生物学・科学に関する雑感。

現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中


2011年11月05日

Phosphorylation of Mad Controls Competition Between Wingless and BMP Signaling.

Phosphorylation of Mad Controls Competition Between Wingless and BMP Signaling.
Eivers E, Demagny H, Choi RH, De Robertis EM.
Sci Signal. 2011 Oct 11;4(194). pii: ra68. doi: 10.1126/scisignal.2002034.

Scienceの数少ない姉妹紙であるScience Signalingに掲載された論文。UWでは購読していないので直接は読めないのですが、図書館に複写依頼をしたらその日のうちにpdfがもらえました。紙媒体の雑誌であっても、複写以来をすると電子複写でpdfを送ってくれるのでかなり高速です。このシステムはすばらしい。

この論文は、BMPシグナリングの転写因子であるMad (Mothers against dpp)が、実はWntシグナリングにも関与しているという話です。Madがリン酸化されるとBMP、リン酸化されないとWntの方で働くということで、BMPとWntが拮抗的に働くことが説明できるというものです。これ自体は、けっこう衝撃的なモデルです。

しかし著者らも認めているように、Madの過剰発現はWntシグナリングの機能喪失に似た表現型を示すというデータ(以下の論文)と矛盾するし、何かまだ見落とされている因子があるような気がします。続報に大いに期待しています。

Inhibition of Drosophila Wg signaling involves competition between Mad and Armadillo/beta-catenin for dTcf binding.
Zeng YA, Rahnama M, Wang S, Lee W, Verheyen EM.
PLoS One. 2008;3(12):e3893. Epub 2008 Dec 9.
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2011年10月17日

自由は進化する

自由は進化する [単行本] / ダニエル・C・デネット (著); 山形 浩生 (翻訳); NTT出版 (刊)

ずっと前に読み始めたものの、これを理解するためには「解明される意識」を読んでおかねばならないと思い、その後に再挑戦してやっと読了。本書は、はたして人間に自由意志はあるのか?という問題に、ユニークな解答を提示しています。

われわれ理系の人間の多くは、人間も動物の一種であり、大腸菌、線虫、ショウジョウバエなどとおおむね同じ動作原理で動いている、と考えていると思います。そして生物の体は完全に物理学的に説明可能な物質のふるまいのみによって動いていて、意識の働きも同様である、と考えるのが自然です(つまり物質に基づかない霊魂のようなものは無い)。これは古くからある機械論と非常に近い立場だと思います。そうすると、我々の脳の活動も他の物体の振る舞いと全く同じで、宇宙の初期状態が与えられれば後は必然的に展開するシナリオ通りに動いているだけということになります。

一方で、われわれは自分に自由意志があることを前提にしてものを考えているような気がします。それが、機械論とは矛盾するように思えるにも関わらず、です。

デネットは、それは矛盾ではなくて、機械論的な世界観と自由意志は両立できると主張しているようです。そのためには、人間の意識というのは進化を経て作られてきた行動シミュレーションツールであるという視点が不可欠で、「解明される意識」や「ダーウィンの危険な思想」で述べられている内容を下敷きにしつつ、本書でさらに自由意志に関する議論に焦点を絞って論じています。予想される反論や、この手の話題にはつきものの量子力学との関係なども、丁寧に論じています。この手の話題が好きな人には、ぜひお勧めしたい本です。

ところで、山形浩生のべらんめぇ口調の独特な訳文は、私にはくだけすぎているように感じられました。
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2011年10月15日

The treehopper's helmet is not homologous with wings (Hemiptera: Membracidae)

The treehopper's helmet is not homologous with wings (Hemiptera: Membracidae)
KAZUNORI YOSHIZAWA
Systematic Entomology
Article first published online: 14 OCT 2011
DOI: 10.1111/j.1365-3113.2011.00606.x

例のツノゼミ論文に対する反論が正式に出ました。元論文には多くの形態学的な解釈ミスがあり、彼らの主張する結論(ツノゼミのヘルメットは翅と相同)は、全く支持されない、という内容です。

