生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2009年01月30日

An optimized transgenesis system for Drosophila using germ-line-specific phiC31 integrases.

An optimized transgenesis system for Drosophila using germ-line-specific phiC31 integrases.
Bischof J, Maeda RK, Hediger M, Karch F, Basler K.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Feb 27;104(9):3312-7. Epub 2007 Feb 22.

最近はp-elementによる遺伝子導入の代わりに、もっぱらintegraseを使った系を用いています。これはそのシステムの構築を報告した論文。いま私がいるラボでは、この論文が公表される前から、著者たちから系統をもらって使い始めていたようです。p-elementよりも優れている点は、導入効率がやや高いこと、酵素の供給源となるヘルパーを同時にインジェクションする必要がないこと(integraseを生殖系列で発現する系統が利用できるため)、導入場所をあらかじめ指定できるので導入位置の効果を考えずに済むこと、などでしょうか。なお、導入場所となる”着地点”は、marinerというトランスポゾンに乗せて導入してあります。integraseは、p-elementを用いて導入してあります。

ところで、ここからは論文の内容とは関係ないですが…。ラボでは、大量に遺伝子導入系統を作る場合には自分でどんどんインジェクションしないといけないですが、ちょっとやる場合には技官さんにお願いしてしまうのが楽ちんです。導入したいコンストラクトを精製して技官さんに渡せば、しばらくしたら赤眼のハエが渡されるという寸法です(white遺伝子をマーカーとして導入するので、赤眼のハエは導入された遺伝子を持つ個体)。

こういうサポート体制の充実も、研究をスピードアップするのにとても有効だと思います。そのほか、DNAシークエンス、LBやPBSなどの調整、ハエのエサの準備、洗い物、物品の発注など、かなりのことを専門のスタッフさんがやってくれます。それぞれ熟練するとかなりのクオリティとスピードが実現できることなので、ビル単位で専門家がやった方がずっと効率的なわけです。研究者は「考えるのが主な仕事」。また、必ずしもPI(教授など)に向いているとは言えないけれど、大学での研究に携わっていたい人にとって、Research scientistとかResearch associateとかResearch assistantなど色々な職種があって、ほどほどに頑張りながら食っていける場を持てるというのもこのシステムのメリットだと思います。

このような分業はいかにもアメリカ的と言われ、日本の大学ではあまり見られないと思います。理研などリッチな研究機関はちょっとアメリカに近いかもしれません。考えてみましたが、特にこの分業システムのデメリットは見つからない気がします。あえて言うなら、若者に全て自分でやる能力をつけさたり、根性を育てたりする機会を失ってしまう?
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2009年01月25日

Human vision fails to distinguish widespread sexual dichromatism among sexually "monochromatic" birds.

Human vision fails to distinguish widespread sexual dichromatism among sexually "monochromatic" birds.
Eaton MD.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Aug 2;102(31):10942-6.

バードウォッチングをする人にとっては、鳥の羽衣の性的二型はおなじみだと思います。要は、オスとメスで色が違うということです。

私は、バードウォッチャーとしては「カモ好き」なのですが、常々疑問だったのは、マガモはオスが青首といわれる緑の顔でメスが地味な茶色、それに対して非常に近縁で雑種がよく見られるほどのカルガモは、オスもメスも茶色くて区別がつかないということです。近縁種で繁殖行動も似ているだろうに。マガモのオスの羽衣はとても派手で、維持にはコストも掛かっていると考えられ(作るための資源も、捕食リスクの増大も)、シーズンオフにはエクリプスと呼ばれる地味な羽衣で過ごすこともその証拠の一つと言われているはずです。でも近縁種ではオスも地味。鳥のことをちょっと知っている人ならば、こういう例はたくさんあげられると思います。

今日紹介したい論文は、この疑問に対して、意外な答えを与えてくれました。我々が見えていないだけで、鳥たちからしてみれば、多くの鳥(ここではスズメ目のデータを示している)は色彩に二型がある、というものです。人が見てオスメス同色の139種の鳥の標本を用いて、光の反射スペクトルを測定、鳥は一般に紫外光が見えるといわれているので、そのデータに基づいてデータ解析すると、90%以上の種が、鳥から見ればオスメス別の色に見えている、という結果。識別できる閾値の設定によって多少結果はかわるようですが、いずれにせよ驚きの結果です。ということは、そのあたりを歩いているスズメを紫外線撮影したら、オスメスでまったく別の模様に写ったりするのでしょうか…。
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2009年01月21日

Drosophila melanogaster's history as a human commensal.

Drosophila melanogaster's history as a human commensal.
Keller A.
Curr Biol. 2007 Feb 6;17(3):R77-81.

Drosophila melanogaster (キイロショウジョウバエ)が、いかにして世界中に広まったのか、に関するレヴュー。

アメリカ大陸に侵入したのはわずか100年前であるとか、ハワイに侵入したのはハワイ大学から逃げたせいだとか、役に立つような、そうでもないような知識が満載でした。melanogasterのもともとの食物が何だったのかはよく分かっておらず、野生のバナナを含む複数の果物であったのではないかと言われているようです。
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2009年01月17日

Sociobiology as an adaptationist program

Sociobiology as an adaptationist program
Behav Sci. 1979 Jan;24(1):5-14.

ルウォンティンによる、ウィルソン「社会生物学」批判。私はその批判の内容にはあまり興味はなくて、先日触れたマルピーギ管の話の部分を詳しく読みたくて、学内の医学・保健系の図書館でコピーを入手。

学内でだいたい欲しい文献が手に入ってしまうのは、この大学の良いところのひとつです。日本だと、生物学の文献が一番充実しているであろう東大や京大でも、中堅どころのアメリカの大学にはかなわないと思います。(もちろんアメリカの大学は主に英語の文献を収集するだけでいいので、楽なわけですが。)

それで、肝心のマルピーギ管の話ですが、先日引用した部分以上のことは全く書かれていませんでした…。もっと詳しい説明とか、引用文献があることを期待していたのですが。red eye pigment metabolismなんていう書き方は、おそらくショウジョウバエを想定して書いていると思うのですが。ショウジョウバエの複眼色の変異体(whiteとかvermilionとか)ではマルピーギ管の色も薄いことが知られているので、おそらくそのことでしょう。

しかし、考えてみれば内臓の色というのは、まったく自然選択にさらされていない、制約のない状態で進化した色であり、それでも生物によって臓器によって色はさまざまであるというのは面白い気がします。グラスフィッシュのように、(捕食者からの隠蔽のため?)内臓ごと無色にするには、逆にコストが発生するのでしょう。
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2009年01月15日

Introduction: Experimental Approaches to Testing Adaptation

Introduction: Experimental Approaches to Testing Adaptation
Johanna Schmitt
Am Nat 1999. Vol. 154, pp. S1–S3

生物の形質が「適応的」なものかどうか、判別するのはとても困難なことで、実験的に証明できれば一番なのはいうまでもないけれど、その「証明」にも様々なレベルのものがあると思います。

比較的やりやすいのは、特定の2地域に適応していると思われる地域系統を取ってきて、環境を入れ替えてやり、元よりも適応度が下がったことをもって、元の地域に適応していた証拠とするもの。しかしこれでは、どの形質が、環境のどのような要素との関係において適応的なのか、示すことは難しい。

そこで、生物の形質の側を操作してやって、適応度がどのように変化するか見る。これは理想的ですが、実際にどこまでできるのか、技術的なところが大きな壁ですね。この論文は、そういうチャレンジについてのシンポジウムの特集号のイントロダクションのようですが、興味深いキーワードが多かったため検索に引っかかって目に留まったのでした。

私はマディソンに来てから、ハエの色彩の進化の至近メカニズムに取り組んでいて、それはそれで重要だし面白いのだけれど、やはりそのような形質の進化を引き起こした究極要因と結びついて初めて強力なストーリーになると思っているので、いつかなんとかその境地にたどり着けないか、と考えているのです。いま使っているマニアックなハエでは無理そうだけれど。やっぱり、melanogasterに始まってmelanogasterに終わる、か…。なにしろ、「形質を操作できる度合」でいえば、動物界で間違いなくトップクラスだし…。
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2008年12月24日

Efficient gene targeting in Drosophila by direct embryo injection with zinc-finger nucleases

Efficient gene targeting in Drosophila by direct embryo injection with zinc-finger nucleases.
Beumer KJ, Trautman JK, Bozas A, Liu JL, Rutter J, Gall JG, Carroll D.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Dec 16;105(50):19821-6

昨日の続きです。相同組み替えに頼ったターゲティングは、あまり効率が高くないのは確かなようで(自分でやっていないので実感としてはわかりませんが)、この論文では、Zinc-finger nucleaseという人工的にデザインされた酵素で、ゲノム上の狙った場所を直接切断することでターゲティングを行っています。Zinc-finger nucleaseは、ひとつの酵素に3つのZinc-fingerを持たせておいて、連続した9塩基を認識することができます。2量体で働くので、切断したい場所を挟んだ18塩基分の配列を考慮してデザインすることで、完全に特異的な領域を切断できるわけです。酵素をコードするmRNAを作っておいて、これを卵にインジェクションすると。多くの場合、切断されたゲノムを細胞が修復する過程でミスが入って、突然変異となるようです。

さらに、修復酵素の変異体(lig4)を用いて修復を阻害し、望みの配列を含むプラスミドをZinc-finger nucleaseとともにインジェクションすることで、細胞はプラスミドとの相同組み替えでなんとかDNAを修復するらしく、望みの配列を持った変異体を得ることができるようです。

もしこれが、ゲノム上のどの領域でも、本当に論文に書かれているような高効率で出来るとしたら夢のような技術だと思うのですが、あんまり大騒ぎになっていないところを見ると、おそらくどこかにデメリットがあるんでしょうか?Zinc-finger nucleaseのデザイン、作成が面倒くさそうなのはわかるのですが、そのうちに外注で作ってくれる会社も現れそうだし、この手法が一気に広がる可能性もあると思うのですが、どうでしょう。
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2008年12月23日

A powerful method combining homologous recombination and site-specific recombination for targeted mutagenesis in Drosophila

最近、私はショウジョウバエを使った実験をしていますが、Drosophila melanogaster (キイロショウジョウバエ)ではない、変な種を使っているので、melanogasterでの分子遺伝学テクノロジーには正直ついて行けていません。まぁしかし、ここC研ではmelanogasterを使っている人も多くいるので、新しい技術を見たり聞いたりする機会はけっこうあります。

目的にもよるのでしょうが、最近C研では遺伝子導入の方法として、p-element系からintegrase系に移行していて、これによりゲノム中の、あらかじめ用意した着地点に遺伝子を導入できるため、position effectの影響を避け、かつ高い効率を実現しています。解析したいエンハンサーに、EGFPなどのレポーターをくっつけて、integraseで導入する、というのがよくやる実験です。

突然変異の導入法も、これまた目的にもよるのでしょうが、p-elementを用いたランダムな方法から、ジーンターゲティングと呼ばれる、特定の遺伝子を狙ってつぶす方法に移行する流れのようです。しかし効率にはまだ問題があって、一つのラインを作るのに、なんだかんだで、だいたい半年くらいかかってしまう、と言われているそうです。そういうわけで、いかに高効率に、短時間で行うか、という技術開発も盛んです。アメリカ人ポスドクのTさんが、C研では初めてターゲティングに取り組もうとしており、ラボセミナーで概略を話してくれたのですが、なんだか方法がさっぱりわからない。(…私の聞き取りの問題かと思ったのですが、あとで聞いたらみんな分かっていなかった!)そこで原著を丁寧に読んでみようと思ったわけです。

A powerful method combining homologous recombination and site-specific recombination for targeted mutagenesis in Drosophila
Gao G, McMahon C, Chen J, Rong YS.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 16;105(37):13999-4004


この論文では、一つの遺伝子に対して複数の異なった変異を入れて比較解析したい場合に便利な手法を開発しています。あらかじめ、狙う遺伝子の近傍にintegraseの着地点を、相同組み替えによるジーンターゲティングで導入しておいて、そこにintegraseによって望みの変異を入れる、という二段階方式をとります。時間と手間が掛かるのは初めの相同組み替えの部分なので、一度それさえ出来てしまえば、そこにintegraseで変異を入れるのは楽ちん、というわけです。従来の一段階方式だと、時間のかかる相同組み替えを、欲しいすべての変異についてやらなければいけなかったので、それを考えるとだいぶ楽になるというわけです。

方法はこの論文のFig1に図解で示されているのですが、これがまぁややこしい。一旦概略を理解してしまえばそう難しくはないのでしょうが…。

最近、また別のコンセプトによるターゲティング法も開発されているので、そちらも後日紹介したいと思います。
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2008年09月11日

Shadow enhancers as a source of evolutionary novelty.

Shadow enhancers as a source of evolutionary novelty.
Hong JW, Hendrix DA, Levine MS.
Science. 2008 Sep 5;321(5894):1314.

ショウジョウバエ胚のパターニングに関わるbrkやsogにおいて、主要なエンハンサーと機能的に似かよった"影の"エンハンサーが存在しているという報告。手法的には、CHIP-chipを使っているようですね。"影の"エンハンサーは、主要なエンハンサーよりも進化速度が速く、主要なエンハンサーに元の機能を保持させつつ、"影の"エンハンサーが新たな発現パターンを獲得しうる、かもしれない、という、少々出来すぎたお話。遺伝子重複による進化、という考え方の、エンハンサー版ともいえるでしょう。

ところで、最近ScienceのBreviaで気になるのは、メインデータがほとんどSupporting Online Materialに押し込められてしまっているということ。公開当初はいいけれど、何年、あるいは何十年かたってから、Supportingのほうが見られなくなりそうで心配です。

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2008年08月28日

Crustaceans.

Crustaceans.
VanHook AM, Patel NH.
Curr Biol. 2008 Jul 8;18(13):R547-50.

Current Biologyの、"Primer"というコーナーは、素人向けに材料やジャンルの解説がされていて勉強になります。

これは甲殻類の研究についての軽い紹介とパースペクティブです。ここではちょっとしか触れられていないのですが、どうも甲殻類のEvoDevo業界では、端脚類amphipod のParhyale hawaiensisという材料が熱いみたいですね?ちょっと関連論文も勉強中です。
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2008年08月24日

The Regulation and Evolution of a Genetic Switch Controlling Sexually Dimorphic Traits in Drosophila

The Regulation and Evolution of a Genetic Switch Controlling Sexually Dimorphic Traits in Drosophila
Thomas M. Williams, Jane E. Selegue, Thomas Werner, Nicolas Gompel, Artyom Kopp, and Sean B. Carroll (2008)
Cell 134, 610-623.

つい最近出た、アメリカ人ポスドクTさんの論文。足かけ4年の大作で、内容もすばらしいが、データ量がすさまじい。本文はともかく、Supplemental dataが52ページもあるんですけど…。セカンドオーサーはラボの技官の方で、この圧倒的なデータ量は彼女の働きによるところが大きいそうです。表紙もとれて、性的二型の話ということで、エンハンサーの配列をバックに、ライオンがこちらをにらみ、カブトムシが飛ぶという、なんだかすばらしいことなっております。

内容は、キイロショウジョウバエD. melanogasterにおける性的二型の制御とその進化的起源に関するもので、bab1という遺伝子のcis領域の解析が軸になっております。キイロショウジョウバエは、melanogasterという名のとおり、腹が黒いのですが、これはオスだけに見られる特徴です。bab1の産物は黒色色素の沈着に関わるyellowを抑制することが知られているので、この遺伝子のcis領域に起こった進化が、ショウジョウバエの性的二型の進化の直接の引き金になっている可能性が高いのです。

従来の類似の仕事と比べると、babはcis領域がやたら大きく、5'側も、第1イントロンも、それぞれ数10kbあるので、最初のころは解析が大変だったらしい。babの発現に性的二型をもたらすエンハンサーを特定した後も、ABD-Bの結合サイトが大量にあってとにかく大変。しかも色彩に性的二型がないD. willistoniと比べてみると、意外なことにおおかたの転写因子結合サイトは保存されている…。結局、エンハンサー内部にある転写因子結合サイトの間の距離(スペーシング)や結合サイトの向き(ポラリティ)の変化が、bab1の発現領域を大きく変えて、結果、色彩の二型をもたらしたのではないか、という結論。

(bab1は黒色色素の沈着を抑制する因子なので、その発現は色彩のパターンと逆になっているし、腹部の前半と後半で別のエンハンサーによって制御されているため、ちょっと全体を理解するのに時間がかかると思います。私も最初に聞いたときは、なんのことやらわからなかった…。)

書き方もうまいというか、実はよく理解するとつっこみどころもあるのだが、有無を言わさぬストーリー展開とデータ量でねじ伏せてくる感じ。良くも悪くもC研の味が濃厚に出た論文なのではないでしょうか。
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2008年08月23日

Evo-devo and an expanding evolutionary synthesis: a genetic theory of morphological evolution.

Evo-devo and an expanding evolutionary synthesis: a genetic theory of morphological evolution.
Carroll SB.
Cell. 2008 Jul 11;134(1):25-36.

ボス単著のレヴュー。気合い入ってます。「cis配列の進化によって、形態の進化が起こることが多いんじゃないの?」という見方を補強する証拠を集め、また最近多い反対意見に対する再反論を行っています。これで言いたかったことはだいたい言い尽くしたのではないでしょうか?そろそろ、ラボの次の方向性を模索し始めている模様…。
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2008年07月30日

The Spandrels of San Marco and the Panglossian Paradigm

The Spandrels of San Marco and the Panglossian Paradigm: A Critique of the Adaptationist Programme.
S. J. Gould and R. C. Lewontin (1979)
Proceedings of the Royal Society of London. Series B, Biological Sciences, Vol. 205, No. 1161, pp. 581-598

グールドの論文なんてあまり読む機会もないと思っていましたが、フランスから来ているHさんがジャーナルクラブで取り上げたので、メモしておきます。一般向けに書かれているエッセイシリーズとは違って科学の論文らしい論文なのかと思って読むと、ギョッとさせられます。書き出しはサンマルコ大聖堂の構造の話で、とても生物学の論文とは思えない。これではいつものエッセイと同じではないか…。

サンマルコ大聖堂の壁と天井の間あたりにあるスパンドレルという三角形の構造には、美しい宗教画が描かれており、周辺の装飾と相まって見事な芸術的調和を見せている。しかし、実はこのスパンドレルは、アーチ状に設計された柱の隙間にできてしまった三角の部分で、仕方なく絵で埋めてあるに過ぎない。生物の構造にもこういう場合があるのではないか?つまり、その構造が進化したのは他の構造や適応のための副産物で、現在はたまたま別の目的にも使われている、という場合があるのではないか?と。

また、フランス文学「カンディード」に登場するパングロス博士のセリフ「鼻は眼鏡をかけるためにある、足はズボンをはくためにある」という部分を引き合いに出し、適応万能主義を皮肉っています。その後にやっと生物の話で、二枚貝の表面にある溝など、様々な例をあげていますが、基本的には、根拠の薄い適応的解釈を批判するものとなっています。

どうも、歴史的な意味でも重要な論文らしい。当時は適応万能主義が勢いを持っていて、人の行動も適応進化の結果である生得的な性質で説明できるとの考え(いわゆる社会生物学)が広まりつつあり、この論文はそのような時代背景で書かれたということです。社会生物学論争はそれはそれで激しかったようなので、この論文は番外編、あるいは場外乱闘といったところ?

ところで、不謹慎ですみませんが、例の落書き騒動がサンマルコ大聖堂だったらタイムリーだったのですが、そちらはフィレンツェの大聖堂だったみたいですね。「冷静と情熱のあいだ」に出てきた大聖堂は…と思ったらこちらもフィレンツェ。もし行ったことがあったら、イメージがわくのだろうけど。

Spandrel (biology)(wikipedia)
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2008年07月15日

The gene regulatory logic of transcription factor evolution.

The gene regulatory logic of transcription factor evolution.
Wagner GP, Lynch VJ.
Trends Ecol Evol. 2008 Jul;23(7):377-85.

最近あまり記事を書いていないので、せめてジャーナルクラブで紹介された論文をメモっておきます。

形態の進化はcis制御の進化によって起こることが多そう、という最近はやりの考え方に異議を唱えるミニレビュー。著者はEvo-Devoの理論的な切り口で有名なWagner氏とお弟子さん。

要は、cis制御領域だけでなく、転写因子もモジュール構造を持っているため、もともとの機能を損なわずに新しい機能ドメインを獲得したり失ったりして、新しい制御様式を進化させうる、という主張のようです。まぁ、そりゃそうなんだろうけど、実際にはそういう例は多くはなさそうですよね。そして、たまにはそういうこともある、というのでは、なんか当たり前すぎて、わざわざ言うことでもない気がする…。

(でも引用されている論文は結構おもしろいものがあって、例えばグレートピレニーズの狼爪は、転写因子Alx-4のコード領域の一部失欠によって起こっているらしい、という話は知らなかったのでメモ。)

この論文の内容を拡張したバージョンも、もうすぐEvolutionに出るようです。


RESURRECTING THE ROLE OF TRANSCRIPTION FACTOR CHANGE IN DEVELOPMENTAL EVOLUTION.

Lynch VJ, Wagner GP.
Evolution. 2008 Jun 18. [Epub ahead of print]
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2008年05月27日

Note on the occurrence of a flying crustacean in the Philippine Islands.

Note on the occurrence of a flying crustacean in the Philippine Islands.
Worcester, DC (1914)
Philippine Journal of Science Section D 9: 57.

生物学の文献も、あまり古くなると怪しげな魅力を放ち始めます。先日のエントリで書いたCrampton (1916)に引用されていた、飛行する甲殻類についての論文。一般に節足動物では飛翔するのは昆虫だけであると思われているし、もし本当であればなかなかインパクトがあるはず。当時のNatureにも紹介記事が出ているほどです(1914, Nature 93: 620)。

しかし論文の内容は目撃情報のみ、1ページ。場所はフィリピン、パラワン島の近海、その動物の体色は透明で、体長15から20センチメートル、ザリガニかエビのような形で (It had looked more like a crayfish or shrimp)、1〜2対の脚を前に、それ以外を後ろに向けた態勢で、海面から飛び上がって少なくとも2〜3ロッド (10〜15メートルくらい)飛行した、とのこと。それぞれ別の日に4度目撃しており、証人もいるとのこと。

著者はアメリカで教育を受け、大学で動物学を教えていた人物なので、この目撃情報にはそれなりの信憑性があると思います。続報を探したのですが、この動物が記載されたという情報や現在の生息状況などを見つけることができませんでした。この動物の正体をご存知の方は教えてください!なんかネッシーやビッグフットの怪しい特集番組みたいですが…。
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2008年05月23日

The phylogenetic origin and the nature of the wings of insects according to the paranotal theory.

The phylogenetic origin and the nature of the wings of insects according to the paranotal theory.
Crampton G. (1916)
Journal of the New York Entomological Society 24:1-39 + 2plates.

かなり古いですが、Paranotal theoryの普及に中心的な役割を果たしたであろうレビュー。昆虫の翅の起源について、かなり徹底的に議論しており、このあと、多くのレビューや形態学の教科書でParanotal theoryが標準になったようです。

いまから90年以上前に書かれたということでまず驚きますが、主要な論点はこの時点でおおかた出そろっていると考えて良いようです。昆虫の祖先は水生であったか陸生であったか(Cramptonは陸生であったと考えている)、翅はカゲロウの気管鰓と共通の起源をもつか(Cramptonはもたないと考えている)、というあたりが重要な議論です。かなりparanotal theoryに偏った議論ではありますが、それだけ強くこの説を信じていたということでしょう。

あまりにいろいろな点を検討しすぎて、関係の薄そうな周辺の事象にも言及しています。例えば、翅が脚に由来するという説を考えるために、翅から脚、または脚から翅へのホメオティック変異の例を列挙しています。しかしCramptonは、そのような変異が見られたとしても、それが祖先の状態を示しているとは限らない(つまり翅が脚に置換してしまった変異があったとしても、祖先がそういう形だった証拠にはならない)として、翅が脚に由来するという説を退けています。

また、大きく広がった前胸背板を持つカマキリを例にあげて、それらは現在でも飛翔に役だっているかもしれない、と述べていますが、証拠はなし。ここら辺は考えすぎですね。

しまいには、フィリピン近海で目撃されたという、水面近くを飛行する甲殻類について触れています。これはほとんどUMAの類か…。本当に存在するのならば、昆虫の飛翔と比べてみる価値はあるし、ぜひ一度見てみたいものです。

そのような想像力豊かで危うい議論を含みつつも、昆虫の翅の起源を論じたものとしては傑作のひとつでしょう。Grimaldi&Engel(2005)は彼の昆虫形態学者としての功績をたたえ、また、狭いアパートで膨大なバイアルに囲まれて暮らしていたことに触れ、彼の研究課題への献身ぶりは本物だった、と述べています。
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2008年05月19日

An overview of the paranotal theory on the origin of the insect wings.

An overview of the paranotal theory on the origin of the insect wings.
Quartau, JA (1986)
Publicacos do Institudo de Zoologia "Dr. Augusto Nobre" Faculdade de Ciencias do Porto 194: 1-42

ちょうど年明けくらいから、昆虫の翅の起源問題に興味を持ち、文献を読んでいます。札幌での仕事とも、ウィスコンシンでの仕事とも直接関係ないので、趣味の読書といったところです。

昆虫の翅が、祖先のどの構造に由来するのか、という問題はもう100年以上議論されていますが、いまだに2つの説が併記されるような状態です。

ひとつはparanotal theoryと呼ばれているもので、昆虫の背板の横が張り出して翅になったとするもの。多くの場合、シミのような昆虫を翅が進化する直前の状態と仮定し、植物から飛び降りる際にパラシュートのように使ったのではないか、という憶測が伴います。

もうひとつはgill-exite theoryと呼ばれるもので、多くのバリエーションがありますが、カゲロウの幼虫の鰓を祖先構造と仮定し、さらにそれは脚の基部の節の外葉に由来するのではないか、という説。こちらの説では祖先は水生昆虫であると仮定され、さらには、移行段階では、短い翅を使って水面をヨットのように移動していたのではないか、という憶測が伴う場合があります。

さて、この論文はparanotal theoryの側に立って、冷静に問題点を整理しています。100年以上前から多くの議論がある中で、比較的最近に書かれ、論点も整理されているので、この問題の入門には最適なレビューであります。Grimaldi & Engel (2005)に引用されていたため知ることができました。引用をたどってでなければ、なかなかマイナージャーナルの論文には辿り着けません。翅の起源問題では、極めて重要な論文がマイナージャーナルに載る傾向があって、これも一つの困りどころ、あるいは見方を変えれば楽しみでもあります。

さて、本論文ではまず、節足動物では背板の側面がひさし状に突出するケースが多くみられることを挙げています。昆虫以外では、三葉虫、甲殻類、ある種のダニ、ヤスデなど、昆虫ではイシノミ、シミ、ゴキブリ、カマキリ、シロアリ、半翅類(クビナガカメムシ、グンバイムシ)、鞘翅類(シデムシ、ハムシ)、古網翅類、原直翅類、など。多くの昆虫で前胸背板の側面が張り出しており、さらに多くの点で翅芽との類似性がみられるとのこと。

古生代の環境を考慮した生態的な議論も豊富に盛り込まれていますが、こちらは憶測が多く含まれているので、とりあえずパス。捕食回避、分散などの飛翔の意義についても様々に述べています。

また、翅の起源は本当に一回なのかという問題。特にトンボの翅の構造があまりにも独特なので、他の有翅昆虫とは独立に翅を獲得したのでは?というのはたびたび起こる議論らしいです。目間の系統関係も重要になってきますが、一回進化が主流派の意見ということでとりあえずOK。あとは翅基、翅脈、筋肉系の相同性をどう見て、どう進化したと推定するかという議論。

最後にparanotal theoryへの反論、対案と比べて、総合的に議論しています。やはり、paranotal theoryはSnodgrass (1935)ら大御所が支持してきた説だけあって、多くの間接的証拠に支持された強力な仮説であるという印象です。

構図としては、gill-exite theoryを含むその他の仮説は、定説に立ち向かう新説、珍説、あるいは大発見?という位置づけになると思います。Averof and Cohen (1997)によって甲殻類の外葉と昆虫の翅において共通して発現する転写因子が発見されて以来、gill-exite theoryがだいぶ勢いを持っていますが、私は、いずれ揺り戻しが来るのではないかとの印象を強く持ちました。
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2008年05月18日

Natural Variation in Leaf Morphology Results from Mutation of a Novel KNOX Gene.

Natural Variation in Leaf Morphology Results from Mutation of a Novel KNOX Gene.
Kimura S, Koenig D, Kang J, Yoong FY, Sinha N.
Curr Biol. 2008 May 6;18(9):672-7.

トマトのエヴォデヴォ。ダーウィンがガラパゴスで発見したという、葉のつき方が異なる2種の野生トマト、および栽培種のトマトを用いて、その形態の差異がどの変異によってもたらされたのかを調べています。

Solanum galapagenseは近縁種のSolanum cheesmaniaeと比べ、葉のつき方が複雑でカッコイイ。tertiary leaflets(3次小葉?正しい訳語をご存知の方は教えてください…)と呼ばれる余分な分岐があるからです。また栽培種のトマトにおいても、同じような変異が知られているそうです。

大規模な連鎖解析により、変異の場所を同定。S. cheesmaniaeを祖先型としてみると、S. galapagenseにみられる変異は転写因子PTS/TKD1のプロモーター領域に起きた、たった1塩基の欠失でした。(ちょっと用語の使い方がハエ界とは違う。ハエであればプロモーターの範囲を限定して見るため、転写開始点からこのくらい離れていればcis制御領域と呼んでいるはず。)また、栽培種トマトで知られていた、よく似た形態の変異体Petroselinumにおいても、まったく同じ塩基に変異があることが確認されました。

栽培種トマトの(bipinnata変異体)では、転写因子BIPのタンパク質コード領域に8bpの欠失があり、これが形態変異の原因であるとしています。PTS/TKD1は他の転写因子と拮抗的にBIPに結合することも示し、つまりガラパゴスのカッコイイトマトと栽培種のカッコイイトマトでは、同じ遺伝子か、あるいは同じカスケードにある別の遺伝子に変異が入っていたということです。

大変エレガントな仕事で、トマトでこれだけやるのは大変だっただろうと思います。これは、先週から始まった、c研ポスドク6名による自主論文ゼミの、記念すべき第1回目に取り上げられた論文でした。

本筋とは関係ないですが、植物の遺伝子の命名法にはみんな大いに不満で、(トマトなんとかlike-なんとかボックス遺伝子何番、またの名をなんとか、みたいな調子)、ときに表現型、ときにダジャレに基づいた、ハエの粋な命名法に感謝することしきり、でした。
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2008年05月14日

The locus of evolution: evo devo and the genetics of adaptation.

The locus of evolution: evo devo and the genetics of adaptation.
Hoekstra HE, Coyne JA.
Evolution. 2007 May;61(5):995-1016.

cis制御の進化が形質の進化に重要な役割を果たした、という、近頃はやりのコンセプトを批判するレビュー。流行に逆らうのはなかなか大変なことで、そのエネルギーには敬意を表したいと思います。

しかしながら内容はいわゆる“絡み系”であって、ただの揚げ足取りと取れる部分も少なくない。cisが大事か、transが大事か、という対決の構図はわかりやすいが、論争にはあまり益がないと思われます。なぜなら、どちらも重要なのが既に明らかだから。大進化の過程ではどちらも確実に起こっているし、種分化レベルの時間スケールでも、どちらも頻繁に起こってるでしょう。実際は個別のケースがどちらが原因で(あるいは両方で)起こったのか、ある一定の時間スケールで見たときにどちらが形態なり、生理特性なりの進化に寄与したか、という比重の問題が重要なのです。

たとえばスタンフォードのK研によるトゲウオの腹びれの研究はとても有名ですが、腹びれのある種とない種の比較において、ひれの形成される位置での転写因子の発現が異なっていて、マッピングではその遺伝子の近傍に腹びれの有無を決める遺伝子座があることが示され、遺伝子のアミノ酸配列は両者でまったく同一である。これが何を示しているかは明らかであって、これに対してトランスジェニックを作ってcisが原因であることを証明せよ、というのは酷というものでしょう。(そもそもトゲウオでできるのでしょうか?楽ではないのは確か。しかしこのグループのことだから、もうやっているかも?)

逆にショウジョウバエを使った一連の研究…S研やC研のものが有名…ではトランスジェニックを作って証明しているが、これらもあちこちに穴があるのも確か。しかし一つの系ですべてを完全に示すのは困難であるし、まだ注目されて日が浅いのだから、断片的な証拠から浮かび上がる真実をいち早く見抜くのが科学者というもの。もしろjkjのブログで紹介されていたような、cisとtransの効果を総合的に比較、解析する手法を考えることにこそ将来性があるのでは?

この論文は、研究室ではことあるごとに言及される有名論文。なぜなら、この論文で疑わしい研究例として名指しされ、一番バッサリやられているのは…
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2007年10月14日

Gene duplication and the adaptive evolution of a classic genetic switch.

Gene duplication and the adaptive evolution of a classic genetic switch.
Hittinger CT, Carroll SB.
Nature. 2007 Oct 11;449(7163):677-81.

遺伝子重複の後に起こった機能分化の様子を、実験によって推定した論文。遺伝子の機能が適応進化する際に、コード領域とcis制御領域に何が起こったのかを実例と共に示しています。

モデルとして使っているのは出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのガラクトキナーゼGAL1(ガラクト―ス代謝酵素)と補助誘導因子GAL3(GAL4と結合してGAL経路の転写調節をする)の遺伝子で、これらは祖先のゲノムが倍化した際に重複したパラログです。キラー酵母の一種Kluyveromyces lactisでは単一の遺伝子KlacGAL1が両方の機能を果たしており、これが祖先状態であると考えられます。

これらのcis領域、コード領域を入れ替え、遺伝子の発現量と酵母の適応度への影響を測定しています。その結果、適応度に大きな影響を与えているのはcis制御領域の違いによる発現量(ガラクト―ス存在下での誘導量)の違いにあり、特にGAL4結合サイトの数と間隔が、発現量の変化に大きな影響を与えていることが判明しました。

彼らが描くシナリオは、祖先では、ガラクト―ス存在下で中程度に誘導されるGAL1/3(KlacGAL1に似たものを想定)が、ゲノムの倍化によって重複し、一方はcis制御領域の変化、特にGAL4結合サイトが密に並ぶことによって高い誘導量を進化させGAL1となり、他方はcis領域内の4つのGAL4結合サイトのうち、3つを失うことで低い誘導量を進化させ、さらにコード領域内の酵素活性サイトを失うことで、補助誘導因子GAL3になった、というものです。

遺伝子の進化の様子をシッカリと実験的に確かめ、適応度まで測定して検討しているあたりが、Articles欄に載ったポイントでしょうか。C研は最近cis制御の進化にフォーカスしているけど、初めてこの仕事を知った時には、こういうのもアリなのか、と驚いたものです。しかし最近はDrosophilaに集中しているそうで、酵母の仕事はおそらくこれで最後でしょう。

この論文には少し思い出があって、1年くらい前、知り合いの知り合いだった第1著者のC君にお世話になったことがあり、その後C研を訪問した際にも、忙しいところ、この研究の概略を熱心に語ってくれたのでした(詳細はほとんど理解できなかったけど)。
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2007年08月02日

Morphological evolution through multiple cis-regulatory mutations at a single gene.

昨夏しばらくお世話になっていたDS研の新作がNatureに!これは紹介せねばと思ったら、既にg-hopさんに行かれてました…いつもながら紹介早いですね…。

Morphological evolution through multiple cis-regulatory mutations at a single gene.
McGregor AP, Orgogozo V, Delon I, Zanet J, Srinivasan DG, Payre F, Stern
Nature. 2007 Jul 15; [Epub ahead of print]

ハエのcisの進化による形態進化の話。最近ははやりになっている感すらあるこの手の仕事ですが、形態進化の原因をちゃんと特定のエンハンサーにまで落とすには苦労も多いようで。昨夏の時点で、1stオーサーのAさんはドイツに移ってしまっていて、VさんやDさん、それとボス自らが追加データを出している段階でした。いい雑誌に出て、良かった良かった。DS研は特に設備が優れているわけではなくて、共焦点顕微鏡がある以外はごく普通のクラシックなラボなのですが、アイディア次第ですばらしい論文が書けるということですな。ボスは、誰にも所在地を教えていない静かな湖畔の小屋に籠もって、研究のアイディアを考えるとのこと。
posted by シロハラクイナ at 22:29| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする