生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2007年03月05日

進化する階層―生命の発生から言語の誕生まで

進化する階層―生命の発生から言語の誕生まで (単行本)
John Maynard Smith, Eors Szathmary (原著), 長野 敬 (翻訳)
単行本: 473ページ
出版社: シュプリンガー・フェアラーク東京 (1997/10)
ISBN-10: 4431707379
ISBN-13: 978-4431707370


メイナード・スミスのとても有名な本ですが、今更ながら読んでみました。独立の複製体→染色体、原核生物→真核生物、孤独性の個体→コロニー(非生殖カースト)など、生物の複雑さの進化における主要な”移行”について論じています。これらの移行のには共通した特徴があり、それは、「移行以前にはそれぞれ別個に複製できたものが、移行後には全体の一部分のみ複製可能となること」。そのとおりだと思うのですが、この見方を目新しく感じないのは、既に有名になりすぎていて、なんとなくあちこちで聞いたことがあるからなのか。
posted by シロハラクイナ at 21:58| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月20日

バージェス頁岩 化石図譜

バージェス頁岩 化石図譜 (単行本)
Derek E.G. Briggs, Chip Clark, Frederick J. Collier, Douglas H. Erwin (原著), 大野 照文, 瀬戸口 美恵子, 鈴木 寿志, 山口 啓子 (翻訳)
単行本: 231ページ
出版社: 朝倉書店 (2003/09)
ISBN-13: 978-4254162455
ASIN: 4254162456


グールドの「ワンダフルライフ」で有名になった、バージェスの動物化石の写真集です。眺めるだけでも楽しい、保存状態のいい標本がずらりと並んでます。ふだん昆虫を扱う身としては、やはり節足動物に目がいきますが、完璧とはいかなくても付属肢の構造が保存されているのは本当にすばらしい。また、有爪動物(Aysheaia, Hallucigenia)の標本も2点ずつ載っていてかなり満足です。そういえば、これらの化石の一部はワシントンDCのスミソニアン自然史博物館に展示されていて、昨年の学会のついでに見てきました。写真はAysheaiaの化石(たぶん現物)です。
aysheaia.jpg

あとは中国のチェンジャン化石の写真集もあれば、ぜひ欲しいのですが。
posted by シロハラクイナ at 21:12| ☀| Comment(0) | TrackBack(2) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月09日

干し草のなかの恐竜

干し草のなかの恐竜―化石証拠と進化論の大展開〈上・下〉
Stephen Jay Gould (原著), 渡辺 政隆 (翻訳)
単行本: 331ページ, 374ページ
出版社: 早川書房 (2000/09)
ASIN: 4152082984, 4152082992
サイズ (cm): 19 x 13


いつものエッセイシリーズの7作目。順番としては、「八匹の子豚」と「ダ・ヴィンチの二枚貝」のあいだにあたります。

シリーズも長くなるとマンネリ化するものですが、グールドの薀蓄は尽きず。個人的には、いわゆる"側節足動物"の進化について論じた9章「シタムシ、カギムシ、クマムシ」は重要なので精読。1994年に、舌形動物(シタムシ)と緩歩動物(クマムシ)の化石がカンブリア紀の地層から報告されているとのこと。これら2門の化石はそれ以前にはいかなる年代からも発見されていなかったとのことで、一気に年代を遡ったことになりますね。有爪動物(カギムシ)は「ワンダフル・ライフ」でも紹介されている有名なアユシェアイアなど、カンブリア紀では珍しくなかったようです。もちろん節足動物は当時からかなり多様化していたので、これら4門の分岐は従来考えられていたよりもずっと深い、と。

また、本の表題にもなっている12章「干し草のなかの恐竜」は、「白亜紀後期には恐竜やアンモナイトは既に衰退しつつあり、隕石の衝突は大量絶滅の原因ではない」とする説に反論すべく、白亜紀後期の地層を掘りまくる話です。そもそも化石は実際に生息していた生物のごくごく一部が残るに過ぎないために、実際に生息していても既に絶滅していたと判断される場合があり、稀なグループはありふれたグループよりも先に絶滅したように見える効果(シグノア・リップス効果)の影響を受けます。その結果、不完全な化石記録から絶滅時期を推定すると、実際には急激に大量絶滅が起こったのに、少しずつ絶滅していったかのように誤った推定をしてしまう場合があるということです。

