生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2009年12月11日

Evolutionary novelties in islands: Drosophila santomea, a new melanogaster sister species from São Tomé.

Evolutionary novelties in islands: Drosophila santomea, a new melanogaster sister species from São Tomé.
D Lachaise, M Harry, M Solignac, F Lemeunier, V Bénassi, and M L Cariou
Proc Biol Sci. 2000 August 7; 267(1452): 1487–1495.

この論文により、モデル生物であるキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterに近い数種で構成するmelanogaster subgroupに、新しいメンバーであるDrosophila santomeaが加わりました。

アフリカ大陸の西側にある島、Sao Tomeの、標高が高い場所のみに生息するsantomeaに最も近縁なのは、yakubaという種で、こちらはアフリカ大陸に広く分布しています。これらは交配可能な程度に近縁ですが、分子系統樹では明瞭に分かれます。最も目につく形態上の違いは、yakubaが他の近縁種とよく似た体色(メスは黄色と黒の縞模様、オスはそれに加えて腹部の後端が黒い)であるのに対し、santomeaは黒色の色素がほとんど見られず、黄色一色に見える腹部を持つ、ということです。

明瞭な表現型を持つ姉妹種が見つかり、かつモデル生物にもごく近縁であるので、表現型の進化を解析するのに最高の系となりえます。実際にこの発見をきっかけに、多くの重要な論文が書かれることになります。
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2009年11月12日

Is genetic evolution predictable?

Is genetic evolution predictable?
Stern DL, Orgogozo V.
Science. 2009 Feb 6;323(5915):746-51.

またプリンストンからのレヴュー。昨年Evolutionに出たものと似ていますが、少し別の例も出して、形質の進化を引き起こした具体的な遺伝的変異をどのように予測するか、について述べています。

こういうメタ解析的なことは最近の彼らの得意とするところで、よく事例をこれだけ集めるなと感心するばかりですが、例えば形態の進化において、種間の違いはcisの変化による場合が多く、種内や家畜化、栽培化の場合はタンパク質のコード領域にnull mutationが入っている場合が多い、というのはなるほどと思いました。

null mutationによってタンパク機能が失われても、ローカルな集団では環境次第で特に問題なく生存してしまうけれど、そのタンパク機能が再び戻ってくることはないわけで、環境適応への柔軟性を失っていると言えるでしょう。このようなローカルな進化には、ドリフトの効果が強く出るわけで、集団遺伝学の視点が欠かせない、と。

近年、彼らは集団遺伝学とEvo-Devoを融合させようという試みをしていると聞いています。関連する書籍も準備している模様です(polyphenismさんによる紹介にリンク)。なぜ集団遺伝学なのかよくわからなかったのですが、このレヴューを読んで、彼らの考えが少しだけわかりました。(ちなみに、我々のボスは集団遺伝学をあまり評価していません。派手好きだからでしょうか。このあたりが、緻密なDLSさんとの大きな違いだと思います。)
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2009年11月10日

Deep homology and the origins of evolutionary novelty.

Deep homology and the origins of evolutionary novelty.
Shubin N, Tabin C, Carroll S.
Nature. 2009 Feb 12;457(7231):818-23.

仲良し3人組で、「またなんかやろうぜ」という企画で書いたレビューだそうです。同じ3人で97年にもレビューがあるのですが、それを踏まえて、ダーウィンイヤーの企画として現代版に仕立てたとのことです。筆頭のShubin氏は、ヒトのなかの魚、魚のなかのヒトの著者でもあり、エボデボ界のリーダーのひとりと言えるでしょう。Tabin氏も、魚類やダーウィンフィンチなど幅広い材料を用いてすばらしい仕事を続けている方です。

このレビューの主眼は、Deep homologyという概念を、最近のEvo-Devoの成果を取り入れた上で再考するというものです。概念自体は、97年のレビューで提唱していたものですが、さらに事例を積み上げようということです。

例として挙げられているのは、後生動物の眼、脊椎動物の鰭と脚、甲虫の角、です。個別にどのような議論がされているのかは、本文をご覧下さい。いずれも、古典的な定義では相同と呼べない構造について、遺伝子発現の類似性を示します。さらにはその遺伝子発現は祖先を共有するらしいこと、そして、構造からは相同性を追跡できないほどに時間が経過した器官どうしに、メカニズムレベルでの「相同性らしきもの」を見出し、このような状況を指し示す用語としての”Deep Homology”を再び提唱しています。

ちなみに、97年の論文はこちら。
Fossils, genes and the evolution of animal limbs.
Shubin N, Tabin C, Carroll S.
Nature. 1997 Aug 14;388(6643):639-48.
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2009年11月07日

Real-time DNA sequencing from single polymerase molecules.

Real-time DNA sequencing from single polymerase molecules.
John Eid et al.
Science. 2009 Jan 2;323(5910):133-8. Epub 2008 Nov 20.

こちらも第3世代シーケンサーについてですが、今年の1月に出ていた論文。巷でも期待されているらしいPacific Biosciences社の技術で、ポリメレースを基盤に固定し、蛍光標識したdNTPの取り込みをリアルタイムで見る方法。

製品化にどれだけ近いかはわかりませんが、潜在的には、ひとつのリードが1000 base以上で、読み取り自体は従来の次世代シーケンサーより4桁速いそうです。(いわゆる次世代シーケンサーは、反応と洗いを繰り替えすので、読み取りは超遅く、読み取り部分を大量に並べることで遅さを補っている。)あとはこの方法でも読み取り部分をたくさん並べれば、大量のアウトプットが可能になりそうです。

私が日本に帰る頃には、若手Bで払える金額で、自分の好みの昆虫のゲノムを受託で読んでもらえるようになりそうです。本気で期待しています。ショウジョウバエ120種ゲノムプロジェクトとか、始まりそうな予感も…。
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2009年11月06日

Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays

Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarray.
Radoje Drmanac et al.
Published Online November 5, 2009
Science DOI: 10.1126/science.1181498

報道で知りました。Science Expressに論文が出ているようです。第3世代シーケンサーの宣伝を兼ねた論文のようですが、コストが低いのがポイントらしく、ヒトゲノムが$4400で読めるようになるというふれ込みです。

DNA断片を増幅してssDNAがボール状にまとまったもの(DNA nanoballs)を作り、これを基盤に固着させたうえで、ラーゲーションベースの方法で、ボールひとつにつき62-70 baseを読めるとのことです。

Complete Genomicsというベンチャー企業からの論文ですので、おそらく近いうちに、パーソナルゲノムのシークエンス、解析サービスでも始めるのでしょう。

ヒト以外の生物でも受けてくれるかはわかりませんが、方法からして、まったくゲノム情報がない生物ではアセンブリが無理かな?もう少し一つのリードが長い方法で、1〜2× くらいで読んでおいて、あとはこの方法で量を稼ぐ、というのがいけそうですがどうでしょうか。
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2009年10月29日

Intraspecific polymorphism to interspecific divergence: genetics of pigmentation in Drosophila

Intraspecific polymorphism to interspecific divergence: genetics of pigmentation in Drosophila
Patricia J. Wittkopp, Emma E. Stewart, Lisa L. Arnold, Adam H. Neidert, Belinda K. Haerum, Elizabeth M. Thompson, Saleh Akhras, Gabriel Smith-Winberry, Laura Shefner
Science 23 October 2009:
Vol. 326. no. 5952, pp. 540 - 544

筆頭著者はC研の先輩で、現在はミシガン大学で独立されている方です。北米のショウジョウバエ、Drosophila americananovamexicanaは、姉妹種でありながら体色が大きく異なっていることが知られていました。americanaが黒、novamexicanaが黄色です。先行研究で、いくつかの遺伝子座がこの違いに関わっていることが推定されていましたが、具体的な遺伝子座にまでは落とせていませんでした。

今回、著者たちはintrogression(この場合の適切な訳語は浸透性交雑でOKでしょうか)によって、体色に違いをもたらす遺伝子座をマッピングし、それがebonytanという、キイロショウジョウバエでもよく知られた体色関連遺伝子に強く連鎖していることを示しています(つまりこれらの遺伝子そのものが正体である可能性が高い)。

ebony近傍は逆位があるため、さらに詳細なマッピングは困難なので、ここでtanに解析を絞り、tanの第1イントロン近傍にまで絞り込みました。piggyBacを用いてamericanatan遺伝子座をnovamexicanaへ導入すると、実際に体色が濃くなるとのこと。

実はamericanaには集団中に体色の多型があり西に行くに従って体色が薄くなる傾向があります。そこで由来の異なった複数の系統を調べてみると、novamexicanaのalleleに酷似したものが見つかりました。つまり、novamexicanaの薄い体色は、americanaの集団中に元々存在していた、体色を薄くするalleleを創始者効果で拾い上げたものか、あるいはnovamexicanaのalleleが遺伝子浸透によってamericanaに広まったか、いずれにしろ、種内多型と種間多型をもたらしているalleleが同一のものだった、というのがこの論文のうりのようです。

テクニカルな面でも、pyrosequenceを使ったり、melanogasterではない種で遺伝子導入をしたり、結構攻めているという印象です。
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2009年10月20日

Novel TCF-binding sites specify transcriptional repression by Wnt signalling.

Novel TCF-binding sites specify transcriptional repression by Wnt signalling.
Blauwkamp TA, Chang MV, Cadigan KM.
EMBO J. 2008 May 21;27(10):1436-46. Epub 2008 Apr 17.

昨日の続きです。TCFは別のドメインを介して全く別の配列(AGAWAW)にも結合して、Winglessシグナリング存在下では転写抑制に働くことも報告されているようです。古典的なTCFの働きとは全く逆ですが、このシステムはWinglessシグナリングで活性化する遺伝子と抑制する遺伝子を最も合理的に制御する方法には違いないでしょう。

このように、単一の転写因子が、結合する配列によって転写促進をしたり抑制したりという例は、私は知らないのですが、何か他にもあるのでしょうか?

TCFは相当にファンキーな転写因子のようですが、あるいは、よく調べられているから色々な機能がわかってきただけで、他の多くの転写因子も、多かれ少なかれこのような複雑な機能を持っているのかもしれません。cis領域の配列から、上流の転写因子をたどれるようになるのが夢ですが、いつかそういう時が来るのでしょうか。ひたすら事例を積み上げるしか無いのか、なにか革新的なアルゴリズムで解けるようになるのか。
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2009年10月19日

Activation of wingless targets requires bipartite recognition of DNA by TCF

Activation of wingless targets requires bipartite recognition of DNA by TCF
Chang MV, Chang JL, Gangopadhyay A, Shearer A, Cadigan KM.
Curr Biol. 2008 Dec 9;18(23):1877-81.

Winglessのシグナリングの転写因子であるTCFがDNAに結合する際に、本命の結合サイトの他に、すぐそばのHelperと呼ばれるサイトも必要としていることを示した論文。

まったくノーマークだった論文ですが、実は自分にとって重要な内容を含んでいます。Winglessのターゲット遺伝子の一つであるnaked cuticle (nkd)のcis制御領域のうち、IntEと呼ばれるエンハンサーに、10bpずつ変異を入れたバージョンを沢山作ってレポーターの発現を比較し、従来から知られているTCF結合モチーフ(SSTTTGW)に加えて、新たなモチーフ(GCCGCCA)を発見、Helperと名付けました。

人工的に構成したコンストラクトをルシフェラーゼアッセイで試してみると、Helperのみでは転写活性が低いけれど、本命のTCF結合モチーフと組み合わせると非常に高い活性を示すことがわかりました。

他のWinglessターゲット遺伝子も調べてみると、Notum, sloppy pairedでもHelperモチーフがあり、さらにUltrabithoraxやeven skippedでもモチーフによく似たサイトがあるとのこと。さらにこれまでWinglessシグナリングに応答するエレメントが知られていなかった遺伝子についても調べ、ladybird lateとpxbという遺伝子についても、cis領域中にTCF結合モチーフとHelperが両方存在し、TCF結合モチーフかHelperのいずれかをつぶすと転写活性が大幅に低下することを示しています。

そして、TCF結合サイトへの結合はHMGドメインが、Helperへの結合はCクランプと呼ばれる領域が担っているとのこと。

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2009年10月09日

Some fly sensory organs are gliogenic and require glide/gcm in a precursor that divides symmetrically and produces glial cells.

Some fly sensory organs are gliogenic and require glide/gcm in a precursor that divides symmetrically and produces glial cells.
Development. 2000 Sep;127(17):3735-43.
Van De Bor V, Walther R, Giangrande A.

怪しい論文を紹介した効果か、アクセスが増えているので、調子に乗って連続投稿です。こんどはまともな論文です。

研究は思ってもみない方向に行くもので、最近私は神経の勉強をするはめになっています。ハエの翅には、鐘状感覚子(campaniform sensilla)という小さいドーム型の器官があり、飛行中の翅の振動をモニターしていると言われています。外見から見ると、どの鐘状感覚子も似ているのですが、その発生過程をみると、異なった二つの発生様式(neurogenic, gliogenic)があるとのこと。

この論文では、鐘状感覚子の発生過程を丁寧に見て、感覚器前駆細胞から、ニューロン、グリア、その他の細胞が分化する様子を記述しています。

私にとって重要だったのは、L3と呼ばれる翅脈に一列に並んでいる鐘状感覚子の由来が、glionenicとneurogenic、交互に並んでいること、なかでもneurogenicな感覚子は、2つのneuronからなっていることです。これが、私のやっている翅に水玉模様のあるハエでも同様か、模様を形成するシグナルがどの細胞から出ているか、に興味を持っています。
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2009年10月08日

Caterpillars evolved from onychophorans by hybridogenesis

Caterpillars evolved from onychophorans by hybridogenesis
Williamson DI.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Aug 28. [Epub ahead of print]

タイトルを見ただけで絶句してしまいました。チョウの幼虫は、昆虫の成虫とは起源が別で、カギムシなどの別の動物との交雑によって取り込まれた形質だ、という仮説。もう仮説と呼ぶのが不適切なぐらいの超珍説です。エイプリルフール特集かと思ったけどそうではないし、まじめに書いたのだとすればかなりエキセントリックな著者なのでしょう。

内容もずさんで、笑いつつも悲しくなってくるほどの代物です。どうやってPNASに載ったかというと、いわゆる"Communicated by ~"という枠で、要はアカデミーの会員のコネで通したとのこと(なお、この枠は、もうすぐ無くなる予定。)そしてそのアカデミー会員は、…やっぱりあの方でした。エキセントリックな方たち同士、仲が良いようです。

この論文をどのように読めば良いかは、以下の記事によくまとめられていると思います。PNASに掲載されるまでに、7つのジャーナルにリジェクトされたとか。
“Bigwig” ushered “nonsense” paper into top journal, say scientists
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2009年07月06日

Genome-wide analysis of Notch signalling in Drosophila by transgenic RNAi.

Genome-wide analysis of Notch signalling in Drosophila by transgenic RNAi.
Mummery-Widmer JL, Yamazaki M, Stoeger T, Novatchkova M, Bhalerao S, Chen D, Dietzl G, Dickson BJ, Knoblich JA.
Nature. 2009 Apr 23;458(7241):987-92. Epub 2009 Apr 12.

Notchシグナリングに関する因子のスクリーニングを、ゲノムワイドなRNAi系統コレクションも用いて行った…という論文で、すでに丹羽さんのところでも紹介されていますし、Notchシグナリングの役者はまだまだ沢山あるってことと、こりゃやる気になれば何にでも使える方法ですよ〜という主要なメッセージはOKだと思います。

私が気になっているのは、スクリーニングの「外道」の部分で、ノックダウンにより体色に異常を起こす遺伝子が350くらい見つかっているということです。Supplementary Informationに少し詳細が載っているので、ちょっといくつかの遺伝子に当たってみましたが、これまで「機能未知」とされてきたものが多いようです。pigmentationの研究者にとって、宝の山かも。
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2009年03月23日

Distinct developmental mechanisms underlie the evolutionary diversification of Drosophila sex combs.

キイロショウジョウバエとその近縁グループにおいて、オスの特徴であるsex combの形態の特徴と、その形成メカニズムが、複数回独立に進化しているのでは?という可能性を示した論文。

Distinct developmental mechanisms underlie the evolutionary diversification of Drosophila sex combs.
Tanaka K, Barmina O, Kopp A.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Mar 2. [Epub ahead of print]

sex comb (性櫛) は、キイロショウジョウバエに近いグループのオスのみにみられる特徴で、前脚のフ節にくっついているように見える、黒い櫛状の器官です。種間でバリエーションがあり、縦長のもの(longitudinal)と横向きにちょこっとついているもの(transverse)があります。その発生過程を見てみると、縦長のもののなかに、いきなり縦長に配列した前駆体として形成されるタイプ(Pre-specified)と、横向きに作られた前駆細胞群が、表皮もろとも90℃回転して縦長に配列するタイプ(Rotating)がみとめられました。

さらにこれらは、系統樹上にのせてみると、ばらばらに分布していて、ベイズ法によって (oriental + montiumの) 祖先の形質を推定すると、transverse 45%、rotating 15%、pre-specified 40%と、どの可能性もありえるような結果です。つまりいずれのシナリオが正しいとしても、これらの発生形式の間でのスイッチが複数回独立に起きているであろうという結論です。

ただ、rotatingとtransverseの中間というか、ほどほどの長さのsex combが斜めについている種もいるようなので (bipectinataとかsuzukiiとか)、これらは連続的に捉えることが可能で、pre-specifiedのみが、とても長いsex combを作る場合に起きた特殊化なのかなと思いました。そう考えると、ficusphilaとmontium両グループでこの特殊化が起きて、のこりは長くなったり短くなったり、長いと脚の横幅に収まらなくなるのでちょっと斜め方向に回転したり、というイメージです。
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2009年03月22日

Pigment pattern in jaguar/obelix zebrafish is caused by a Kir7.1 mutation: implications for the regulation of melanosome movement.

ゼブラフィッシュの模様の変異体の解析。動物の模様の理解にとても重要な仕事だと思いますが、原因遺伝子は少し意外なもの。

Pigment pattern in jaguar/obelix zebrafish is caused by a Kir7.1 mutation: implications for the regulation of melanosome movement.
Iwashita M, Watanabe M, Ishii M, Chen T, Johnson SL, Kurachi Y, Okada N, Kondo S.
PLoS Genet. 2006 Nov 24;2(11):e197.

ゼブラフィッシュには色々な模様の変異体があるらしく、jagur/obelixというのは縞模様が幅広くなったり、とぎれとぎれになってしまう変異です。この論文は、その原因遺伝子を特定した、という仕事で、大変興味深く読ませてもらいました。Kir7.1というカリウムチャネルの遺伝子であったとのこと。

ちゃんとレスキューの実験も効いているし、電気生理学的な方法で、変異体はチャネルがおかしくなっていることも示している。じゃあこのタンパクに変異があるとどうして模様が乱れるでしょうか?色素細胞間の連絡がうまく取れなくなるからではないかと考察されていますが、たぶんそうなのでしょう。だとすると、反応拡散モデルとの関係はどうなってしまうのでしょうか。遺伝子のmolecular functionがわかっても、表現型が理解できるとは限らない、ということを改めて考えさせられました。しかしなんといっても、この仕事が、ゼブラの模様形成を理解するために重要な一歩であるのは間違いないでしょう。

同様に、以下の論文ではleopardという、サケ科魚類を思わせるようなスポットパターンをしめす変異体の解析をし、原因遺伝子はconnexin41.8という、細胞間のギャップ結合に関連するものであることを明らかにしています。やっぱり色素細胞の移動と配置がキーポイントになっているような気がします。

Danio is caused by mutation in the zebrafish connexin41.8 gene.
Watanabe M, Iwashita M, Ishii M, Kurachi Y, Kawakami A, Kondo S, Okada N.
EMBO Rep. 2006 Sep;7(9):893-7. Epub 2006 Jul 14.
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2009年03月20日

Theoretical analysis of mechanisms that generate the pigmentation pattern of animals.

反応拡散モデルによって動物の模様をどこまで説明できるか?について論じたレビュー。面白いです。

Theoretical analysis of mechanisms that generate the pigmentation pattern of animals.
Kondo S, Shirota H.
Semin Cell Dev Biol. 2009 Feb;20(1):82-9. Epub 2008 Oct 19.

脊椎動物の模様は、やはりだいぶ昆虫の模様と違うようで、体全体を覆うようなパターンがよく見られる気がします。例えば、シマウマとか、ヒョウのような。非常に大きな範囲にわたる模様をどのように制御しているのか、大変興味をそそられます。ショウジョウバエの場合だと、転写因子か何かのプレパターンがあって、その大まかな下書きにそって表皮の着色が起こるのですが、脊椎動物はもうワンステップ、複雑になっているような印象です。

このレビューでは、反応拡散モデル(チューリングモデルとも言われる、発生学の教科書にも良く出てくるアレです)によって、どこまで動物の模様が説明できるのか、そして、現実のメカニズムとどのように対応するのか、ということについて概説されています。数式をほとんど使わず、言葉によって説明してくれているので、私のような数学が不得意なものでもそれなりに理解できます。基本となる水玉模様、入り組んだ縞模様などに加えて、モデルにちょっとした条件を付加することで、ヒョウ柄や渦巻き状の模様なども描くことができるそうです。ジンベイザメの模様もできるのにはびっくり。

では反応拡散モデルが現実にはどのような分子に対応するのか?教科書などでは、もっとも考えやすい例として、拡散速度の異なる二つのモルフォゲン分子を想定していると思いますが、実際にはどうなのか?近年、ゼブラフィッシュの変異体の解析により、そのあたりが一気に解明されると期待されていましたが…。続きはまた、変異体解析の論文紹介として書きたいと思います。私は、数年前に進化学会でこの話のさわりを聞いて以来、興味を持っていたのですが、いつのまにか重要な論文がいくつも出ていたのでした。
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2009年02月24日

Vector and parameters for targeted transgenic RNA interference in Drosophila melanogaster.

キイロショウジョウバエ用の、RNAiベクターの開発と条件検討。この新しいベクターのポイントは、integraseに対応していること、可視マーカーとしてwhiteの代わりにvermilionを使っていること、ヘアピンの間にイントロンを挟んでいること、などです。

Vector and parameters for targeted transgenic RNA interference in Drosophila melanogaster.
Ni JQ, Markstein M, Binari R, Pfeiffer B, Liu LP, Villalta C, Booker M, Perkins L, Perrimon N.
Nat Methods. 2008 Jan;5(1):49-51.

昨日の論文とは別のグループによる、RNAiベクターの論文。p-elementによる導入だと、導入された場所による効果が出てしまって、効果が思ったより強かったり弱かったり、他の系統との統一的な比較が困難になったりするので、integrase系を用いてあらかじめ指定したドッキングサイトに入れられる方が好ましい、ということのようです。

whiteの代わりにvermilionを使っているのは、whiteの発現量(または遺伝子の存在量)は行動に大きな影響を与えてしまうので行動解析に向かない、という欠点を解消するためだそうです。表現型が微妙だから、スクリーニングはしづらいけど…。

私にとって(たぶん)重要なのは、ヘアピンの間にイントロンがあること。昨日の論文では、cDNAの配列を直接に逆向きに接続していて、間には制限部位(6bpのEcoRIサイト)しかありませんでした。ウワサですが、これだとクローニングの際に、組み替えでこの部位を消失しやすいのか、とにかくクローニングが難しくなるのだそうです。なぜイントロンを間に入れることで、それが解消するのかわかりませんが…(ここの根拠については調べている最中)。また、イントロンがあることで、RNAが細胞質に移行しやすくなり、効率が上がるのだとか(ここの根拠も調べています)。

あとは、まめちしきとしては、Dicer-2の過剰発現よりも、単に(エンハンサー+GAL4)のコピー数を増やした方が、効率があがるということ。それから、UASの個数を調節しても、大して効率は変わらないということ。これは、系のうちのどこの部分が律速段階になっているかにもよるんでしょうけどね。

とにかく今このベクターは手元にあるので(誰かが使おうと思って取り寄せてあったが、そのまま…というパターン)、そして昨日の論文のベクターは取り寄せに少し日数がかかりそうなので、とりあえずこちらで挑戦してみようかな。私の材料はmelanogasterではないので、いずれにしろベクターをだいぶ改造しなければいけませんが。
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2009年02月22日

A genome-wide transgenic RNAi library for conditional gene inactivation in Drosophila.

ショウジョウバエの既知のタンパク質コード遺伝子のうち88%をカバーするRNAi系統、合計22270系統を作出、その全体の傾向と有用性を述べた論文。

A genome-wide transgenic RNAi library for conditional gene inactivation in Drosophila.
Dietzl G, Chen D, Schnorrer F, Su KC, Barinova Y, Fellner M, Gasser B, Kinsey K, Oppel S, Scheiblauer S, Couto A, Marra V, Keleman K, Dickson BJ.
Nature. 2007 Jul 12;448(7150):151-6

ついに自分でもRNAiをやるはめに…。私は変な種類のハエを使っているので、キイロショウジョウバエのシステムをそのままは使えないのですが、既存のシステムから主要な部品を抜き出して使えば、わりとすぐにできそうです。それで、この論文を読んで、コンストラクトの作り方を勉強中。

キイロショウジョウバエでは遺伝子導入が容易であるし、GAL4/UASシステムもあるので、このような大規模なライブラリーを作って維持しておけば、いつでも望みのタイミング・場所で遺伝子ノックダウンができるのですね。Dicer-2の強制発現を組み合わせれば、さらにノックダウン効果を上げることも可能。重要な遺伝子は、ノックダウンすると致死になってしまうことが多いようなので、むしろ効果を弱める工夫も必要かも知れません。この論文では特に書かれていないようですが、これらの系統ではUASを10個も持たせてあるようなので、この個数を調節すれば、効果を調節することもできそうです。

しかもこれらの系統は、ウィーンのショウジョウバエRNAiセンター (VDRC: The Vienna Drosophila RNAi Center) で配布しているので、取り寄せてすぐ使うことが可能です。なんとまぁ便利な世の中。うちのラボでも、思いつきでお取り寄せされたものの、いまだ未使用の系統がそこらで飼われています。。
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2009年02月21日

Gene regulatory networks and the evolution of animal body plans.

遺伝子の制御ネットワークの中に "カーネル (Kernel)" などの構造を見いだ
し、その構造が進化に果たした役割についての仮説を展開したレビュー。

Gene regulatory networks and the evolution of animal
body plans.

Davidson EH, Erwin DH.
Science. 2006 Feb 10;311(5762):796-800.

恒例のジャーナルクラブ。今回も荒れました。私なんぞはScienceに載っている
レビューということもあって、それだけで御利益があるような気がしてしまうの
ですが、血気盛んなポスドクの皆さんは容赦なかったです。

このレビューは、どちらかというとPerspectiveとかHypothesisとしたほうが良
いような内容です。遺伝子の制御ネットワークの中に、コアとなる部分を見つけ
て、それを"カーネル"と名付けています。さらにそこに付け足されるユニットと
して、"プラグイン"、"I/Oスイッチ"というものを仮定しています。

カーネルは「制御遺伝子間のネットワークの一部で」「胚発生中に特定の体の領
域になる部分のパターニングに関与し」「他の用途には使われず(個々の遺伝子
の使い回しは良いが、ネットワークとしての使い回しはダメということ)」「循
環的な制御を持ち」「構成いずれか一つの遺伝子の発現が乱されても、発生に破
滅的な悪影響がでるような」ネットワークのことを指すそうです。

カーネルの例として、棘皮動物における内胚葉の分化に関わるネットワークと、
ハエと脊椎動物に共通する心臓の分化に関するネットワークをあげています。

さらに踏み込んで、このカーネルの構造が、おおむね動物の「門」レベルのデザ
インに対応していると主張。このあたりは明らかに言い過ぎで、のちのTechnical Commentで批判を受けている部分でもあります。

コメントはこちら。
Comment on "Gene regulatory networks and the evolution of animal body plans".
Coyne JA.
Science. 2006 Aug 11;313(5788):761; author reply 761

私としては、Davidsonらのだいたいのアイディアには同意するのですが、いかんせん背景となるデータがまだ曖昧で、本当に明瞭な”カーネル”構造が存在するのか、それともネットワーク構造は緩やかに厳密さを失いながら下流へ周辺部へ広がっているのか、判断しようがありません。現実は後者により近いのではと推測するのですが、どうでしょうか。また、「門」レベルのボディプランに対応うんぬんというのは、飛躍のしすぎだと思います。他のポスドクたちの論評はもっと過激で、こんなものは戯れ言だ、と切り捨てていましたが…。

また、ここには、生物の系統のなかに量的でない質的な区切りのようなものがあるのか、という問題も存在します。例えばカンブリア爆発などに対応させて、「門」というものを特別な存在と見るのか、単に歴史が古いために違いが蓄積したものに過ぎないと見るのか、これらは古くからある二つの見解だと思います。Technical CommentでのCoyneは、後者の見解ですね。このレビューの著者らが主張するように、質的な区切りが、ボディプランの制御をしているネットワーク構造の性質に由来しているのだとすれば、なにか大きなことを説明できた気になって誇らしいのかも知れませんが、現実はもっとややこしいでしょうし、相当にデータを積み上げないと、このアイディアの検証すら難しいでしょう。

2009/2/20 午後5時ごろ(セントラルタイム)、タイトルからGeneのGが抜けていたので足しました。また、テクニカルコメントへのリンクも追加。投稿日時が1日ずれてしまったので21日に修正。日本時間では21日なので。
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2009年02月15日

Natural variation in the splice site strength of a clock gene and species-specific thermal adaptation.


Natural variation in the splice site strength of a clock gene and species-specific thermal adaptation.

Low KH, Lim C, Ko HW, Edery I.
Neuron. 2008 Dec 26;60(6):1054-67.

キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は、夏の暑い日には”Siesta" (お昼寝)をします。季節による温度変化が少ない熱帯に住むDrosophila yakubaなどの近縁種にはこの習性が無く、昼寝は、温帯に進出したmelanogasterとsimulansに特有の適応だと考えられているそうです。これは、温度の情報が何らかのかたちで体内時計に作用していると考えられているのですが、この論文では、periodのイントロンが温度依存的にスプライスされることが、その入力の実体だと主張しています。

本当にそのとおりであればすごい論文だと思って読み始めたのですが、しかし論文の後半に行くにしたがってデータが怪しくなっているような気がします。特にFig 5.のレスキューの実験はわけがわからないし…。全くレスキューできていないように見える…。per変異体にmelanogasterのイントロンを付けたper配列を入れようが、yakubaのイントロンを付けたものを入れようが、どっちもしっかり昼寝しているようなのだが…。
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2009年02月06日

Evolutionary analysis of the well characterized endo16 promoter reveals substantial variation within functional sites.

Evolutionary analysis of the well characterized endo16 promoter reveals substantial variation within functional sites.
Balhoff JP, Wray GA.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jun 14;102(24):8591-6.

アメリカムラサキウニの種内、および近縁種間で、 endo16という遺伝子のcis領域がどのような変異を持つか調べた論文。驚くべきは、転写開始点に近い部分を除けば、cis領域は非常に変異に富み、タンパク質の結合が知られている部分ですら、他の"無意味な"配列と比べても変異の量に変わりがないということ。

これは、cis領域にまったくと言っていいほどに拘束がかかっていないことを意味するのか、はたまた、ネガコンとして使っている"無意味"な配列が、実はしっかり拘束を受けているのか。cis領域内のタンパク質結合配列は、"群れ"をなしている場合も多いので、そのうちのひとつやふたつ無くなっても構わない、そしてそうこうしているうちに偶然に新しい結合配列が生じることで、常にターンオーバーしているのだ、という考え方もできますが、それにしてもまったく拘束されていないということは無いと思うし。単に検出力が低すぎて、選択の痕跡がノイズに埋もれているのか。いまひとつ釈然としない読後感でした。
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2009年02月05日

Two or four bristles: functional evolution of an enhancer of scute in Drosophilidae.

Two or four bristles: functional evolution of an enhancer of scute in Drosophilidae.
Marcellini S, Simpson P.
PLoS Biol. 2006 Nov;4(12):e386.

最近になって存在に気づいた論文。私たちとやっていることが近いので、どうしていままで知らずに来たのか不思議なくらいです。

ほどんどのショウジョウバエは、背中に2対の剛毛をもちますが、Drosophila quadrilineata (ダイダイショウジョウバエ)というハエは、例外的に4対の剛毛を持ちます。そしてこれはachaete-scute complexという遺伝子群のcis制御領域に起きた進化によって説明できる、という結論です。quadrilineataのcis領域に、melanogasterのscuteをくっつけて、内在のcis領域を欠失したmelanogasterに導入してやると、ちゃんと4対の剛毛ができるのです。

胸部のトランス・ランドスケープについても勉強になったし、面白い論文なのは間違いないです。しかし、やはり注目しているcis領域に結合する因子を特定できなかったのが弱いところか。melanogasterを含む多くのショウジョウバエにおいて、胸部の前のほうで剛毛ができないように抑制している因子、というものがまだ特定されていない、ということが響いているようです。これでその因子まで特定でき、近縁種も含めてcis制御の進化を辿れていれば、間違いなくNature行きだったんでしょうけど。


関係ないけれど、quadrilineataというのはショウジョウバエの中では美しい種類の一つで、オレンジ色の胸部に、黒い縦縞が入っています。(元M本研の方たちは、Gさんが趣味で飼っていたハエといえばわかってもらえるでしょうか。覚えてないですか?)ショウジョウバエには、他にも明瞭な縦縞を持つものが何種もいるので、その模様の役割や、模様形成のメカニズムも含めた進化の背景にはすごく興味があります。
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