生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2006年06月10日

仮往生伝試文

仮往生伝試文(新装版)
古井 由吉
単行本: 409ページ
出版社: 河出書房新社; 新装新版版 (2004/12/11)
ASIN: 4309016871


地球の歩き方と英会話本を除けば、アメリカに持ってきた唯一の日本語の本。辛口で知られる評論家・福田和也のベストセラー「作家の値うち」で激賞されていて、取り上げられている数百点の小説のうち最高得点である96点をつけられていたので、ずっと気になっていた小説です。かなり分厚く、しかしエッセイ的な構成なので読みやすそうで、長期旅行にぴったりと思い持参した次第です。長らく絶版だったようですが、「作家の値打ち」で話題になったこともあり、復刊されたようです。

帯には、「虚と実、死と生、夢と現の境界を果てしなく越境し、文学の無限の可能性を尽した畢生の傑作。読売文学賞受賞作。」とあります。

さて、内容ですが、著者の日常の日記から書き出しながら、明月記などの古典を引き、死への思いを綴った随想に発展していきます。これを日付ごとに繰り返す形をとります。平安末期の色々な境遇の僧や侍がどのように往生を遂げたか、彼らの死生観を交えて語り、また著者自身の体調の悪さや旅の情景などと、話は行きつ戻りつしながら進行していきます。死を話の中心に置きながらもタッチは軽く、滑稽な話や人情話もあり、全体にほのぼのとした印象です。語り口が心地よく、これをずっと読み続けていきたい、と思わせます。「楽天記」なども同じ系譜の作品らしいので、ぜひ読みたいですね。おすすめです。装丁もすばらしい。

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2006年05月13日

変わらなきゃの話―時代の風を楽しんで生きよう

変わらなきゃの話―時代の風を楽しんで生きよう ワニ文庫
森 毅 (著)
文庫: 236 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: ベストセラーズ ; ISBN: 4584305110 ; (1996/10)



森先生のエッセイ。相変わらずのやる気のないタッチ、そしてどのエッセイ集も書いてあることはだいたいおんなじ。でも読みたいと思ってしまうそんな本です。

「アホだからこそ若者は難問を解ける」「ボクは社会の寄生虫なんです」「気づいたら死んでいたでこの世とオサラバしたい」などとちょっとシニカルで小気味よいセリフが多くて、とても癒されます。

原題は「あったか〜い話」だったそうで、文庫化にあたりイチローブームに便乗して「変わらなきゃの話」にしたんですね…。イチローをパロディにしたカバーデザインもシュールですばらしい!
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2006年04月30日

すきやばし次郎 旬を握る

すきやばし次郎 旬を握る 文春文庫
里見 真三 (著)
文藝春秋 ; ISBN: 4167656167


最近、脱線が多いですが…。週末だしご勘弁ください。今日は鮨の話を。

「本書は、当代一の鮨職人、小野次郎が1年間に供する握り鮨、酒肴、小鉢などの全点を洩れなく収めた、究極の”江戸前握り鮨技術教本”である。」

ってことで、本当の江戸前握りとは何か、次郎さんが自身の人生をかけて語り尽くした本です。昔、新宿の紀伊国屋書店で見かけて、欲しいな〜と思っていた本だったのですが、大判で高かったので買いませんでした。先日、文庫化されているのを発見し、迷わず購入。

このレベルの仕事は、もはや儲けがどうとかではなく、職人の意地でやっているのだと思います。生意気な客、若造は鮨食わずに帰れ、という態度も、究極の鮨職人という感じがしてGood。

「盛夏に生まれた子イカは、一雨ごとに、どんどん大きくなります。」
など、何だかかっこいい名ゼリフも多く、読ませます。
posted by シロハラクイナ at 14:31| ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍(文芸・人文社会) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月05日