この問題に対する最も効果的で単純な解決方法は、白亜紀と第三期の境界あたりをしらみつぶしに探すというものです。(干し草のなかから針を探す、ということわざにかけて、干し草のなかの恐竜というエッセイタイトルになっている。)ミルウォーキー市民博物館のピーター・シーハンは「恐竜を掘ろう」と題して大量の市民ボランティアを動員し、白亜紀末の地層から多くの恐竜化石を発見します。最終的に恐竜の多様性は白亜紀末に悪化していたとする説をついに棄却します。このエピソードに添えられるグールドのお説教は、健全な理論が新たなデータ収集を導く、というもので、いわく、「理論に判決を下すのはデータだが、データ収集に弾みをつけ、息を吹き込むのは理論なのである。」

本作全体としては、前作よりもやや重めで、軽い読み物が好きな方にはあまりおすすめできません。シリーズ初期のほうが生物ネタが多く、後期ほど人文ネタの比重が大きくなりますので、生物系の方はシリーズ最初(ダーウィン以来)から読んでいくと良いと思います。シリーズ全体の分量は大変なものです。何しろ連載27年分なので。

応援お願いします。→banner2.gif
posted by シロハラクイナ at 17:57| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月15日

ダ・ヴィンチの二枚貝

ダ・ヴィンチの二枚貝〈上・下〉―進化論と人文科学のはざまで
スティーヴン・ジェイ グールド (著), 渡辺 政隆 (翻訳)
ISBN: 4152083964,4152083972


グールドのエッセイシリーズ8作目。原著は1998年刊行。タイトルにもあるように、このころから人文科学的な話題が多くなってくるようです。

内容は相変わらず高水準ですが、ヨーロッパ史のうんちく全開で来られると正直、厳しいものがあります。(難しすぎる→眠くなる。)

ですがメインエッセイである第1章「生きている地球の山を化石に登らせたレオナルド」は興味深く読みました。

また17章「裏返しの関係」では、節足動物と脊椎動物では腹背面が逆転したボディプランに見える、という問題について苦闘したギャスケルやジョフロワの逸話、そして分子発生学がもたらした意外なオチについて、見事な展開で読ませます。

しかし何といっても19章、「根っこ頭の勝利」は必読。この章では常識を覆す寄生性の甲殻類、フクロムシの生活史について述べています。変わった生物だということはなんとなく聞きかじっていましたが、これほど無茶苦茶な生活史とは思いませんでした。孵化→ノープリウス幼生→キプリス幼生→ケントロゴンと変態し、宿主であるカニの体内に細胞体を注入し、これが成長して袋に根っこが生えたような、奇妙な形の成体となります。フクロムシ類の中でも、Larnaeodiscus porcellanaeという種では何と、注入する細胞体はわずか1個だそうです。これは個体の変態の過程で1細胞期を経ることを意味しています。従って、成体は甲殻類のボディプランを完全に捨て去っているわけです。フジツボ類に近縁とされていますが、フジツボ的な祖先から、どうやってこんな生活史が進化し得たのか?発生と進化について、様々なことを考えさせる現象です。
posted by シロハラクイナ at 16:50| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月09日

がんばれカミナリ竜

がんばれカミナリ竜〈上・下〉
進化生物学と去りゆく生きものたち
スティーヴン・ジェイ グールド (著), 広野 喜幸, 松本 文雄, 石橋 百枝 (翻訳)
早川書房 ; ISBN: 415207969X, 4152079703
ganbarekaminariryu.jpg

グールドのエッセイシリーズの第6作。いままで読んだ中では、シリーズ中で最もお薦めです。

第4章「テクノロジーにおけるパンダの親指」ではタイプライターの文字の配列(現在我々が使っているパソコンのキーボードも未だに同じ!)の起源と、不合理なQWERTY式配列がなぜ生き残ったのかを論じていますが、これは「歴史という複雑な小道をたどってきた多くの生物や生態系には最適なデザインなどありえない」ということの例えでもあります。生物における例はシリーズ第2作「パンダの親指」で詳しく述べられています。

また、この本のメインである第5章「がんばれブロントサウルス」では学名の命名法の正しい適用によって、愛すべき恐竜「ブロントサウルス(かみなりのトカゲという意味)」が「アパトサウルス(サギ師トカゲ)」に変えられてしまった経緯と、命名規約における名称の安定性、先取権、強権発動などについて述べています。

他にも、異常に大きいキーウィの卵サイズとアロメトリーの進化について論じた第7章「キーウィの卵と自由の鐘」、生物の隠蔽色の理論を提唱した画家アボット・セアの功績と失敗について書いた第14章「夕日に赤い翼」など、すばらしいエッセイのオンパレード。(どうしたらこんなに面白い話が書けるんだろうか。)

個人的には、大学院のころの研究室の先輩方が本書の翻訳に関わっておられるのも感慨深いです。
posted by シロハラクイナ at 00:25| ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月05日

進化発生学

進化発生学―ボディプランと動物の起源
ブライアン・K. ホール (著), 倉谷 滋 (訳)
工作舎 ISBN 4-87502-351-0


進化発生学を志すものとしては、これはやはり読んでおかないと。その名もズバリ「進化発生学」。直球ですね。枕のように厚い本です。原著は1999年出版。

いま気合を入れて半分くらい読んだところですが、すごくおもしろいです。教科書的、読み物的なテイストが混じり合っているため、重さのわりには読みやすいような気がします。概念や用語の由来、歴史から、化石と現生種を含めた形態、分子発生、系統、と圧倒的なボリューム。著者はぜったいオタクですね。引用文献リストは細かいフォントで70ページもありますが…。
posted by シロハラクイナ at 23:51| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月26日

バイオスフィア実験生活

バイオスフィア実験生活―史上最大の人工閉鎖生態系での2年間
アビゲイル アリング, マーク ネルソン (著), 平田 明隆 (翻訳)
講談社ブルーバックス ISBN 4-06-257147-1


トリノオリンピック、男子回転を観ています。皆川が第1回目で3位。2回目を待つ間に、前に読んで面白かった本を紹介しておきます。

アリゾナに建設されたバイオスフィア2は、面積1.2ヘクタールの人工生態系です。本書は、そこに8人の人間が入り、2年間自給自足の生活を送った記録です。

主な目的は生態系に関するデータをとることと、地球外での人工生態系での生活のシミュレーションです。また、実験期間中に、閉鎖系における人間関係や、栄養制限による健康への影響、酸素濃度の低下など、当初の予想外の研究テーマが生じています。

それぞれのトピックは簡潔に淡々と書かれているのですが、本当に面白いです。結局、酸素濃度の低下が限界を超え、2度の酸素注入を行ったこと、食糧不足になって貯蔵食に手を出したことを除けば、まずまず閉鎖系で生活できたというのはすごいことです。また、このような大プロジェクトが民間で行なわれたのもすばらしいことですね。

(アマゾンに在庫が無い…。こんなに面白いのに、もしかして絶版ですか??)

と、書いているうちにオリンピック中継が終わりました。皆川は4位。惜しかったですね。
posted by シロハラクイナ at 03:51| 🌁| Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月25日

ダーウィン以来

ダーウィン以来―進化論への招待
スティーヴン・ジェイ グールド (著), 浦本 昌紀, 寺田 鴻 (翻訳)
ハヤカワ文庫NF ISBN 4-15-050196-3
darwinirai.jpg

ネタが無いので、こういうときはグールドの本でも紹介しときます。

「ダーウィン以来」は、エッセイシリーズの第1作。ダーウィンに関する論考、ヒトの進化、生物の大きさと形など、この後のエッセイでも繰り返し登場するテーマが語られています。

12章「完成化の問題」では、小魚に似せた疑似餌をもつ二枚貝の話が出てきますが、あまりのそっくりぶりに感心しました。グールドはさらにこの貝を例にとって、新しい形質の進化における前適応の役割とその解釈の問題を論じています。

原著が雑誌連載されていたのは70年代前半なので内容はやや古いところもありますが、記念すべきシリーズ第1作目だし、文句無しでおすすめです。
posted by シロハラクイナ at 23:44| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月17日

「進化」大全

「進化」大全 ダーウィン思想:史上最大の科学革命
カール・ジンマー (著), 渡辺 政隆 (翻訳)
光文社 ISBN 4-334-96173-8


進化をテーマにした一般向けの解説書。PBS(全米公共放送サービス;リン酸バッファーではありません)のテレビ番組「エヴォリーション」の関連本なんだそうです。原著は2001年出版であり、当時の新しい研究成果もそれなりに盛り込まれています。

つくりは確かにテレビ番組的で、図や写真はなかなか良いです。特にダーウィンの時代の学者達の肖像画や当時の書物の図版などはなかなか手に入らないので貴重です。参考文献リストもついています。

posted by シロハラクイナ at 17:55| ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月14日

科学図画の方法

科学図画の方法
イーヴ・コワノー (著), 稲垣 新, 鈴木 奈緒美 (訳)
共立出版 ISBN 4-320-09239-2
kagakuzuganohouhou.jpg

昨日に引き続き、イラストの描き方の本です。A Handbook of Biological Illustrationよりもさらに詳しくマニアックですが、訳本なので読みやすいです。これも丸山さんのサイトで紹介されていました。

前半はペンの種類と使い方に重点が置かれ、後半では具体的な描画の方法について解説されています。著者はダニの研究者なので、顕微鏡像からイラストを描く方法なども載っています。訳注に、道具の日本での入手法が書かれているのが便利そうです。
posted by シロハラクイナ at 11:45| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月04日

マリス博士の奇想天外な人生

マリス博士の奇想天外な人生
キャリー・マリス (著), 福岡 伸一 (翻訳)
ハヤカワ文庫 NF ISBN 4-15-050290-0


PCRを発明しノーベル賞を受賞したマリス氏の自伝です。大変面白く読めました。
t-macさんのエントリで、彼の自伝を読んだ気がする、と書かれていたので検索したところ出てきた本です。

1/20のエントリで書いたとおり、お薬が好きな方だったようで、しかもそれを全く隠す気がありません。冒頭はPCRを思いついたときの逸話で、ホンダシビックに彼女を乗せてデート中、「DNAの鎖がくるくるとねじれたり、たゆったりしていた。鮮やかなブルーとピンクに彩られた分子の電子的なイメージが、私の目と山に続く路面の中間に浮かんでいた。」と、ここでは明言していませんが、薬の作用をうかがわせます。

LSDを発見したアルベルト・ホフマンは、「(マリス本人から、)LSDの助けによって、特定のDNA配列を増幅させるポリメラーゼ連鎖反応法を開発できたと明かされた」と語っており(既出のHotwiredの記事)、まぁ実際やっていたんでしょう。

序盤はそのほかに受賞の経緯などで、比較的マトモですが、だんだん無茶苦茶になってきて、13章「未知との遭遇」ではアライグマがしゃべりだし、17章「クスリが開く明るい未来」では暖炉から這い出した蛇をクラリネットで叩きまくったりします。しかもマリスは蛇は幻覚だとわかっているようですが、アライグマは現実だと思っているようです。うーむ。天才だ。

とにかくエキセントリックで刺激に満ちた本です。ときどき、ハッとさせられることも書かれています。ふつう自伝なんてあまり読む気がしないですが、これはおすすめ!
posted by シロハラクイナ at 18:57| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月31日

検証 なぜ日本の科学者は報われないのか

検証 なぜ日本の科学者は報われないのか
サミュエル・コールマン著 岩舘葉子訳
文一総合出版 ISBN 4-8299-0065-2


思わず、「おまえに言われたくねーよ!」と毒づいてしまいそうなタイトルですが、まぁそこはグッと抑えて読んでみました。著者は日本の科学技術と社会に関する専門家だそうです。実際に日本の研究機関に滞在して取材したらしく、内容は具体的で指摘は的確です。

でもいろいろ理由は挙げられるけれど、いちばん致命的なのは言葉の問題だと思うけどなあ…。
posted by シロハラクイナ at 01:24| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月27日

マラケシュの贋化石

マラケシュの贋化石 進化論の回廊をさまよう科学者たち(上・下)
スティーヴン・ジェイ・グールド(著) 渡辺政隆(訳)
早川書房 ISBN 4-15-208685-8


正直、微妙…。期待しすぎました。

グールドの本はいつも面白いのですが、エッセイシリーズ邦訳最新刊の本書は、サブタイトルにもあるように歴史上の科学者の列伝のようになっており、それなりに楽しめますが、蘊蓄が凄すぎてついて行けない部分もありました。むしろ科学史の本と思えばいいのかもしれません。

シリーズ初期(ダーウィン以来、パンダの親指、…)では生物そのものに関するエピソードが多かっただけに、最近のこの路線は、自分にはちょっと頂けませんでした。ただ、著者のものすごい気合いは感じられます(少しは手加減してほしい)。
posted by シロハラクイナ at 00:09| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月17日

八匹の子豚

八匹の子豚―種の絶滅と進化をめぐる省察 (上・下)
スティーヴン・ジェイ・グールド (著), 渡辺 政隆 (訳)
早川書房 ; ISBN: 4-15-208031-0


グールド先生の連作エッセイの第6作目です(ですよね?)。原著は1993年刊行で、翻訳されたのは1996年です。このタイミングで紹介するのは、たまたま読み終えたところだからです、すいません。

彼のエッセイも時代の変遷によって書かれる内容が変わってきていて、それはやたら長いプロローグにも書かれていますが、今回は(地質年代上のではなく)現代の生物の絶滅の話が出てくるのが目新しいです。また、彼のルーツや学問上の系譜に対する個人的な思いが書かれているのも今までに無かったことです。

しかし、私が一番おもしろいと思うツボは、やはりEvoDevo的なうんちくですね。イヌの品種間の形態差は大きいのに、ネコはそうでもないのはどうしてでしょう?

人為淘汰で引き出せる変異にはあらかじめ潜在的な傾向があって、この場合は成長過程で現れるアロメトリーの違いがその傾向になります。イヌは鼻面の極端に短い子犬から長い成犬までアロメトリーが変化するので、ネオテニー的な形質を選択することによってチワワ的なイヌを作り出せるというわけです。ネコは子猫から成猫まであまり形が変わらないですね。うーん、いままで気づいてなかった…。

全体的に、前作「がんばれカミナリ竜」ほどのキレはないように思えましたが、このシリーズは相変わらず面白いです。いま翻訳版の最新作は「マラケシュの贋化石」ですね。これも読まねば。
posted by シロハラクイナ at 11:16| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月24日

DNAから解き明かされる 形づくりと進化の不思議

DNAから解き明かされる 形づくりと進化の不思議
Sean B. Carroll, Jennifer K. Grenier, Scott D. Weatherbee著
上野直人、野地澄晴 監訳
羊土社 ISBN4-89706-293-4


進化発生生物学の教科書「From DNA to Diversity」の日本語訳です。原著は2nd editionが出ているので、いずれ日本語版も出ることを期待しています。

実は英語版のほうを研究室で輪読しているのですが、大変に良い教科書であるとしみじみ思います。発生生物学の基本を非常にわかりやすく解説してあり、かつ面白い。筆頭著者のCarrollは業界の大御所なのですが、先端の研究をしつつも、このようなすばらしい教科書も書けるとは、本当に頭のいい人なのだと感心してしまいます。
posted by シロハラクイナ at 14:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フルハウス-生命の全容-

フルハウス-生命の全容- 四割打者の絶滅と進化の逆説
スティーブン・ジェイ・グールド著 渡辺政隆訳
ハヤカワ文庫 ISBN4-15-050286-2


言わずと知れたグールド先生の書き下ろし。文庫化されたのは2003年です。

内容は、生物進化のトレンドと、メジャーリーグにおける四割打者の絶滅という、一見関係のなさそうな事柄を、頻度分布の正しい理解によって鮮やかに説明するというもの。生物の複雑さの頻度分布と進化を論じた14章は圧巻です。

地球は生命が誕生して以来、昔から今までずっとバクテリアの惑星なんだそうです。とはいえ、やはり我々の興味が複雑な生物に向いてしまうのは当然です。生物界の主役はバクテリアだとしても、マイナーな高等生物を愛して何が悪い。グールドだってカタツムリマニアのくせに…。

とはいえ、彼の書いたものは常にすばらしく、小品であっても読む価値のないものはありません。一度でいいから、生きているうちにお会いしたかったと思ってしまいます。
posted by シロハラクイナ at 02:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする