生物学・科学に関する雑感。

現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中


2006年03月11日

Genetic variation for an aphid wing polyphenism is genetically linked to a naturally occurring wing polymorphism

Genetic variation for an aphid wing polyphenism is genetically linked to a naturally occurring wing polymorphism.
Braendle C, Friebe I, Caillaud MC, Stern DL.
Proc Biol Sci. 2005 Mar 22;272(1563):657-64.

昨日の続きです。同じ遺伝子座が、今度は単為生殖メスの有翅・無翅多型にも関わっているという話(研究室の後輩のaさんが昨年ゼミで紹介していた論文です。)。有性生殖オスの場合は遺伝的多型が形態の多型をもたらすという話でしたが、こちらは表現型多型の有翅・無翅を決定する機構(おそらく閾値)に関わっている点に注意。

エンドウヒゲナガアブラムシの胎生単為生殖世代では、飢餓+高密度条件によって有翅型が多く出現します。そこで、有性生殖オスに有翅・無翅多型をもたらす遺伝子座が、この系にどのような影響をもたらすかが調べられました。

その結果、何と、有性生殖オスを有翅にするalleleであるapiwをホモ接合で持つ単為生殖メス(apiw/apiw)は、飢餓+高密度条件下でもほとんど有翅型を生まないことがわかりました。直感的な予想と正反対の結果ですね。遺伝子自体を同定できているわけではないので、近傍にある複数の遺伝子の影響である可能性を完全に排除することはできませんが、本当に単一の遺伝子の効果だとすると、多面発現pleiotropyの顕著な例だと言うことができます。

なんだかすごい結果ですが、これをきっかけに表現形多型の制御機構にせまることができるかも知れないですね。
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2006年03月10日

Genetic mapping of aphicarus - a sex-linked locus controlling a wing polymorphism in the pea aphid.

Genetic mapping of aphicarus - a sex-linked locus controlling a wing polymorphism in the pea aphid (Acyrthosiphon pisum).
Braendle C, Caillaud MC, Stern DL.
Heredity. 2005 Apr;94(4):435-42.

アブラムシの翅多型に関する論文。エンドウヒゲナガアブラムシではオスに有翅型・無翅型があることが知られていますが、その多型をもたらす遺伝子座のマッピングの話です。

著者らはオスの有翅・無翅をコントロールしている遺伝子座をaphicarus と命名しました。(アブラムシaphid + ギリシャ神話のイカロスIcarus。 略称はapi 。)この遺伝子座は先行研究からX染色体上にあることが予想されていました。この論文ではapiとAFLPマーカーを使ってX染色体上での相対的な位置関係をマッピングしています。

マッピングの際の交配実験でポイントとなるのが、アブラムシ特有の生活環です。エンドウヒゲナガアブラムシは長日条件では胎生単為生殖によって無性的にメスがメスを産み続けます。オスを出したい場合には低温短日処理をし、8週間待たなければなりません。これは結構大変かも。性決定様式はメス/オス=XX/XOなので、api遺伝子座に関して母親がヘテロ(apiw/apiwl )の場合は有翅オスと無翅オスが1:1で出現します。母親がホモの場合はもちろん有翅オスか無翅オスのどちらかしか出ません。

これまでに昆虫の遺伝的な翅多型を制御している遺伝子がマッピングされたことは無いのだそうです。そう言われてみると確かにそうかもしれません。おそらくapi の実体は単一の遺伝子だと思われるので、今後その遺伝子がクローニングされればかなり面白いことになるのではないでしょうか。

なお、この話には続きがあり、実はこの遺伝子座は胎生単為生殖メスの翅多型にも関わっています。その話はまた次回に。
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2006年02月20日

Developmental plasticity and the origin of species differences.

Developmental plasticity and the origin of species differences.
West-Eberhard MJ.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 May 3;102 Suppl 1:6543-9. Epub 2005 Apr 25.

West-Eberhardによる発生の可塑性と種分化に関するレビューです。2/8に紹介したGenetic accommodationの話を検索していたところ出てきました。PNASのErnst Mayr生誕100周年記念号に掲載されていたようです。

図がひとつもなく、ややこしいことが書いてありそうなので敬遠していたのですが、Genetic accommodationを理解するためには避けて通れないので、やむなく読んでみることにしました。

実際読んでみると面白く、"発生の可塑性が新しい形質の進化において主要な役割を果たしている"、とするWest-Eberhardの仮説が、具体例を挙げつつ、これでもか、と論じられています。

自然選択は遺伝子型にではなく表現型に対して作用するので、突然変異のみならず環境の変化による表現型の変化も新しい形質の由来となり得るということです。その後Genetic accommodation(量的形質を決めている遺伝子の集団内の頻度が変化し、新しい形質が遺伝的にも強化される)が起こり、形質の変化が固定する、と。

実際多くの形質は量的遺伝子によって支配されているので、ほとんどの場合、単一の突然変異も環境の変化も新しい形質を生じさせる上で決定的な効果はなく、表現型の分散をある方向に動かすだけある(ここでは突然変異も環境変化もまとめて”インデューサー"と呼んでいます。)。それをきっかけに自然選択によって量的遺伝子の遺伝子型頻度が変化することが新しい形質を生み、固定させるのだ、ということらしいです。これを"Phenotype precedes genotype"(表現型が遺伝子型に先行する)と表現しています。

ここでちょっと驚いたのは、新しい形質が進化する上で必ずしも突然変異は必要ではない、ということを堂々と主張していることです。進化の概念も日々進歩しているのだなと感じる今日この頃です。

(2/23、accommodationの綴りを直しました。cもmもふたつずつですね。)
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2006年02月08日

Evolution of a polyphenism by genetic accommodation.

Evolution of a polyphenism by genetic accommodation.
Suzuki Y, Nijhout HF.
Science. 2006 Feb 3;311(5761):650-2.

気になっていたこの論文。いかにもNijhoutらしいホルモンと閾値と進化の話ですね。既にG-hopさんによる詳しい解説があります。

何点かメモ。
Genetic accommodation: 遺伝的適応、と訳していいのでしょうか?少なくともScienceの日本語サイトではそのように訳していますね。どうやらこの論文ではGenetic accommodationを通じて表現型多型が進化しうるということを示したようなのですが、genetic assimilation: 遺伝的同化との概念的な違いがいまひとつよく解らないです。

今回観察された現象は、単純化して言えば、

タバコスズメガ野生型の幼虫ではJHレベルが潜在的な閾値よりもずっと高いために表現型に多型が現れない(すべて緑色)。

black系統(黒化型)ではJHレベルが低いので、熱ショックやJHA塗布によってJHレベルを上げてやると緑色の個体が出る場合がある。

緑色の個体を人為的に選抜し続けると、熱ショックなしでも高い生育温度では緑色の個体が出るようになる。

ということですね。
そして、進化学的な考察としては、

JHの分泌や受容にかかわる遺伝的多型は、野生型では表現型に現れないために選択を受けずに維持あるいは蓄積され、ある突然変異(ここではblack)が生じることではじめて体色に多型をもたらしうる遺伝的多型になる。その形質が選択にさらされることによって新しい表現型多型が進化した。このような過程をGenetic accommodation: 遺伝的適応と呼ぶ。

ということですね(これであってるでしょうか?)
さらに少し前に話題になったhsp90とのアナロジーで、ホルモンによる制御機構も、遺伝的変異にとってのcapacitorとなりうる、と著者達は言っています。

概念的な部分はやっぱり難しいですね。West-Eberhard (2003)(←オウムが表紙の、有名な分厚い本)を読まないとダメか…。
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2006年02月04日

Antagonistic actions of ecdysone and insulins determine final size in Drosophila.

Antagonistic actions of ecdysone and insulins determine final size in Drosophila.
Colombani J, Bianchini L, Layalle S, Pondeville E, Dauphin-Villemant C, Antoniewski C, Carre C, Noselli S, Leopold P.
Science. 2005 Oct 28;310(5748):667-70. Epub 2005 Sep 22.

生物の体サイズはどのように決まっているのか、というのは皆が興味のあるテーマでありながら、その仕組みについてはわかっていないことだらけです。最近になって、昆虫においてもインスリン/IGFシグナル伝達系が体サイズのコントロールをしていることが明らかになってきました。そういうわけで昨年出た論文をお勉強。

この論文では、ショウジョウバエを用いて、発生のタイミングをコントロールしているホルモンであるエクダイソン(20E)が、インスリン/IGFシグナル伝達系を阻害する作用があるということを示しています。また、脂肪体でEcR-RNAiコンストラクトを発現させると成長速度が上昇することも示しています。

また、インスリンレセプター(InR)の下流にあたるphosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)やそのドミネガを発現させて、成長の速度の変化、20Eの濃度、関連遺伝子の発現を見たりしています。それによって20Eはインスリン/IGFシグナル伝達系の制御を受けていることも示しています。

つまり20Eとインスリン/IGFシグナル伝達系の制御の関係は、ぐるっとまわって環状になっているということですね。

そして、エクダイソンは発生のタイミングを決めることで成長の期間を、インスリン/IGFシグナル伝達系に影響を与えることで発生の速度もコントロールしている、と。

論文を読んでもいまひとつ完全に理解していない気がしたのですが、Scienceの同じ号に載っている解説記事(特に図)を見て、やや納得しました。

Less steroids make bigger flies.
King-Jones K, Thummel CS.
Science. 2005 Oct 28;310(5748):630-1.

エクダイソンがここにからんでいるということは、今後はおそらくJHもからんでくるでしょう。発生のタイミング、速度、体サイズの調節は非常に重要かつ面白いテーマなので、今後の展開に期待です。インスリン/IGFシグナル伝達系は寿命にも関係しているらしいし、役者としては超大物ですね。
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2006年02月03日

キイロショウジョウバエのゲノム配列

Drosophila melanogasterのゲノム配列を報告したAdams et al. (2000) Science は、読まなきゃいけないんだけど面倒くさい!ということでプリントアウトし、ちょっとだけ拾い読みし、放置していました。

The genome sequence of Drosophila melanogaster.
Adams MD et al.
Science. 2000 Mar 24;287(5461):2185-95.

しかし、奇特な方(企業)が日本語訳を公開しているではありませんか!ラッキー!これって常識ですか?
キイロショウジョウバエのゲノム配列

やはり母国語で読むのは速いです。アメリカ人は普段からこういう調子で英語の論文を読めるのかー。ずるいぞ。
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2006年01月26日

BlattellaのRXR/USPについて

昆虫の脱皮ホルモンである20Eの受容体は、EcRとUSPという2種類のタンパク質のヘテロダイマーであることが知られています。20Eが結合するのはEcRのほうであり、USPにはリガンドがあるのかはっきりしていません。

昆虫において、もうひとつ極めて重要なホルモンである幼若ホルモン(JH)の受容体はいまだに取られておらず、USPこそが受容体ではないかと言われたこともありますが、これには反論も多く現在ではそう考えている研究者は多くないようです。

いずれにしろUSPは昆虫の発生の制御に必須な因子ですが、これらの知識は完全変態昆虫(ほとんどがショウジョウバエ)から得られたものです。

では不完全変態昆虫ではどうなのか?これまでトノサマバッタLocusta migratoriaのUSPのホモログであるLmRXRについて報告がある他は、不完全変態昆虫に関してはあまり調べられていなかったようです。

さて今回はチャバネゴキブリBlattella germanicaのUSPホモログであるBgRXRに関するメモ。(このMartinらの論文の存在は恥ずかしながらG-hopさんのエントリで知りました。)

RNAi studies reveal a conserved role for RXR in molting in the cockroach Blattella germanica
David Marti´n, Oscar Maestro, Josefa Cruz, Daniel Mane´-Padro´s and Xavier Belle´s
J Insect Physiol. 2006 Jan 18; [Epub ahead of print]

チャバネゴキブリの終齢幼虫(若虫)に対し、RNAiでBgRXRをつぶしたところ、成虫に脱皮できないか、脱皮しても翅などに形成不全が見られました。この結果は、脱皮の際のRXR/USPの機能が、不完全変態と完全変態昆虫とで保存されている可能性を示すものです。わりと予想通りの結果ではありますが、不完全変態昆虫のRXR/USPの構造がショウジョウバエとやや異なることや、トノサマバッタのRXRはJHと結合しないことと考え合わせると、地味ながらも今後の研究にとって重要なポイントになってくるのではないでしょうか。

また、チャバネゴキブリの幼虫にRNAiが効くことは、シロアリ研究者の自分にとっては重要な情報でした。(シロアリとゴキブリは近縁であるため、シロアリにも効く可能性が高いということです。)

なお、BgRXRの配列と基本的な発現パターンについては以下の論文で既に報告されていました。

Differential expression of two RXR/ultraspiracle isoforms during the life cycle of the hemimetabolous insect Blattella germanica (Dictyoptera, Blattellidae).
Maestro O, Cruz J, Pascual N, Martin D, Belles X.
Mol Cell Endocrinol. 2005 Jun 30;238(1-2):27-37.

二つのisoformがあり、組織や発生ステージによってisoformの使い分けが見られるようです。
また、チャバネゴキブリ胚由来の培養細胞に20EもしくはJHを投与しても、BgRXRの発現に変化は見られません。胚以外のステージでどうかはわかりませんが、少なくとも胚ではBgRXRがホルモンに直接制御されていないということです。(タバコスズメガ、ネッタイシマカのUSPは20Eに、セイヨウミツバチのUSPはJHに制御されているという例が知られているそうです。)

USPに関する論文は最近特に増えてきている気がします。しかし、EcRのパートナーとして20Eの受容を調節し、また何らかの形でJHの受容にも関わっているのは確かなのですが、どうも分からないことが多いです。早く本物のJHレセプターが報告されないかなー。
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2006年01月18日

DNA barcodeって…。

DNA barcodesというものが徐々に有名になってきました。
この手法が提唱されたのは以下の論文です。

Biological identifications through DNA barcodes.
Hebert PD, Cywinska A, Ball SL, deWaard JR.
Proc Biol Sci. 2003 Feb 7;270(1512):313-21.

ミトコンドリアのCOI遺伝子のシークエンスを使えば、ほぼすべての動物が種レベルで識別でき、だいたいどの分類群に属するかわかる、というものです。普通に誰かが考えそうなことですね。バクテリアなどではrRNA遺伝子などを使って既に行われていたことです。でもこれをDNAバーコードと名付け、普及活動をすることによってだんだん大物に化けていったようです。

いまやCONSORTIUM FOR THE BARCODE OF LIFEという組織もできて、とにかくすべての動物のCOI配列を読みまくっているようです。

DNAバーコードは、鳥類の同定にも使えます。
Identification of Birds through DNA Barcodes.
Hebert PD, Stoeckle MY, Zemlak TS, Francis CM.
PLoS Biol. 2004 Oct;2(10):e312. Epub 2004 Sep 28.

遺伝子領域を変えれば、植物でも大丈夫です。
Use of DNA barcodes to identify flowering plants.
Kress WJ, Wurdack KJ, Zimmer EA, Weigt LA, Janzen DH.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jun 7;102(23):8369-74. Epub 2005 May 31.

コスタリカの蝶も、ほぼ完璧に同定できます。
DNA barcodes distinguish species of tropical Lepidoptera
Mehrdad Hajibabaei *, Daniel H. Janzen , John M. Burns , Winnie Hallwachs , and Paul D. N. Hebert *
Published online before print January 17, 2006
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 10.1073/pnas.0510466103 OPEN ACCESS ARTICLE

隠蔽種も見つかります。なんとこのケースでは1種とされてきた蝶が10種を含んでいたそうです。あらためて生態や幼虫形態を調べると、確かに違うのだそうです。
Ten species in one: DNA barcoding reveals cryptic species in the neotropical skipper butterfly Astraptes fulgerator.
Hebert PD, Penton EH, Burns JM, Janzen DH, Hallwachs W.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Oct 12;101(41):14812-7. Epub 2004 Oct 1.

ということで、効果絶大なDNAバーコードですが、今後ますます普及していき、博物館の標本ラベルにもDNAバーコードが記される日も近いのでは?と言われています。そのあたりの議論は、以下のNatureおよびScienceの記事によくまとまっています。

Counting angels with DNA.

Will DNA bar codes breathe life into classification?


最近は多様性の研究にもこういう形で大きな資金が入っているんですね。自分に関係のありそうな身近なレベルでは、昆虫の幼虫や卵などの同定に便利に使えそうです。また、肉食動物の餌メニューを調べたり、他にも応用方法はいろいろありそうですね。
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2006年01月14日

Strepsiptera problem

昨日の続きです。ネジレバネは寄生生活に適応して形態がめちゃめちゃに変化してしまっているため、どの昆虫と近縁なのか判別しがたい、ということがあったようです。ネジレバネのメスは無翅ですが、オスには前翅が変化した擬平均棍と扇状の後翅を持ちます。後翅を飛翔に使うことや生態などを考慮して甲虫のオオハナノミ類に近縁であるとする説が有名であったようです。

ですがWhiting et al. 1997をはじめとするrRNAに基づいた分子系統樹(一部形態も考慮)ではネジレバネは双翅類と近縁であるということになり、あろうことかネジレバネと双翅類はホメオティックな変異によって中胸と後胸のアイデンティティーが入れ替わったものだとまで言いだしました(さすがにそれはないだろう…)。

The Strepsiptera problem: phylogeny of the holometabolous insect orders inferred from 18S and 28S ribosomal DNA sequences and morphology.
Whiting MF, Carpenter JC, Wheeler QD, Wheeler WC.
Syst Biol. 1997 Mar;46(1):1-68.

Insect homeotic transformation.
Whiting MF, Wheeler WC.
Nature. 1994 Apr;368: 696.

そして相変わらず事態は混沌としているのですが、どうも双翅類と近縁とする説も怪しくなってきたようです。

Intron insertion as a phylogenetic character: the engrailed homeobox of Strepsiptera does not indicate affinity with Diptera.
Rokas A, Kathirithamby J, Holland PW.
Insect Mol Biol. 1999 Nov;8(4):527-30.

The structure of the USP/RXR of Xenos pecki indicates that Strepsiptera are not closely related to Diptera.
Hayward DC, Trueman JW, Bastiani MJ, Ball EE.
Dev Genes Evol. 2005 Apr;215(4):213-9. Epub 2005 Jan 20.

これらの結果では双翅類と鱗翅類が共有する特徴をネジレバネは持っていないことから、ネジレバネー双翅類近縁説を否定しています。

これらの証拠は結構強力ですし、Whitingらの研究には批判者が多いようなので、ネジレバネー双翅類近縁説は旗色がだいぶ悪くなってきたように思います。かといって、ネジレバネー甲虫類近縁説は精子の微細構造の比較などから否定されていますのでやはり旗色が悪そうです。

この論争に決着がつく日がくるのでしょうか…。当事者達は延々と議論が続くのを楽しんでいるのかもしれません。
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2006年01月13日

Tiny genomes and endoreduplication in Strepsiptera

Tiny genomes and endoreduplication in Strepsiptera.
Johnston JS, Ross LD, Beani L, Hughes DP, Kathirithamby J.
Insect Mol Biol. 2004 Dec;13(6):581-5.

今日はこれから縦コン(来年度から研究室に配属される3年生と、研究室にいる学生達との交流飲み会)なので、あまり時間がない!というわけで、手抜きですが手元にあった論文を紹介します。

ネジレバネはちょっとマイナーなですが、寄生性の小さな昆虫です。形態、生態、系統関係など、奇妙で謎が多いため、昆虫研究者のあいだではちょっと人気があるのではないでしょうか?この論文では、ネジレバネのゲノムサイズが今までに調べられた昆虫の中で最小であることを報告しています。また、そのためかかなりのendopoliploidyが見られるようです。

あー本当に時間がないので、系統の話も含めて続きは明日書きます。
posted by シロハラクイナ at 18:28| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月10日

Synergy between sequence and size in large-scale genomics

Synergy between sequence and size in large-scale genomics.
Gregory TR.
Nat Rev Genet. 2005 Sep;6(9):699-708.

最近、私はシロアリのゲノムサイズを測定していたのですが、ゲノムサイズ測定屋というのは一つの業界を形成しているようなのです。そしてGregoryはここ数年で論文を書きまくっている中心人物の一人です。

ゲノムサイズ業界は、ゲノムシークエンシングを行う人たちで構成されるいわゆるゲノム業界とはちょっと隔絶していて、ちょっとローテクでのんびりした雰囲気があります。最近はフローサイトメトリーを使った方法や画像解析を使った方法で測定しますが、いずれも核DNAに結合させた色素の量を測るというもので、DNA配列を扱うわけではありません。

で、このレビューの主旨は、ゲノムサイズ情報とゲノム配列情報を相互に役立てていこう、ということです。配列情報を利用することでゲノムサイズ進化の要因が検証でき、実際に徐々にわかりつつあります。また、ゲノムプロジェクトによって配列を解読される生物は分類群内でもゲノムサイズが小さいものに偏っており、既知のゲノム配列に基づいてゲノム進化を論じる際には注意が必要とのことです。

ゲノムサイズ進化の要因については、たくさんあるGregoryのレビューを読むと良さそうです。↓

The C-value enigma in plants and animals: a review of parallels and an appeal for partnership.
Gregory TR. Ann Bot (Lond). 2005 Jan;95(1):133-46.

Genome size and developmental complexity.
Gregory TR. Genetica. 2002 May;115(1):131-46.

他、たくさんあります。(読み切れません…。)
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2006年01月09日

The genomic response to 20-hydroxyecdysone at the onset of Drosophila metamorphosis


The genomic response to 20-hydroxyecdysone at the onset of Drosophila metamorphosis.

Beckstead RB, Lam G, Thummel CS.
Genome Biol. 2005;6(12):R99. Epub 2005 Nov 21.

Thummelのグループから、またDrosophilaの変態についての重要な論文です。既にG-hopさんによってわかりやすく解説されていますが、特に手法において自分たちの研究の参考になりそうなのでメモしておきます。

この論文では、Drosophilaの幼虫の培養組織に20Eを投与し、応答する遺伝子をマイクロアレイやノザンブロットで調べているのですが、その際に翻訳阻害剤シクロヘキサミドを併用することで、20Eに対して直接応答しているのか否かを判別しているのです。

数年前に、ある研究者の方からシクロヘキサミドを使う方法についてお聞きしたことがあったのですが、今回あらためてこの手法を思い出し、自分たちのカースト分化の研究にも使ってみたいなと思った次第です。
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2006年01月04日

Ultrastructure, Development, and Homology of Insect Embryonic Cuticles

Ultrastructure, Development, and Homology of Insect Embryonic Cuticles
Konopova B, Zrzavy J.
J Morphol. 2005 Jun;264(3):339-62.

昆虫の胚期におけるクチクラの構造の記載を基に、それらの系統間での相同性を論じた論文です。

一見するとかなり瑣末な問題を扱っているようではありますが、実は昆虫の発生と変態様式の進化を議論するために絶対必要な情報を含んでいます。特にずっと昔から続いている議論である、「完全変態昆虫の幼虫larvaは、不完全変態昆虫の幼虫nymphに由来するものか、否か」という大問題(分野外の人にはそうでもないか…)に対し、真っ当な形態学から取り組む姿勢はかっこいいです。

この論文で示されている内容は以下の通りです。

胚期に見られるクチクラの構造と数を観察した結果、無翅昆虫シミ類Zygentomaでは2回、不完全変態昆虫とほとんどの完全変態昆虫では3回、双翅類のハエ類Cyclorrhaphaでは2回のクチクラ形成が起こっていました。これに最も妥当な解釈を加えると、シミ類の1齢幼虫は有翅昆虫の前幼虫prolarvaと相同、ハエ類では胚期の2番目のクチクラが進化的に失われている、ということになります。ハエ類を除けば、不完全変態昆虫と完全変態昆虫の胚期クチクラ形成は良く似ていました。

これは、「完全変態昆虫の幼虫larvaは、不完全変態昆虫の幼虫nymphに由来する」という仮説に、有力な支持を与えるデータです。

僕は、1999年のTruman&RiddifordのNatureの論文に感銘を受けたのですが、今回紹介した論文はその内容に真っ向から反論するものでした。これを読んでしまうと、Truman&Riddifordの議論は確かに細部が甘いというか、強引な所が多かったですね。ですが大変に面白い事も確かなので、そのうち改めて紹介したいと思います。
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2005年12月28日

Disruptive coloration and background pattern matching

Disruptive coloration and background pattern matching
Cuthill IC, Stevens M, Sheppard J, Maddocks T, Parraga CA, Troscianko TS.
Nature. 2005 Mar 3;434(7029):72-4.

Disruptive colorationの捕食回避効果を、厚紙で作ったガのモデルを用いて実験的に検証した論文です。研究室の論文紹介で紹介したので、便乗してここでも紹介することにしました。

Disruptionは日本語では分断と訳されることが多いようです。コントラストの強い模様によって生物の輪郭を認識しづらくするもので、極端な例ではパンダの模様もそうではないかと言われています。

まず、専門外なので研究の背景から勉強しなければならなかったのですが、分断色の効果が、これまで実験的に証明されていなかったのはむしろ僕にとっては以外でした。軍事目的では昔から有名なようで、僕も迷彩の種類として聞いたことがありました。

まあとにかく、この論文では、分断色に塗られたガの模型を使って、鳥類に対する捕食回避効果が示されました。その際に、背景との色の一致(Background matching)の効果と分けて考えるため、模型の縁に模様がかかっているものと、かかっていないものを比較したのがポイントですかね。縁にかかった模様のほうが、捕食回避効果が高いのでした。

この論文自体はとてもシンプルなのですが、これをきっかけに生物の体色の意味について、いろいろ考えさせられました。ある生物がなぜその体色なのか、必然性があるのか、考えてみると面白いです。確からしそうな説明を考えついても、それを実験的に証明するのはとても難しいですけれど。
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