私は元論文と今回の反論の両方に多少関わっており、微妙な立場ではありますが、自分の科学的な良心に従って、完全にこちらの反論を支持しています。そもそも昨年の夏、元論文の筆頭著者がマディソンを訪れた際に、このプロジェクトの概要を聞き、データの解釈に関する私の懸念は伝えました。

その時の違和感は主に2つありました。ひとつめは、ヘルメットには関節があり、それによって付属肢の定義を満たす、という彼らの見立てが、ヘルメットと翅の相同性を示す証拠のひとつとして挙げられていたことです。付属肢の定義は、既存の付属肢をひとつのカテゴリーにまとめて名付けるためにあり、その由来の同一性を担保するものではありません。付属肢に由来する器官が二次的に関節を失うこともあり得るでしょうし、付属肢の定義に合致する複数の器官が、独立に生じることもあり得るはずです。さらに、そもそもヘルメットの関節と彼らが主張する構造自体が、今回の反論論文により、単に前胸と中胸のあいだの部分である(つまりヘルメットと前胸の間に関節はない)ことが示されています。

もう一つは、ツノゼミの終齢若虫の前胸の側後方には、翅芽と明らかに連続相同に見える張り出しが見られ、一方で、ヘルメットは前胸の中央付近で既に後方に張り出していることです。つまり、翅とヘルメットとでは、形成されている場所が違うのです。彼らは、切片標本に基づいて、ヘルメットの前駆組織は翅と同じ位置で形成され始め、次第に中央に伸びて融合するかのような図を示していますが、これは切片を斜めに切ったからそういう形に見えていることを、今回の反論は示しています。

このように、そもそも形態の解釈に大きな疑問があるので、元論文の後半の、Drosophilaを使った実験は無意味です。実験の前提となる問題提起(翅と相同なヘルメットが前胸に形成されるにあたり、Hoxによる翅形成の抑制メカニズムは保存されているか)がそもそも意味をなさないからです。Natureをはじめとする有名ジャーナルは、EvoDevoの論文に対しても、結論を支持する実験、特に遺伝子の機能解析を要求することが多くなっていますが、それをうまく逆手に取って、あたかも結論を支持する実験を行ったかのように仕上げています。良く読むと、これらの実験の組み立てを含め、論理の運び方がぶっとんでいて、彼らのデータ群は、ひとつの結論を支持するものでないことは明らかだと思います。

今回の反論の著者、吉澤さんのブログもご覧下さい。
http://hexapoda.sblo.jp/
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2011年09月25日

旭川

しばらく日本に来ています。旭川、札幌から、つくば、三島と巡る予定です。

動物学会(旭川)での関連集会は好評でひと安心。オーガナイザーの方たちに感謝です。札幌のボスは奨励賞受賞、おめでとうございます。教育賞を受賞したムツゴロウさんに握手を求めたら、思いのほか会話が盛り上がってしまい、カメラが寄って来て「とくダネ!」に出てしまうという意外なハプニングもありました。
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2011年07月11日

なぜ新ジャーナルはCellやNatureを超えられないか

このあいだ、来年創刊される新ジャーナルについて、私は応援したいけれども、そのステータスはCellやNatureを超えないだろうと書きました。そう考える理由を書きたいと思います。

1. 投稿する側の心理
もしもあなたがCellもしくはNatureに載るくらいのデータを持っていたらどうするか?将来的にどんなステータスになるかわからない新ジャーナルに投稿するでしょうか?履歴書にCellやNatureがあれば、それがベストでしょう。仮に新ジャーナルがCellやNatureと同程度のステータスになったとしたって、同格ならば問題ないです。一番最初から新ジャーナルに投稿する人がいるとしたら、新ジャーナルのほうが将来は高いステータスになると踏んでいる人か、CellやNatureを恨んでいるPIなどが考えられますが、そう多くはないでしょう。創刊直前には、有名PIのもとに「ぜひ投稿してほしい」という案内が行くでしょうが、筆頭著者などの若者の将来がかかっていますから、いくら新ジャーナルを応援したいとしても、はじめから新ジャーナルに、という決断はしにくいでしょう。自分が筆頭で、すでに一流ジャーナルに沢山論文がある人は、バラエティーをだすために新ジャーナルに、ということも考えられますが、これも多くはないでしょう。