臨死体験

臨死体験〈上・下〉立花 隆(著)
文春文庫 ISBN 4-16-733009-1


立花隆は政治から科学まで幅広いノンフィクションを得意としますが、どれか一冊といえばやはりこの「臨死体験」ではないでしょうか。90年代始めごろに文藝春秋に連載していた記事をまとめたものです。私はブックオフでハードカバー版を買って読んだのですが、文庫も出ているようですね。

臨死体験というのは、死の縁をさまよった人が共通して口にする、三途の川だのトンネル体験だのというやつです。死後の世界が無い、という立場に立てば、その文化的な背景や人間の生理的な機能の組み合わせによって見えるものが変わってくるわけですね。

著者の性格上、臨死体験は脳内現象に過ぎない、夢のようなものに違いない、というのが基本姿勢ですが、いろいろな人への(やり過ぎなくらいの)取材によって臨死体験とは何なのかを明らかにしていきます。

特に終盤に出てくる感覚遮断実験や、インストラクターに教わりながら体外離脱の練習なんかを大まじめにやっているところはちょっと笑ってしまいますが好感が持てます。意図的に過呼吸をするトレーニングをすれば、昨日の話ではないですが、LSDとほぼ同様の体験ができるらしいですよ。やりたくないけど。
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2006年01月15日

「坊ちゃん」の時代

「坊ちゃん」の時代 関川 夏央 (著), 谷口 ジロー (イラスト)
アクションコミックス(双葉社) ISBN 4-575-93281-7


明治の文筆家の生活を描いた傑作漫画です。全5巻あります。アクションコミックスの第1巻は1987年刊行で、2002年に文庫化されました。私が読んだのは文庫版ですが、Amazonのリンクに画像がなかったので、アクションコミックスの方をリンクしてみました。

1巻は漱石、2巻は鴎外、3巻は啄木、4巻は幸徳秋水、5巻は再び漱石が主人公です。それぞれほぼ同時代で、ストーリーが絡み合い様々な視点から描かれます。

実はまだ4巻を読んでいないのですが、自分としては3巻の啄木の話が一番面白かったです。啄木はかなりのダメ人間で、借金まみれで、それでもすばらしい才能があって、良かったのか、悪かったのか?「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」って、風俗通いで散財してるからだろー。

もともと明治の小説が好きなのですが、この作品によって明治時代の空間的なイメージが広がった気がします。私は昨年まで東京に住んでいたので、本郷や銀座などが舞台であるのも感慨深いです。
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2006年01月08日

今日の芸術

今日の芸術 岡本太郎著
知恵の森文庫 ISBN 4-334-72789-1


芸術は爆発だ、という言葉は有名ですが、そんな岡本太郎のメッセージが詰まった本です。副題は「時代を創造するものは誰か」。もとは1954年、カッパブックスだったそうですが、1999年に知恵の森文庫に再録されたようです。

新しいとは何か、流行とは何か、渋みとなまなましさなど、はっとさせられる文章が多かったです。
「新しいといわれたら、それはもうすでに新しいのではないと考えたってさしつかえないでしょう。ほんとうの新しいものは、そういうふうに新しいものとさえ思われないものであり、たやすく許されないような表現のなかにこそ、ほんとうの新鮮さがあるのです。」
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2006年01月07日

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田寅彦随筆集 第二巻 寺田寅彦著 小宮豊隆編
岩波文庫 ISBN 4-00-310372-6
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物理学者で随筆家であった寺田寅彦の随筆集、第二巻です。(おそらく年代順に、)全部で5巻あるのですが、とりあえず二巻を紹介します。

時代は大正末期から昭和初期ですが、内容は現代に通じるものがあります。題材は蓄音機や路面電車などで、時事雑感も面白いです。特にオリジナリティーとは何か、とのくだりは強く印象に残りました。

普通のエッセイのつもりで読むと、やや重いです。(著者と読者の知能に相当の開きがあるからなのか…?)どうでもいいですが、なんで第二巻は表紙の画像がないの、amazon?
posted by シロハラクイナ at 17:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 書籍(文芸・人文社会) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする