生物学・科学に関する雑感。

現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中


2008年05月23日

The phylogenetic origin and the nature of the wings of insects according to the paranotal theory.

The phylogenetic origin and the nature of the wings of insects according to the paranotal theory.
Crampton G. (1916)
Journal of the New York Entomological Society 24:1-39 + 2plates.

かなり古いですが、Paranotal theoryの普及に中心的な役割を果たしたであろうレビュー。昆虫の翅の起源について、かなり徹底的に議論しており、このあと、多くのレビューや形態学の教科書でParanotal theoryが標準になったようです。

いまから90年以上前に書かれたということでまず驚きますが、主要な論点はこの時点でおおかた出そろっていると考えて良いようです。昆虫の祖先は水生であったか陸生であったか(Cramptonは陸生であったと考えている)、翅はカゲロウの気管鰓と共通の起源をもつか(Cramptonはもたないと考えている)、というあたりが重要な議論です。かなりparanotal theoryに偏った議論ではありますが、それだけ強くこの説を信じていたということでしょう。

あまりにいろいろな点を検討しすぎて、関係の薄そうな周辺の事象にも言及しています。例えば、翅が脚に由来するという説を考えるために、翅から脚、または脚から翅へのホメオティック変異の例を列挙しています。しかしCramptonは、そのような変異が見られたとしても、それが祖先の状態を示しているとは限らない(つまり翅が脚に置換してしまった変異があったとしても、祖先がそういう形だった証拠にはならない)として、翅が脚に由来するという説を退けています。

また、大きく広がった前胸背板を持つカマキリを例にあげて、それらは現在でも飛翔に役だっているかもしれない、と述べていますが、証拠はなし。ここら辺は考えすぎですね。

しまいには、フィリピン近海で目撃されたという、水面近くを飛行する甲殻類について触れています。これはほとんどUMAの類か…。本当に存在するのならば、昆虫の飛翔と比べてみる価値はあるし、ぜひ一度見てみたいものです。

そのような想像力豊かで危うい議論を含みつつも、昆虫の翅の起源を論じたものとしては傑作のひとつでしょう。Grimaldi&Engel(2005)は彼の昆虫形態学者としての功績をたたえ、また、狭いアパートで膨大なバイアルに囲まれて暮らしていたことに触れ、彼の研究課題への献身ぶりは本物だった、と述べています。
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2008年05月19日

An overview of the paranotal theory on the origin of the insect wings.

An overview of the paranotal theory on the origin of the insect wings.
Quartau, JA (1986)
Publicacos do Institudo de Zoologia "Dr. Augusto Nobre" Faculdade de Ciencias do Porto 194: 1-42

ちょうど年明けくらいから、昆虫の翅の起源問題に興味を持ち、文献を読んでいます。札幌での仕事とも、ウィスコンシンでの仕事とも直接関係ないので、趣味の読書といったところです。

昆虫の翅が、祖先のどの構造に由来するのか、という問題はもう100年以上議論されていますが、いまだに2つの説が併記されるような状態です。

ひとつはparanotal theoryと呼ばれているもので、昆虫の背板の横が張り出して翅になったとするもの。多くの場合、シミのような昆虫を翅が進化する直前の状態と仮定し、植物から飛び降りる際にパラシュートのように使ったのではないか、という憶測が伴います。

もうひとつはgill-exite theoryと呼ばれるもので、多くのバリエーションがありますが、カゲロウの幼虫の鰓を祖先構造と仮定し、さらにそれは脚の基部の節の外葉に由来するのではないか、という説。こちらの説では祖先は水生昆虫であると仮定され、さらには、移行段階では、短い翅を使って水面をヨットのように移動していたのではないか、という憶測が伴う場合があります。

さて、この論文はparanotal theoryの側に立って、冷静に問題点を整理しています。100年以上前から多くの議論がある中で、比較的最近に書かれ、論点も整理されているので、この問題の入門には最適なレビューであります。Grimaldi & Engel (2005)に引用されていたため知ることができました。引用をたどってでなければ、なかなかマイナージャーナルの論文には辿り着けません。翅の起源問題では、極めて重要な論文がマイナージャーナルに載る傾向があって、これも一つの困りどころ、あるいは見方を変えれば楽しみでもあります。

さて、本論文ではまず、節足動物では背板の側面がひさし状に突出するケースが多くみられることを挙げています。昆虫以外では、三葉虫、甲殻類、ある種のダニ、ヤスデなど、昆虫ではイシノミ、シミ、ゴキブリ、カマキリ、シロアリ、半翅類(クビナガカメムシ、グンバイムシ)、鞘翅類(シデムシ、ハムシ)、古網翅類、原直翅類、など。多くの昆虫で前胸背板の側面が張り出しており、さらに多くの点で翅芽との類似性がみられるとのこと。

古生代の環境を考慮した生態的な議論も豊富に盛り込まれていますが、こちらは憶測が多く含まれているので、とりあえずパス。捕食回避、分散などの飛翔の意義についても様々に述べています。

また、翅の起源は本当に一回なのかという問題。特にトンボの翅の構造があまりにも独特なので、他の有翅昆虫とは独立に翅を獲得したのでは?というのはたびたび起こる議論らしいです。目間の系統関係も重要になってきますが、一回進化が主流派の意見ということでとりあえずOK。あとは翅基、翅脈、筋肉系の相同性をどう見て、どう進化したと推定するかという議論。

最後にparanotal theoryへの反論、対案と比べて、総合的に議論しています。やはり、paranotal theoryはSnodgrass (1935)ら大御所が支持してきた説だけあって、多くの間接的証拠に支持された強力な仮説であるという印象です。

構図としては、gill-exite theoryを含むその他の仮説は、定説に立ち向かう新説、珍説、あるいは大発見?という位置づけになると思います。Averof and Cohen (1997)によって甲殻類の外葉と昆虫の翅において共通して発現する転写因子が発見されて以来、gill-exite theoryがだいぶ勢いを持っていますが、私は、いずれ揺り戻しが来るのではないかとの印象を強く持ちました。
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2008年05月18日

Natural Variation in Leaf Morphology Results from Mutation of a Novel KNOX Gene.

Natural Variation in Leaf Morphology Results from Mutation of a Novel KNOX Gene.
Kimura S, Koenig D, Kang J, Yoong FY, Sinha N.
Curr Biol. 2008 May 6;18(9):672-7.

トマトのエヴォデヴォ。ダーウィンがガラパゴスで発見したという、葉のつき方が異なる2種の野生トマト、および栽培種のトマトを用いて、その形態の差異がどの変異によってもたらされたのかを調べています。

Solanum galapagenseは近縁種のSolanum cheesmaniaeと比べ、葉のつき方が複雑でカッコイイ。tertiary leaflets(3次小葉?正しい訳語をご存知の方は教えてください…)と呼ばれる余分な分岐があるからです。また栽培種のトマトにおいても、同じような変異が知られているそうです。

大規模な連鎖解析により、変異の場所を同定。S. cheesmaniaeを祖先型としてみると、S. galapagenseにみられる変異は転写因子PTS/TKD1のプロモーター領域に起きた、たった1塩基の欠失でした。(ちょっと用語の使い方がハエ界とは違う。ハエであればプロモーターの範囲を限定して見るため、転写開始点からこのくらい離れていればcis制御領域と呼んでいるはず。)また、栽培種トマトで知られていた、よく似た形態の変異体Petroselinumにおいても、まったく同じ塩基に変異があることが確認されました。

栽培種トマトの(bipinnata変異体)では、転写因子BIPのタンパク質コード領域に8bpの欠失があり、これが形態変異の原因であるとしています。PTS/TKD1は他の転写因子と拮抗的にBIPに結合することも示し、つまりガラパゴスのカッコイイトマトと栽培種のカッコイイトマトでは、同じ遺伝子か、あるいは同じカスケードにある別の遺伝子に変異が入っていたということです。

大変エレガントな仕事で、トマトでこれだけやるのは大変だっただろうと思います。これは、先週から始まった、c研ポスドク6名による自主論文ゼミの、記念すべき第1回目に取り上げられた論文でした。

本筋とは関係ないですが、植物の遺伝子の命名法にはみんな大いに不満で、(トマトなんとかlike-なんとかボックス遺伝子何番、またの名をなんとか、みたいな調子)、ときに表現型、ときにダジャレに基づいた、ハエの粋な命名法に感謝することしきり、でした。
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2008年05月14日

The locus of evolution: evo devo and the genetics of adaptation.

The locus of evolution: evo devo and the genetics of adaptation.
Hoekstra HE, Coyne JA.
Evolution. 2007 May;61(5):995-1016.

cis制御の進化が形質の進化に重要な役割を果たした、という、近頃はやりのコンセプトを批判するレビュー。流行に逆らうのはなかなか大変なことで、そのエネルギーには敬意を表したいと思います。

しかしながら内容はいわゆる“絡み系”であって、ただの揚げ足取りと取れる部分も少なくない。cisが大事か、transが大事か、という対決の構図はわかりやすいが、論争にはあまり益がないと思われます。なぜなら、どちらも重要なのが既に明らかだから。大進化の過程ではどちらも確実に起こっているし、種分化レベルの時間スケールでも、どちらも頻繁に起こってるでしょう。実際は個別のケースがどちらが原因で(あるいは両方で)起こったのか、ある一定の時間スケールで見たときにどちらが形態なり、生理特性なりの進化に寄与したか、という比重の問題が重要なのです。

たとえばスタンフォードのK研によるトゲウオの腹びれの研究はとても有名ですが、腹びれのある種とない種の比較において、ひれの形成される位置での転写因子の発現が異なっていて、マッピングではその遺伝子の近傍に腹びれの有無を決める遺伝子座があることが示され、遺伝子のアミノ酸配列は両者でまったく同一である。これが何を示しているかは明らかであって、これに対してトランスジェニックを作ってcisが原因であることを証明せよ、というのは酷というものでしょう。(そもそもトゲウオでできるのでしょうか?楽ではないのは確か。しかしこのグループのことだから、もうやっているかも?)

逆にショウジョウバエを使った一連の研究…S研やC研のものが有名…ではトランスジェニックを作って証明しているが、これらもあちこちに穴があるのも確か。しかし一つの系ですべてを完全に示すのは困難であるし、まだ注目されて日が浅いのだから、断片的な証拠から浮かび上がる真実をいち早く見抜くのが科学者というもの。もしろjkjのブログで紹介されていたような、cisとtransの効果を総合的に比較、解析する手法を考えることにこそ将来性があるのでは?

この論文は、研究室ではことあるごとに言及される有名論文。なぜなら、この論文で疑わしい研究例として名指しされ、一番バッサリやられているのは…
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2007年10月14日

Gene duplication and the adaptive evolution of a classic genetic switch.

Gene duplication and the adaptive evolution of a classic genetic switch.
Hittinger CT, Carroll SB.
Nature. 2007 Oct 11;449(7163):677-81.

遺伝子重複の後に起こった機能分化の様子を、実験によって推定した論文。遺伝子の機能が適応進化する際に、コード領域とcis制御領域に何が起こったのかを実例と共に示しています。

モデルとして使っているのは出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのガラクトキナーゼGAL1(ガラクト―ス代謝酵素)と補助誘導因子GAL3(GAL4と結合してGAL経路の転写調節をする)の遺伝子で、これらは祖先のゲノムが倍化した際に重複したパラログです。キラー酵母の一種Kluyveromyces lactisでは単一の遺伝子KlacGAL1が両方の機能を果たしており、これが祖先状態であると考えられます。

これらのcis領域、コード領域を入れ替え、遺伝子の発現量と酵母の適応度への影響を測定しています。その結果、適応度に大きな影響を与えているのはcis制御領域の違いによる発現量(ガラクト―ス存在下での誘導量)の違いにあり、特にGAL4結合サイトの数と間隔が、発現量の変化に大きな影響を与えていることが判明しました。

彼らが描くシナリオは、祖先では、ガラクト―ス存在下で中程度に誘導されるGAL1/3(KlacGAL1に似たものを想定)が、ゲノムの倍化によって重複し、一方はcis制御領域の変化、特にGAL4結合サイトが密に並ぶことによって高い誘導量を進化させGAL1となり、他方はcis領域内の4つのGAL4結合サイトのうち、3つを失うことで低い誘導量を進化させ、さらにコード領域内の酵素活性サイトを失うことで、補助誘導因子GAL3になった、というものです。

遺伝子の進化の様子をシッカリと実験的に確かめ、適応度まで測定して検討しているあたりが、Articles欄に載ったポイントでしょうか。C研は最近cis制御の進化にフォーカスしているけど、初めてこの仕事を知った時には、こういうのもアリなのか、と驚いたものです。しかし最近はDrosophilaに集中しているそうで、酵母の仕事はおそらくこれで最後でしょう。

この論文には少し思い出があって、1年くらい前、知り合いの知り合いだった第1著者のC君にお世話になったことがあり、その後C研を訪問した際にも、忙しいところ、この研究の概略を熱心に語ってくれたのでした(詳細はほとんど理解できなかったけど)。
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2007年08月02日

Morphological evolution through multiple cis-regulatory mutations at a single gene.

昨夏しばらくお世話になっていたDS研の新作がNatureに!これは紹介せねばと思ったら、既にg-hopさんに行かれてました…いつもながら紹介早いですね…。

Morphological evolution through multiple cis-regulatory mutations at a single gene.
McGregor AP, Orgogozo V, Delon I, Zanet J, Srinivasan DG, Payre F, Stern
Nature. 2007 Jul 15; [Epub ahead of print]

ハエのcisの進化による形態進化の話。最近ははやりになっている感すらあるこの手の仕事ですが、形態進化の原因をちゃんと特定のエンハンサーにまで落とすには苦労も多いようで。昨夏の時点で、1stオーサーのAさんはドイツに移ってしまっていて、VさんやDさん、それとボス自らが追加データを出している段階でした。いい雑誌に出て、良かった良かった。DS研は特に設備が優れているわけではなくて、共焦点顕微鏡がある以外はごく普通のクラシックなラボなのですが、アイディア次第ですばらしい論文が書けるということですな。ボスは、誰にも所在地を教えていない静かな湖畔の小屋に籠もって、研究のアイディアを考えるとのこと。
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2007年04月20日

Temperature Sex Reversal Implies Sex Gene Dosage in a Reptile

Temperature Sex Reversal Implies Sex Gene Dosage in a Reptile
Alexander E. Quinn,1* Arthur Georges,1 Stephen D. Sarre,1 Fiorenzo Guarino,1 Tariq Ezaz,2 Jennifer A. Marshall Graves2
Science 20 April 2007:
Vol. 316. no. 5823, p. 411

フトアゴヒゲトカゲがScienceに!

爬虫類は、卵の置かれる温度によって性が決定するケースが多く知られていました。フトアゴヒゲトカゲも従来は温度によって性決定すると思われていましたが、実は近年になって性染色体をもつことが判明したのでした。

では温度による性決定という説が間違っていたのかというと、そうではなく、本論文で示されているのは、どちらの性染色体を持つかによって、温度感受の閾値が異なるということ。つまり温度と染色体の両方が重要で、極端に高温だとメスばかり、低温だとメスもオスも生じるということです。

爬虫類の系統内では染色体による決定と温度による決定がたびたびスイッチしていると考えられていたことも、本種で明らかにされたことを考えれば容易に理解できます。あるいはこのようなタイプの決定は、気づいていなかっただけで、実はより広範に見られる現象なのかもしれません。

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2007年01月25日

複葉機型恐竜

G-hopさんのサイトより。

複葉機のような

前足と後ろ足の両方が翼になっている恐竜が中国で発見されていましたが、このたび関節の形状と空力的な検討を加えることによってその復元図が描き直され、モモンガ的な姿勢から複葉機的な姿勢に変更されたとのこと。

自然の造形と人工物の造形が機能的な必要性から驚くほど似てしまう例としても面白いかと。しかも初期は複葉で、特殊化が進んで翼構造が洗練されてくると単葉になるという歴史まで全く同じだとしたら驚異です。NHK「ダーウィンが来た」あたりが好みそうなネタですが…。
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2007年01月12日

Evidence of giant sulphur bacteria in Neoproterozoic phosphorites

Evidence of giant sulphur bacteria in Neoproterozoic phosphorites.
Bailey JV, Joye SB, Kalanetra KM, Flood BE, Corsetti FA.
Nature. 2006 Dec 20; [Epub ahead of print]

なんと…!左右相称動物の胚に見かけがよく似ているために、最古の左右相称動物の証拠と考えられてきたドウシャンツオの微化石が、実は巨大な硫黄細菌の化石であると主張する論文が出てきました。カンブリア紀よりずっと以前に左右相称動物がいた、というロマンあふれる話が、批判的で冷静な観察により見事に打ち砕かれたというべきか…。

この論文の図を見ていただければ分かると思いますが、今回示された現生の硫黄細菌の分裂様式が、例の微化石に非常によく似ているため、硫黄細菌説はかなり信憑性は高いと思われます。微化石の発見当初は、細菌らしからぬ「娘細胞の体積が増えないで進行する分裂様式」を卵割と見まちがえてしまったということでしょう。

また、硫黄細菌がリン酸塩を生成することも示されたので、ドウシャンツオのリン灰岩の形成自体がこの細菌によるものである可能性があるとのこと。

これを機に、伝説めいたドウシャンツオの微化石の解釈を批判的に再評価する仕事が沢山出てきそうな気がします。あとは「左右相称動物の化石」という解釈が一部の標本については生き残るのか、すべて覆されてしまうのか、成り行きを見守りたいと思います。

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2007年01月10日

The origin of insects

「昆虫の起源」と題されたこの記事。既にあちこちで紹介されているものの、やはり触れないわけにはいきません。

The origin of insects.
Glenner H, Thomsen PF, Hebsgaard MB, Sorensen MV, Willerslev E.
Science. 2006 Dec 22;314(5807):1883-4.

詳しい解説はg-hopさんの「六脚類の起源」。

仲田さん「きまぐれ生物学」の「淡水へ!陸上へ!そして昆虫へ」「補足:淡水へ!陸上へ!そして昆虫へ」。

さて、Glennerらがこの記事で取り上げている説は、「甲殻類は六脚類(昆虫含む)に対して側系統」かつ「六脚類の姉妹群は鰓脚類branchiopod(ミジンコ、アルテミア、カブトエビなど)」というものです。より平たく言えば、昆虫は陸に上がった甲殻類、ということになります。

この説にはいくつか魅力的な部分があります。まず、六脚類の化石がシルル紀以前からは見つからず甲殻類の出現よりも1億年ほど遅いことをうまく説明できること。また、陸上ではあらゆる環境に適応できた昆虫が海にはほとんど進出していないという謎に対して、そもそも陸に進出した甲殻類が昆虫なのだから、二次的に海に帰ろうとしても既に主要なニッチは甲殻類に占められていた、という説明ができること、です。

こういう話は正しさを検証するのが難しい面がありますが、断片的な情報をつなぎ合わせて得られるストーリーとしてはまずまず妥当な気がします。しかし議論の元になっているのは分子系統であり(仲田さんの解説)、それらはミトコンドリアゲノムといくつかの核遺伝子の配列を使用しているのですが、六脚類の姉妹群が何なのか、さらに六脚類自体が本当に単系統なのかに関しても議論が分かれているようです。甲殻類と六脚類がひとつのグループ(汎甲殻類Pancrustacea)を形成するのは、ほぼ間違いないようですが、分子系統は日進月歩であり有力な仮説も簡単にひっくり返ることがあるので、今後も注視していきたいと思います。

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2006年11月20日

Developmental system drift and flexibility in evolutionary trajectories.

Developmental system drift and flexibility in evolutionary trajectories.
True JR, Haag ES.
Evol Dev. 2001 Mar-Apr;3(2):109-19.

DSD(Developmental System Drift)に関するPerspectiveです。ちょっと古いですが、気になっていた概念なのでメモしておきたいと思います。

表面的には相同に見え、実際に共通の祖先に由来する形質が、実は発生遺伝的に異なった仕組みで形成される場合があり、これをDSDと呼びます。

例はたくさん挙げられていますが、おそらく最も有名な例は動物の性決定で、ひとくちにオス、メスと言っても、その決定様式は必ずしも同じではありません。ショウジョウバエでは性決定因子として知られるSxlは、イエバエでは性と関係なく発現しています。イエバエではかわりにFと呼ばれている因子がSxlの代わりを果たしているようです。しかしそれよりも下流の遺伝子はおそらくかなりの部分が共通していて(dsxなど)、相同な性形質を発現します。

どうも発生の途中に「ここだけは保守的にさせてくれ」というポイントがあり、その上流と下流は比較的自由に進化する、という図式は「発生の砂時計モデル」に似てますね。特に引用されてないけど。

DSDがConvergence(収斂)と異なる点は、共通祖先が既にその形質を持っていたと考えられることです(したがって「相同」な形質といわれる)。しかし現在の状態だけを見れば、異なった機構で似通った形質を作るという点では同じなのです。場合によっては形質の類似がDSDによるものかConvergenceによるものか判別しがたい場合もありそうです。

そして、「相同」という概念の定義はとても難しい…。例えば、節足動物と脊椎動物の眼や脚は相同なのか…。解剖学的には全く違うけれど、少なくとも形成に必要ないくつかの遺伝子は共通しています。これもDSDにより生じた現象でしょうか。

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2006年11月14日

Comparative developmental genetics and the evolution of arthropod body plan.

Comparative developmental genetics and the evolution of arthropod body plan.
Angelini DR, Kaufman TC
Annu Rev Genet. 2005;39:95-119.

節足動物のEvo-Devoに関する重要な総説。Hoxプラン、昆虫の翅の起源、前胸における翅形成の抑制、前後翅の特殊化、前肢櫛の平行進化など。

いくつか重要そうな概念をメモ。

Tagmosis: 近接したいくつかの体節の特徴が均質化すること。それによってtagmaと呼ばれる体節より上位の単位が生じる。特に鋏角類ではその境界は明瞭で、Hoxの発現パターンとも一致している。(Hox1〜6はProsoma、Hox7以降はOpisthosomaで発現。)昆虫ではHoxの発現パターンが重なりつつも前後にばらけているが、Head, Thorax, Abdomenがtagmaに相当する。

DSD (Developmental System Drift): 見た目の相同性とは裏腹に、その形態を制御する遺伝子ネットワークが変化していること。例えば昆虫の触角形成におけるspaltの役割は保存されているようだが、その上流のDllやHthの機能は保存されていない。

大きなテーマなのに20ページ程度にまとまっていて、古典もそれなりに引用されており、便利に使えそうなレビューです。

長らく更新を休み、申し訳ないです。→banner2.gif
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2006年07月07日

Regulation of body pigmentation by the abdominal-B hox protein and its gain and loss in Drosophila evolution.

Regulation of body pigmentation by the abdominal-B hox protein and its gain and loss in Drosophila evolution.
Jeong S, Rokas A, Carroll SB.
Cell. 2006 Jun 30;125(7):1387-99

Cellのwebサイトを見ていたら、気になる見出しが…。って、Carrolのグループじゃないですか!しかも今回は明らかに本気…。データも多く、重厚です。これはじっくり読まねば。

追記:g-hopさんにご指名を受けてしまいましたので、ササっと読んで紹介したいと思います。少々お待ちください…。

さらに追記:読み終えました。これはすごいですね。着想と実験の進め方は過去のエントリでも紹介した翅の斑紋の話に似ています(g-hopさんによるわかりやすい解説はこちら)。今回のテーマは、ショウジョウバエのなかでもD. melanogasterなど一部の種で見られる「雄の腹部末端が黒い」という形質がどのように進化したのか、遺伝的な基盤を探るというものです。特に体の後端のidentityを決定するHox遺伝子であるABD-Bが、色素の生合成に関わっているYellowのcis制御領域に結合することで発現を制御している可能性が高いことを示し、その系のどこが変化することで体色の進化が起こったのかを議論しています。

まずはD. melanogasterにおいて、色素の生合成に関わると考えられているyellow遺伝子のcis制御領域にレポーター(EGFP)をつなぎ、蛹でのレポーター発現パターンと成虫の黒い着色のパターンを比較すると、両者は一致します。cis制御領域の一部を欠く様々なレポーターのコンストラクトをつくり、レポーターの発現パターンから、腹部末端での発現に必要な領域を限定していきます。さらにDNase I フットプリントによりABD-Bの結合サイトを明らかにしています。またABD-Bをノックアウトした系統では、レポーターの発現が見られないことを確認しています。つまり、おそらくはABD-BがYellowのcis制御領域へ結合することが、腹部末端の着色に必要であると考えられます。また、系統解析の結果から、「雄の腹部末端が黒い」という形質は、melanogaster-subgroupの祖先的な形質と考えられています。

次に着色パターンが異なる複数の種からYellowのcis制御領域を持ってきてレポーターにつなぎ、melanogasterに導入して発現パターンを調べました。すると、雄の腹部末端が黒いbiarmipesではmelanogasterと同様のパターンに発現が見られ、末端が黒くないkikkawaiでは発現が見られませんでした。したがって、kikkawaiにおいてはYellowのcis制御領域が進化的に変化することで末端の着色という形質を失ったと考えられます。

ところが、やはり腹部末端が黒くない種である santomeaとbipectinata においては、末端でレポーターが発現していました。ABD-Bの結合サイトを確認すると、なんとsantomeaではmelanogasterと全く同じ、bipectinataもほぼ同じことがわかりました。つまり、この2種において「腹部の末端が黒くない」という形質は、少なくともABD-Bが結合する領域の変化によって起こったのではないことがわかります。先行研究から、bipectinataではBAB (bric a brac) の発現パターンが性特異的でなくなっていることがわかっており、これにより着色を失った可能性があります。しかしsantomeaではYellowのcis制御領域もBABの発現もmelanogasterと同じなので、今回調べられなかった何らかの進化的変化が腹部の着色を失わせたと考えられます。

また、以上の種を含むmelanogaster-subgroupの姉妹群にあたるobscura-subgroupに属し、全身真っ黒なsubobscuraでは、同様のレポーターアッセイでは予想通り全体に発現が見られます。しかしABD-B結合サイトに限定してみると結合能を持っているようであり、著者らは、「実はmelanogaster-subgroupとobscura-subgroupの共通祖先は腹部末端が黒かった」という可能性にも言及しています。(しかし結合の仕方は全く同じではなく、祖先状態については複数のシナリオがありえます。このあたりはややこしいので詳しく知りたい方は論文を参照してください。うまく説明できません…。)

以上をまとめると、melanogaster-groupでは「雄の腹部末端が黒い」という形質が複数回独立に失われており、それらはそれぞれ、Yellowのcis制御領域(ABD-Bの結合領域)の変化、Yellowを制御しているBABの発現の変化、それ以外、という様々な要因によって引き起こされたらしい、ということですね。一般にカスケードの最上流と思われがちなHox遺伝子であるABD-Bが、最終的な形質である体の着色を直接制御している、ということを示したのも意義があるとのことです。

(以上、ざっと紹介しましたが、間違いなどありましたらご指摘ください。)

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2006年06月14日

Evolutionary developmental biology and the problem of variation.

Evolutionary developmental biology and the problem of variation.
Stern DL.
Evolution. 2000 Aug;54(4):1079-91.

いま居候しているラボのボスによる総説。やや古いですが、読み返しているところ。図が一切なく、文字だけです。しかし最近は会話で苦労しているせいか、英文を読むのが心理的に楽になったような気がします。

で、中身ですが、形質の進化をどのように理解し、研究したらいいかという方針について議論しています。フィッシャーやドブジャンスキーによる進化の理解の仕方は、現代の基準に照らすとどこが間違っていたかを問い、プレイオトロピーの概念と実体について整理し、進化的変化を引き起こした遺伝的変異と、変化の仕組みを明らかにするためにはどのようなアプローチが可能なのかを検討しています。

環境が変化したとします。そこで特定の組織・タイミングにおいては環境により適応した変異がタンパク質コード領域に生じたとしても、そのタンパク質は他にも沢山の組織やタイミングで必要とされ(プレイオトロピックな性質)、そこでは有害であるケースが多いと考えられます。特にシグナル伝達因子や転写調節因子などの発生の根幹に関わる因子は様々な局面に使い回されていることが多いため、タンパク質コード領域への変異は弊害が大きく、実際にそれらは極めて配列の保存性が高いということが知られています。

しかし遺伝子のcis制御領域への変異であれば、タンパク質の機能を変化させることなく、特定の文脈での使い方のみを変更することができます。例えば、Drosophilaのシグナル伝達因子であるdppは発生の様々な局面で重要な働きをするので、タンパク質コード領域へのamorphicな変異は胚性致死を引き起こします。しかしcis制御領域への変異は、それぞれ感覚子、翅脈、複眼などに限定された変異を生じます。もしこのような変異が選択を受ければ、特定の場所・タイミングでの使われかたのみを変化させることができるわけです。

このような観点でcis制御領域に注目して行われてきた一連の研究については、過去のエントリでも少し触れています。これこれなど。

Drosophilaは、発生遺伝学ではもちろん圧倒的に重要なモデル生物ですが、進化的変化の遺伝的な実体に迫る上でも他に並ぶもののないいい材料ですね。

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2006年05月24日

High-resolution QTL Mapping Reveals Sign Epistasis Controlling Ovariole Number between two Drosophila Species.

High-resolution QTL Mapping Reveals Sign Epistasis Controlling Ovariole Number between two Drosophila Species.
Orgogozo V, Broman KW, Stern DL.
Genetics. 2006 Feb 19; [Epub ahead of print]

来週からお世話になるStern研の最新作がGeneticsに。キイロショウジョウバエ種群 Drosophila melanogaster-groupの中でも、D. simulans, D. mauritiana, D. sechelliaはD. melanogasterに最も近縁な3種であり、microevolutionの研究には非常に好適な材料です。たとえばStern研では、Stern自身によるUbxのcis制御領域と形態進化に関する研究や、Sucenaらによるsaven baby/ovoのcis制御領域と幼虫形態の進化に関する研究がなされてきました。↓

A role of Ultrabithorax in morphological differences between Drosophila species.

The Hox gene Ultrabithorax modulates the shape and size of the third leg of Drosophila by influencing diverse mechanisms.

Divergence of larval morphology between Drosophila sechellia and its sibling species caused by cis-regulatory evolution of ovo/shaven-baby.

Regulatory evolution of shavenbaby/ovo underlies multiple cases of morphological parallelism.

さてこの論文では、D. sechelliaでは近縁種に比べて卵巣小管の数が特に少ないことに注目し、どのような遺伝的変化がそのような進化をもたらしたのかを明らかにするべく、D. sechelliaとD. simulansを交配し、QTL mappingを行っています。特にウリとなっているのは、selective phenotypingという手法によって、極めて高い精度でQTLをマッピングしていることです。この手法ではおおまかにQTLの位置を調べ、次にその領域にある遺伝マーカー(ここではstとe)を利用して近傍で組み替えがあった個体に的を絞り、さらに細かくマッピングすることができるそうです。これまでマウスで使われたことはあったものの、ショウジョウバエに使われるのは初めてだとか。マッピングの精度はQTLを具体的な遺伝子に落とせるか落とせないかを左右するので極めて重要です。

結果として、卵巣小管数に大きな効果をもたらすQTLはいくつか同定され、それぞれ候補となる遺伝子がいくつか挙げられています。特に最も大きな効果をもたらすQTLはインスリン受容体遺伝子InRを含む領域にあり、卵巣小管数の進化にInRが関与している可能性が強く疑われます。もともとD. melanogasterではインスリンシグナリング経路の遺伝子の変異は卵巣小管数の変化をもたらすことが知られているので、まぁおそらくInRに落ちるんでしょう。そうするとStern研の別の人たちがこれまで取り組んできた、インスリンシグナリング+体サイズの制御の研究の流れと、遺伝子のcis制御+形態進化という2つの大きな路線がここにきて融合するわけですね…。これ、偶然ではなくて狙ってやっていたらすごいな…。

QTLマッピングの作業の大変さに思いを馳せつつ、クリック(投票)お願いします

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2006年05月11日

Large-scale gene discovery in the pea aphid Acyrthosiphon pisum (Hemiptera).

Large-scale gene discovery in the pea aphid Acyrthosiphon pisum (Hemiptera).
Sabater-Munoz B, Legeai F, Rispe C, Bonhomme J, Dearden P, Dossat C, Duclert A, Gauthier JP, Ducray DG, Hunter W, Dang P, Kambhampati S, Martinez-Torres D, Cortes T, Moya A, Nakabachi A, Philippe C, Prunier-Leterme N, Rahbe Y, Simon JC, Stern DL, Wincker P, Tagu D.
Genome Biol. 2006;7(3):R21. Epub 2006 Mar 10.

国際共同研究チームによるアブラムシESTの論文です。フランス、アメリカ、日本、スペインの各シークエンスセンターで、エンドウヒゲナガアブラムシの様々な組織から作られたcDNAライブラリーのシークエンスが読まれました。その結果、約40000のESTが読まれ、それは約12000の転写産物として整理されました。

気にとめておくべき点は、まずこれらのESTの59%では既知の相同な配列が見つからないということです。意外に多いですね。(ESTの長さの平均値は約600bpということで、短すぎて相同性を見つけるための情報量が足りないということもありますが。)

また、アブラムシではGC含量が非常に低いことも特筆すべきでしょう。タンパクコード領域のGC含量はショウジョウバエでは69%であるのに対し、アブラムシではわずか34%です。

う〜む、アブラムシのゲノムの基本情報は着々と整備されていきますね。現在ゲノムプロジェクトも走っているので、表現型多型のモデル昆虫として、今後とも最も有望でありつづけるのは間違いありません。
posted by シロハラクイナ at 20:50| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月02日

Chance caught on the wing: cis-regulatory evolution and the origin of pigment patterns in Drosophila.

Chance caught on the wing: cis-regulatory evolution and the origin of pigment patterns in Drosophila.
Gompel N, Prud'homme B, Wittkopp PJ, Kassner VA, Carroll SB.
Nature. 2005 Feb 3;433(7025):481-7.

昨日紹介した論文と同じチームによる、ひとつ前の論文。Drosophilaの別の種を使って似たようなことをしていますが、この論文のほうがデータ量が豊富で、yellow以外にもengrailedやebonyの関与についても触れています。しかしg-hopさんが指摘しているように結果がクリアでない部分もあり、yellowのcis-regulatory elementだけでは種間の斑紋の有無を完全に説明できないのは著者達も認めているところです。

Carrollらのグループは、他に腹部の色彩への関与に関する論文もあり、こちらもかなり良い仕事です。全体としてみると相当な迫力がありますね。

Genetic mechanisms and constraints governing the evolution of correlated traits in drosophilid flies.
Gompel N, Carroll SB.
Nature. 2003 Aug 21;424(6951):931-5.

Evolution of yellow gene regulation and pigmentation in Drosophila.
Wittkopp PJ, Vaccaro K, Carroll SB.
Curr Biol. 2002 Sep 17;12(18):1547-56.
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2006年05月01日

Repeated morphological evolution through cis-regulatory changes in a pleiotropic gene.

Repeated morphological evolution through cis-regulatory changes in a pleiotropic gene.
Prud'homme B, Gompel N, Rokas A, Kassner VA, Williams TM, Yeh SD, True JR, Carroll SB.
Nature. 2006 Apr 20;440(7087):1050-3.

ショウジョウバエの翅の斑紋とcis-regulatory elementの進化に関する論文。本当にすばらしい。
内容については、既にg-hopさんが詳しく解説されていますので、そちらをご覧ください。cis-regulatory elementの変化によって、斑紋が生じたり失われたりしますが、異なった領域が変化することで斑紋が平行進化した例と、同じ領域が変化することで独立に斑紋が失われた例とが示されています。

実は私は1999年、卒業研究でmelanogaster-groupの分子系統をやっていたので、この論文を読むと感慨深いものがあります。翅の斑紋の有る無しにはもちろん気づいていて、斑紋のあるタイプはかわいいなぐらいにしか思っていませんでした。系統内で斑紋が独立に複数回進化していることもうすうす分かっていましたが、当時cis-regulatory elementに関する知識・興味は全くなく、これほどすばらしい研究に発展しうる材料に毎日触れていることには気づいていませんでした。当時、既にSternによるUbxのcis領域の論文は出ていたはず。その重要性を理解したのは最近です。

ということで、この論文がすばらしすぎて、ちょっと凹んでしまいました。とはいえ、落ち込んでばかりもいられません。仕事仕事!
posted by シロハラクイナ at 22:57| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月29日

Caste-specific cytochrome P450 in the damp-wood termite Hodotermopsis sjostedti (Isoptera, Termopsidae).

うちのラボのフランス人RCさんの論文がPubMedに掲載されたので、これを機に紹介しておこうと思います。私も共著に入れて頂きました。

Caste-specific cytochrome P450 in the damp-wood termite Hodotermopsis sjostedti (Isoptera, Termopsidae).
Cornette R, Koshikawa S, Hojo M, Matsumoto T, Miura T.
Insect Mol Biol. 2006 Apr;15(2):235-44.

オオシロアリは私たちのグループでメインに使っているシロアリで、ワーカーに相当するカーストは 擬職蟻 (Pseudergate; シュードエルゲイト)です。擬職蟻にJHA (Juvenile hormone analogue; 幼若ホルモン類似体) を投与すると、人為的に前兵隊への分化を誘導することができます。そこでJHAを投与した個体と投与していない個体でDifferential displayをおこなって、兵隊分化初期に発現が変化する遺伝子が探索されました。

HsjCaste.jpg

その結果、cytochrome P450の一種の遺伝子を同定し、ルールに従ってCYP6AM1と命名。擬職蟻ではコンスタントに発現していますが、JHA投与後1日〜3日の間に発現が低下し、前兵隊になった後も発現は低いままでした。発現しているカーストは擬職蟻と兵隊で、若齢幼虫、前兵隊、翅芽虫、有翅虫、補充生殖虫では発現していませんでした。また、擬職蟻において発現している組織は主に脂肪体でした。

さて、CYP6AM1の機能は何か?cytochrome P450は大きな遺伝子ファミリーを構成していて、様々な酸化酵素をコードしています。(例えば、先日のエントリで紹介した、ヒトの肝臓でカフェインを分解している酵素もcytochrome P450の一種です。)配列のみから基質を予想するのは困難です。

発現パターンから考えられる可能性の中で有力なのは、JHの代謝に関わっているか、脂肪酸などのエネルギー代謝に関わっていることです。RCさんは後者が有力だとふんでいるようです。

JHA投与から前兵隊への脱皮までは2週間以上かかるのですが、投与後1日〜3日目に発現が変化する遺伝子が同定されたことで、外見上は何の変化もない段階でも、体内での遺伝子発現レベルの変化は起こっていることが示されました。これは予想通りの結果です。今後はさらに早期に発現が変化する遺伝子を探すべく、別の方法でアプローチを試みています。

posted by シロハラクイナ at 12:16| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月16日

A dual-genome microarray for the pea aphid, Acyrthosiphon pisum, and its obligate bacterial symbiont, Buchnera aphidicola.

A dual-genome microarray for the pea aphid, Acyrthosiphon pisum, and its obligate bacterial symbiont, Buchnera aphidicola.
Wilson AC, Dunbar HE, Davis GK, Hunter WB, Stern DL, Moran NA.
BMC Genomics. 2006 Mar 14;7:50.

アリゾナ大のMoranらのグループによる、エンドウヒゲナガアブラムシ・マイクロアレイの報告。この方法のウリは、アブラムシとその共生細菌であるBuchneraを同時に解析できることですね。

アブラムシの約1800のESTと、Buchneraの76の遺伝子をスポットしたマイクロアレイで、熱ショックに対する応答を調べています。著者らも書いているように、これは明らかに、実験系がうまく走るか調べるためのテストですね。本当に調べたいことは他に山ほどあるはずです。熱ショックを使ったのは、あらかじめ発現が変化する遺伝子が予想できるから、ということです。

で、結果としては、予想通りヒートショックタンパクの発現が増加。技術的な問題点として、やはり相同性のある他の遺伝子のクロスハイブリが起こっているとのこと。やはりマイクロアレイによるスクリーニングの後、Real-Time PCRによる発現量のチェックは欠かせないようです。

この論文だって公開されたのがこの3月ですが、現在はESTがもっと充実してきていると思いますし、今後はもっと大規模なスクリーニングが可能になっていくでしょうね。
posted by シロハラクイナ at 00:10| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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