2. では、どんな原稿が集まるか
なかなかいいけれども、CellもしくはNatureに載せるのは難しそうな原稿、もしくはリジェクトされた原稿が集まるでしょう。そうすると、Cell姉妹紙、Nature姉妹紙くらいのレベルの原稿が集まるのではないでしょうか。まさにこういうことが起こったのがPLoS Biologyの創刊のときだったと思います。今回も同じことが起こるでしょう。

3. 最初から、トップをとるにはどうしたらいいか
この新ジャーナルがトップを採るためには、入念に作戦を練るべきです。前記のように、たぶん普通に原稿を集めてはだめです。有名PIに、ご祝儀で先端的なレビューを書いてもらい、レビューをたくさん載せる。オリジナル論文は、極端に数を抑制し、ずばぬけたものだけを載せることです。また、メソッドやプログラムに関する論文も、特に厳選して載せるといいでしょう(まれに数千回引用されるお化け論文になる可能性があるため)。これを2年ほど続けると、研究者のコミュニティーのなかで、非常に優れた論文しか載らない雑誌として認知され、また高いIFが付くでしょうから、これでやっと一流紙と互角のスタートが切れるでしょう。

4. 他にも、レベルを下げる要因が
新ジャーナルを立ち上げる大義として、現在の一流紙は査読者による書き直しや追加実験の要求がきつすぎることが挙げられています。裏を返せば、新ジャーナルではこのような要求が弱まるということで、著者にとっては楽になるものの、論文の質の低下につながるでしょう。大義を守りつつ、トップをとるのはとても難しいミッションになるでしょう。
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2011年07月09日

Multiplexed shotgun genotyping for rapid and efficient genetic mapping.

Multiplexed shotgun genotyping for rapid and efficient genetic mapping.
Andolfatto P, Davison D, Erezyilmaz D, Hu TT, Mast J, Sunayama-Morita T, Stern DL.
Genome Res. 2011 Apr;21(4):610-7. Epub 2011 Jan 13.

同じグループからもう一本。読んでみると、確かに技術的に十分に可能で、そういう意味では驚きはないのですが、とにかくものすごい利点の多い次世代シーケンサーを使ったマッピングの方法です。これを使えばQTLマッピングがものすごい高速でできるうえ、手間も少ないし、レゾルーションが低ければサンプルを増やすのも簡単そうです。

こうなってくると、自分の扱っている種でもやりたいですが、近縁種のどれとも今のところ交配できないので、そこをとにかく乗り越えないと。
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2011年07月07日

Morphological evolution caused by many subtle-effect substitutions in regulatory DNA

Morphological evolution caused by many subtle-effect substitutions in regulatory DNA.
Frankel N, Erezyilmaz DF, McGregor AP, Wang S, Payre F, Stern DL.
Nature. 2011 Jun 29;474(7353):598-603. doi: 10.1038/nature10200.

DS研、最近好調みたいです。例の、Drosophila sechelliaの幼虫の肌がすべすべ(trichomeと呼ばれる微少突起が少ない)なのはいかなる進化的変化によるかという問題で、shavenbabyという転写因子をコードする遺伝子のcis制御領域の中でも、いよいよ、原因となる塩基の変異にまで踏み込んだ内容です。
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2011年07月01日

アビエイター

アビエイター 通常版 [DVD] / レオナルド・ディカプリオ, ケイト・ブランシェット, ケイト・ベッキンセール, アレック・ボールドウィン, イアン・ホルム (出演); ジョン・ローガン (脚本); マーティン・スコセッシ (監督)

先日書いた新ジャーナルのスポンサーであり、私の雇い主でもあるHoward Hughes Medical Instituteは、世紀の大富豪Howard Hughesの遺産を基に運営される財団です。もともとは税金対策ための財団でしたが、彼の死後、遺産の多くを受け継ぎ、全米最大の医学研究財団となりました。日本円換算で毎年400億円くらいを拠出しているらしいですが、それでも元本が増え続けているという、まさに巨万の富を持つ財団です。そんな彼の人生を描いた映画が、ディカプリオ主演のアビエイターです。末端の従業員として、見ておかねばと思っていたのですが、ついに先日、DVDを購入して見ることが出来ました。特に飛行機好きにはお薦めできます。
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2011年06月30日

Impact Factor 2010 (インパクトファクター 2010)

さて、今年も新しいインパクトファクター(IF)が発表されました。ざっと見たところ、あまり目立った変化はありません。2年目のPLoS ONEがほぼ同じ数値を保っているのが良いニュースでしょうか。

有名ジャーナル編
Nature 36.101 増
Cell 32.401 微増
Science 31.364 増
PLoS Biol 12.469 減
Curr Biol 10.025 微減
Proc Natl Acad Sci USA 9.771 微増

発生関係
Dev Cell 13.946 微増
Genes Dev 12.889 回復
Development 6.898 減
Dev Biol 4.094 減
Evol Dev 3.075 微減
Mech Dev 2.958 増
Dev Dynam 2.864 変わらず
Int J Dev Biol 2.856 増
BMC Dev Biol 2.781 減
J Exp Zool B 2.373 減
Dev Growth Diff 2.284 変わらず
Dev Genes Evol 2.008 微減

昆虫関係
Insect Biochem Mol Biol 4.018 昨年初の3越えだったのに、なんと今年は4越え。
Insect Mol Biol 2.669 微増
B Entomol Res 1.909 増
Insectes Soc 1.425 微減
Entomol Sci 0.686 微増

その他の優良ジャーナル
Proc Roy Soc B 5.064 増
PLoS One 4.411 微増
BMC Genomics 4.206 増
FEBS Lett 3.601 微増
Naturwissenschaften 2.250 微減
Zoomorphology 1.800 微増
J Morphol 1.773 微増
J Exp Zool A 1.500 微増
Zool Sci 1.087 回復
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2011年06月29日

来年の夏に新しい生命科学ジャーナルが創刊される

たぶん研究者コミュニティーにとっては大きなニュースだと思うのですが、Howard Hughes Medical Institute, Wellcome Trust, Max Planck Societyが中心になって、新しい生命科学ジャーナルを創刊するということです。最高のジャーナルを目指し、オープンアクセス、少なくとも最初の数年は掲載料も取らないということです。

Three Biomedical Funders to Launch Open Access Journal (Science)

創刊のモチベーションになっているのは、トップジャーナルでは科学者でない人間によって編集が行われ、採否の決定権は編集者にあるものの、科学的妥当性を巡ってレビュワーと何度もやりとりするために査読が長引き、何度も何度も修正やデータ追加を要求されることに対する不満があるようです。

似たような経緯で創刊されたPLoS Biologyは、生命科学誌のトップであるCellを喰ってしまうほどにはならなかったし、前にも書いたように著者から掲載料を取るモデルで経営的に行き詰まり、中位ジャーナルであるPLoS ONEを創刊することで持ち直しましたが、今となっては圧倒的論文数を持つPLoS ONEのほうが主役になってしまった感があります。(例えば、2008-2009の論文数は、PLoS Biology 214に対し、PLoS ONE 6714です。実に30倍以上。)

今回の試みの新しい点は、この3つの母体が圧倒的な資金力を持つことで、正直なところ、ジャーナルが赤字だろうとまったく構わないのでしょう。なので、査読者にギャラを払うという噂まであるようです。

Natureは相変わらずこの手の動きには批判的で、内部のライターを使って「ビジネスモデルが見えない」と書かせていますが、今回の動きは営利目的ではないので、まったく的はずれでしょう。PLoSのときには、批判的な割にはNature CommunicationsやScientific Reportsなどを創刊して、対抗意識まるだしでしたが、さて今回はどうなるでしょうか。

Three major biology funders launch new open access journal, but why exactly?

私個人的には、やっぱりCellやNatureを喰うところまでは行かず、PLoS BiologyやCurrent Biologyあたりと一緒に団子になると予想しておきます。でも、もしも本当にトップを奪ったら快挙なので応援したいです。
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2011年06月28日

解明される意識

解明される意識 [単行本] / ダニエル・C. デネット (著); Daniel C. Dennett (原著); 山口 泰司 (翻訳); 青土社 (刊)

かなり長い時間をかけて、やっと読了。たいへん面白かったです。

本書では、多くの人が漠然と信じている、人間の意識には中心のようなものがあって、多くの情報を取捨選択し統合してアウトプットしているという考え方を「カルテジアン劇場」と命名して批判し、そのか代わりとなる仮説として「多元的草稿」モデルというものを提示しています。たぶん研究者にとってはおなじみの、書きかけの色んなバージョンの原稿がごちゃごちゃになっている状態、これが人間の意識の状態である、と。

モデルを説明するにあたり、コンピューター、人工知能の研究成果をふんだんに取り入れ、あくまでも現代の科学と乖離しない形をとり(自然主義)、また哲学のジャーゴン(業界用語)をできるだけ排しているので、かなり可読性が高いものとなっています。多くの哲学書に比べれば、ですが。

これを読むと、やはり現代科学の最大の課題は、人間の意識、人間の思考のメカニズムを明らかにすることなのかなと思います。しかし人間の脳はなにしろ複雑すぎて、すぐに取り組むにはまだ科学的手法が十分に確立されているとはいえず、どういう個別研究をするかという大方針を立てるには哲学の力を借りないといけないのかもしれません。一方で、単純なシステムをまず完全に理解する必要があるという意味では、線虫の神経系の研究なんかも非常に重要であるという思いも強く持ちました。
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2011年06月23日

Juvenile hormone regulates extreme mandible growth in male stag beetles.

Juvenile hormone regulates extreme mandible growth in male stag beetles.
Gotoh H, Cornette R, Koshikawa S, Okada Y, Lavine LC, Emlen DJ, Miura T (2011)
PLoS ONE 6(6): e21139. doi:10.1371/journal.pone.0021139

G君のクワガタ論文、ついに出ました。幼虫期の栄養条件が前蛹期の幼若ホルモンの濃度に反映され、高い幼若ホルモン濃度だと大顎が大きくなるというストーリーです。実際に幼若ホルモンの濃度を測定していること(これまでの類似の研究ではこれが欠けていることが多い)、幼若ホルモン類似体の投与によって、実際に大顎が長い蛹をつくることができていることがポイントです。また、材料のクワガタがやたらとかっこいいことにも注目。詳しい解説は彼のサイトでどうぞ。

https://sites.google.com/site/hirokigotohstag/
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2011年05月11日

トップジャーナルのありかたについて

トップジャーナルのありかたについて、あまり語る資格はなさそうですが、小物だけに言えることもあると思うので言っておきます。

生物学の研究者にとって、CNSあるいはビック3と言われる、Cell, Nature, Scienceですが、これらは他の多くの専門誌と色々な点で異なっていると思います。特に顕著な違いは、編集長、編集者らが、現役の科学者でなく、多くがPhDを取った後に出版界に転じた人たちということでしょうか。つまり論文の採否の最終決定が、科学者でない人によって行われるということです。

彼らは多くの一流の論文を読んできていますから、かなりの見識があるのは確かだとは思いますし、レフェリーはその分野にフィットした専門家がやりますので、論文の個別具体的な問題点についても見落とさないことが期待されますが、現実的には見落とすこともあるでしょう。そして、採否の際に、データや論理構成とともに、あるいはそれ以上に重視されるのが、分野の垣根を越えた革新性、インパクトなどです。これは商業誌である以上、おそらく仕方のないことで、彼らの目的関数は、科学の進歩、ではなくて、商業的成功(=部数)であるだろうからです。つまり本当であろうと無かろうと話題になったもの勝ちということですね。これはNatureで特に見られる傾向だと思います。


では、編集長、編集者を現役の科学者にやってもらうといいのでは?と思いますが、トップジャーナルともなると、投稿量は半端じゃないので両立は困難ですし、編集者や彼らと親しい人の研究室からその雑誌に論文が出ると、ひいきしているのではないかという目で見られるなど、別の問題が出てくると思います。

PLoS Biologyは、既存のトップジャーナルへの不満がたまっていた科学者による設立、運営で、トップジャーナルを目指しましたが、いまのところ、上記の3誌ほどの地位は得られていないです(そして、言いにくいけれど"お友達が有利" との批判も聞かれないことはないです。)。また、オープンアクセスであるという別の問題との関係が強いですが、経営的にはPLoS Biologyは失敗したと言われていて、PLoS ONEとセットにすることでやっていけているという状況です。しかし、個人的には、PLoSは既存のシステムに風穴を開けたという点で、大いに評価されるべきと思います。Nature Communicationsの創刊はPLoSに対抗する意図だと思いますし、既存の雑誌の地位がずっと安泰であるわけではないと思います。何にせよ、絶対的な権威があるというのは面白くなくて、常に栄枯盛衰やターンオーバーがあるというのが健全なのではないでしょうか?

私個人の好みで言えば、いまだに読んで一番面白いのはNatureだと思いますし、時々変な論文が載るのも楽しみです。ただ長く権威の座に留まり過ぎではあると思います。科学的な健全さで言えばCellが理想なのでしょうが、ちょっと退屈なところがありますね。
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2011年05月05日

Body plan innovation in treehoppers through the evolution of an extra wing-like appendage

しばらく休んでいましたが、再開します。

Body plan innovation in treehoppers through the evolution of an extra wing-like appendage
Benjamin Prud’homme, Caroline Minervino, Mélanie Hocine, Jessica D. Cande, Aïcha Aouane, Héloïse D. Dufour, Victoria A. Kassner, Nicolas Gompel
Nature 473, 83–86 (05 May 2011)

さて、ツノゼミのヘルメット(胸部についた飾り)の進化的起源を扱ったこの論文。うちの研究室からも2人、著者に入っていますし、このプロジェクトの進行をそばで見ることができました。昆虫好きの人はよくご存じのように、ツノゼミはその圧倒的な形態的多様性により、多くの昆虫写真家、採集家、ナチュラリストを魅了している一群です。熱帯産のものが有名ですが、ウィスコンシンには一種だけ、とても良く採れる普通種がいるので、それをうまく利用したプロジェクトです。

彼らが示しているのは、ツノゼミのヘルメットは関節を持った前胸の背側付属肢であるということと、発達中のヘルメットは、翅の発生に関連する遺伝子3つ(nub, Dll, hth)の抗体で染まる、ということです。これをもって、ヘルメットは翅と連続相同な器官であり、ツノゼミはnubなどの翅発生関連遺伝子が、前胸のHoxであるScrによる抑制を受けないように進化したためにヘルメットを発達させることができた、という壮大な仮説を述べています。

材料の特性上、できる実験と出来ない実験があるし、苦労もよくわかりますが、やはりデータの積み上げ方、論理構成は少々強引なように思います。しかしライティングが非常にうまいのと、Supplementを含めGompel氏の写真がとても良いので、エンターテインメント性の高い作品に仕上がっていると思います。おそらくどこかからか反論も出てくると思いますが、それを読むのも楽しみですし、再反論も楽しみです。
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2011年02月13日

