

複雑系入門―知のフロンティアへの冒険

  • 作者: 井庭 崇
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 1998/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




アマゾンのマーケットプレイスから実家に届けてもらい、帰りの機内にて読了。タイトルのとおり複雑系の入門書ですが、とてもわかりやすく書かれています。著者の略歴を見ると、20台前半で、この本を書かれたようです(!)。

自分にとって重要と思われたのは「構成的手法」という概念。工学から持ち込まれた考え方ですが、実際に作りながらメカニズムを解いていく方法ですね。この言葉の本来の意味からずれるかもしれませんが、これをシミュレーションやモデルに限らず、現実の実験で行うことができれば、メカニズムを本当の意味で理解したと言えそうです。

具体的には、ハエの体色を思うがままにデザインすることができれば、体色形成のメカニズムを完全に理解したと言えるでしょう。そう遠くない未来にできると思っています。

全く話はかわりますが、誰もが気になる郡司ペギオ幸夫先生の名前の由来についても記述がありました。以下、引用です。

「ちなみに、「ペギオ」というのは、大方の予想に反して、宗教上のものではない。実は自分の子供につける名前を考えていたとき、ふと思い浮かんだ「ペギオ」という名前が気に入ってしまい、ここ5年ほどそう名乗っているという。一度見たら忘れられないインパクトの強い名前も、まさに無根拠に使われているだけにすぎないようである。」

ちなみに、ペンギンにちなんでいるとの噂も聞いたので、ちょっと調べてみると、茂木先生の日記で言及されていました。しかしブログだというのにすごいクオリティだ…。
茂木健一郎 クオリア日記:友情
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2009年08月06日

カンディード


カンディード 他五篇 (岩波文庫)

カンディード 他五篇 (岩波文庫)

  • 作者: ヴォルテール
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/02
  • メディア: 文庫




進化生物学者にとってはちょっと重要な作品。社会生物学論争における「パングロス主義」は、この作品の登場人物、パングロス博士にちなんでいるそうです。

「この世のすべては最善」というのが、パングロス博士の主張です。生物の形質を論じる際に、無条件に、それが最適デザインであると思いこんでしまう事に対する警鐘として、「パングロス主義」なるレッテルが作られたのだと思います(グールドのスパンドレル論文を参照のこと)。

ちなみに、うちのボスが求める理想のポスドク像は、この作品の主人公「カンディード」なのだとか。かつてNature誌のインタビューでそう答えていました(pdfにリンク)。無邪気で勇敢(そして少しアホ)なのが理想のようです…。
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2009年07月07日

アリと次世代シーケンサーと高校生

ウィスコンシン大などのチームは、3種のハキリアリと、共生菌類およびバクテリア14種のゲノム配列を読むプロジェクトを開始します。

Sequencing effort to chart ants and their ecosystem

ポイントは、ロシュの協力により、FLX Systemが大量のシークエンスを吐き出してくれることと、アノテーションなどの手のかかる部分を、学部生や高校生に手伝わせる、というところですね。

研究室のUndergradの話によれば、すでに授業中に勧誘が行われている模様です。最新の研究に触れるチャンス!とか言って…。猫の手も借りたいってところですかね。

なんか、この手の話は、どこかで聞いたような…と思ったら、ミルウォーキーの博物館の話でした。ボランティアを巧みに使うのは、ウィスコンシンの伝統か…。
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