National laboratory mustache day

2月11日は、全米研究室ヒゲの日です。

http://labmustacheday.blogspot.com/
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2011年01月27日

祝20万ヒット

ご愛読ありがとうございます。

カウンターのセッティングは適当ですが、まぁだいたいということで。このブログは開設してからもう5年が過ぎました。
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2011年01月26日

論文って意外に読まれているのかもしれない

最近、共著も含めて3本の論文がBMCシリーズの雑誌に掲載されていますが、今日はじめて、「My BioMed Central」というところに登録してみました。すると「My Manuscripts」というコーナーに自動的に自分の論文のリストが表示され、これまでの閲覧回数を見ることができます。

http://www.biomedcentral.com/my/

The homolog of Ciboulot in the termite (Hodotermopsis sjostedti): a multimeric β-thymosin involved in soldier-specific morphogenesis
Shigeyuki Koshikawa, Richard Cornette, Tadao Matsumoto, Toru Miura
BMC Developmental Biology 2010, 10:63 (8 June 2010)

Total accesses to this article: 1041

Gene expression changes during caste-specific neuronal development in the damp-wood termite Hodotermopsis sjostedti
Yuki Ishikawa, Yasukazu Okada, Asano Ishikawa, Hitoshi Miyakawa, Shigeyuki Koshikawa, Toru Miura
BMC Genomics 2010, 11:314 (20 May 2010)

Total accesses to this article: 944

Gene up-regulation in response to predator kairomones in the water flea, Daphnia pulex
Hitoshi Miyakawa, Maki Imai, Naoki Sugimoto, Yuki Ishikawa, Asano Ishikawa, Hidehiko Ishigaki, Yasukazu Okada, Satoshi Miyazaki, Shigeyuki Koshikawa, Richard Cornette, Toru Miura
BMC Developmental Biology 2010, 10:45 (30 April 2010)

Total accesses to this article: 1708

特にミジンコの論文がたくさん読まれているようです。このような「専門的」な論文たちは、数十人くらいにしか読まれていないのかと思っていましたが、意外にも千人単位でした。BMCによれば、BMCのサイトの他に、Pub Medの運営するPub Med Centralというサイトからも論文を見ることができるので、実数はだいたい倍になっているはず、とのことです。

ちょっと前までは、ハガキで別刷り請求が来たりしたものですが、例えばハガキが2枚しかこないと、読者が2人しかいないのかと思ったものでした。雑誌は図書館に積まれるだけで、誰にも読まれていない可能性がありますので。ネットの利点を生かして、このようにリアルタイムで読者数が把握できるというのはすばらしいですね。
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2011年01月20日

Identification of a reproductive-specific, putative lipid transport protein gene in a queenless ponerine ant Diacamma sp.

Identification of a reproductive-specific, putative lipid transport protein gene in a queenless ponerine ant Diacamma sp.
Okada Y, Miyazaki S, Koshikawa S, Cornette R, Maekawa K, Tsuji K, Miura T (2010)
Naturwissenschaften 97(11): 971-979

ちょっと遅くなってしまいましたが、共著論文の宣伝です。Naturwissenschaftenの11月号に掲載されました。まぁ正直に言って私はデータ生産には貢献していないのですが、M研が北海道に移籍してからDifferential Displayの実験系を再構築する際に、ちょっとだけお手伝いしたので共著に入れていただけたのでしょうか。蛍光スキャナーを探したり(近所の研究室で借りることで解決)、無蛍光ガラスをカットしたり、当初はいろいろ大変でしたね。屋久島に行っている間にノッチの板が欠けたりね。O氏が札幌のM研におけるDDのパイオニアで、そこからみんなに手法が広まっていったのです。

内容はというと、胸部にある"ゲマ(Gemma)"という器官(翅に由来するという説が有力)を噛み取られるとワーカー(働きアリ)に、噛み取られないと女王(厳密には女王ではなくて繁殖をする個体Gamergate、このアリには真の女王はいない)になるという超絶おもしろい生活史を持つアリDiacamma sp.を用いて、この行動/生理状態の分化に伴って発現が変化する遺伝子を探したというものです。結果として見つかったのは、おそらく表皮で発現し、脂質の輸送などに関わるCRAL-TRIO domainを持つタンパク質の遺伝子でした。これが行動/生理状態の分化に関わるフェロモンを輸送するタンパク質である可能性もあり、今後のさらなる解析が待たれます。

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2010年12月31日

事業仕分けと来年度予算案

今月は一度も書いていなかったので、ひとこと。

例のパブリックコメント募集から事業仕分け第3弾にかけて、研究者コミュニティーは大騒ぎになり、しかも仕分の結果を受けた評価会議では、「成長を牽引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ 」がC判定、「「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアティブ 」がB判定(補正措置含む)とされ、予算大幅カットは確実と思われました。

しかし菅首相のリーダーシップ(?)により、突如、科学技術関連予算の増額が発表され(12/22)、科研費は約30%増額(2633億円)で予算案に組み込まれました。さらに「成長を牽引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ 」に含まれていた特別研究員PD事業も約30%の増額(60億円)、テニュアトラック普及・定着事業も新規扱いで81億円が計上されました。若手研究者にとっては満額回答と言ってよいでしょう。この一連の騒動のため、来年度から採用のPDは採用内定が保留されていましたが、予算案の閣議決定を受けて無事内定を受けた人たちが沢山いるようです。よかったよかった。

平成23年度予算案
http://www.mof.go.jp/seifuan23/yosan.htm

一方でもちろん問題点も多数あります。まずは、仕分け関係の制度が固まっていないために、先行きが不透明であることから皆が疑心暗鬼になり、その都度、署名だパブリックコメントだと、大騒ぎになること。では騒がなければいいかというと、本当に予算をばっさり切られるとシャレにならないので、ノーベル賞受賞者を担ぎだしたり、学会で提言を取りまとめたり、その時点では本気を出さざるを得ない訳です。

そして、パブリックコメントが突出して多かった文部科学省の事業が、評価会議で低い評価を受け、しかしそれは必ずしも予算案に反映されていない。原理原則がしっかりしておらず、切られる側はもとより、仕分け関係者も脱力していることと思います。若手研究者側から見ても、仕分けのワーキンググループで科学技術振興調整費が廃止となった時には愕然としましたが(従来、テニュアトラック事業はここに含まれていた)、結局、テニュアトラック事業は新規扱いで見事に復活したのでした。

大学の運営費交付金、私学助成などは微減、グローバルCOEは10%減ということで、厳しい部分もありますが、ほぼ覚悟していた通りといったところでしょうか。グローバルCOE拠点など、当事者の方達のご苦労はお察しいたします。しかし、そもそもグローバルCOEやグーロバル30などが、その予算規模に見合った成果が見込まれる事業だったか、つまり同額を科研費にしたほうが有効なのではと多くの研究者がつぶやいていたことを考えると、大筋としては正しい方向に向かっているのではないかと思います。

来年はもしかすると総選挙があるかもしれませんし、また署名だパブコメだと騒ぐことになるかもしれませんが、雨降って地固まる、となると良いですね。よいお年を。
posted by シロハラクイナ at 16:34| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月24日

イーグルハイツでイーグル

私が住んでいる大学アパートはイーグルハイツ(ワシの高台)という名前なのですが、これまでワシを見かけたことはありませんでした。

今朝8:45ごろ、イーグルハイツのバス亭で、頭上を低く飛ぶ2羽のイーグルを目撃。白い頭に白い尾、間違いなくハクトウワシ(Bald eagle)でした。

Bald_eagle.jpg
画像はwikipediaより
posted by シロハラクイナ at 08:59| シカゴ ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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