生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2009年01月22日

澄江生物群化石図譜

澄江生物群化石図譜―カンブリア紀の爆発的進化 (大型本)
X. ホウ (著), J. ベルグストレーム (著), デイヴィッド・J. シヴェター (著), X フェン (著), デレク・J. シヴェター (著), R.J. アルドリッジ (著), Xian‐Guang Hou (原著), David J. Siveter (原著), Jan BergStr¨om (原著), Richard J. Aldridge (原著), Derek J. Siveter (原著), 大野 照文 (翻訳), 鈴木 寿志 (翻訳), 伊勢戸 徹 (翻訳)

大型本: 232ページ
出版社: 朝倉書店 (2008/03)
ISBN-10: 4254162596
ISBN-13: 978-4254162592



これは買わずにはいられなかった。澄江(チェンジャン:中国雲南省)はバージェス頁岩に優るとも劣らない、カンブリア紀化石の名産地です。カンブリア紀の化石は、小さく平べったいものが多いので、化石図譜との相性はばっちりです。仮に現物を見る機会があったとしても、細部はよく見えないだろうし、よく工夫して撮影された図譜はとても手軽かつ有用だと思います。あのマロカリス類も色々な種類が掲載されているし、ミクロディクティオン(有爪動物っぽいけど体側にプレートがついているやつ)もバッチリ。

あえて不満があるとすれば、値段が高め。「バージェス頁岩化石図譜」よりもさらにお高いです。しかし内容には大満足です。
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2009年01月14日

ニワトリの歯

ニワトリの歯―進化論の新地平〈下〉 (ハヤカワ文庫NF) (文庫)
Stephen Jay Gould (原著), 渡辺 政隆 (翻訳), 三中 信宏 (翻訳)
文庫: 326ページ
出版社: 早川書房 (1997/11)
ISBN-10: 415050220X
ISBN-13: 978-4150502201


シマウマが表紙になっているので、下巻のほうにリンクを張りました。グールドのエッセイシリーズ第3作。原著は19871983年*とのことで、さすがに内容は少々古くなってきていますが、それでも十分面白いです。適応主義批判に多くの章が割かれていますが、それも当時の論争の影響なのですね。初めて読んだとき(確かB4かM1くらい)には全く気付きませんでしたが…。

*(leeswijzer先生、ご指摘ありがとうございます。訳者の先生のお手を煩わせてしまった…orz)

下巻の最後に、「シマウマ三部作」として、シマウマ関連のエッセイがまとめられています。特に「シマウマの縞はどうやってできるのか」は大変興味深い仮説を紹介しています。シマウマ好きの人はよくご存知のように(?)、ひとくちにシマウマといっても種によって縞の間隔はだいぶ異なっています。グラントシマウマは幅白い縞で数は少ないですし、グレイビーシマウマは細い縞がたくさんあります。いろいろな動物園をめぐれば、かなりたくさんの種類を見ることができるはずです。(物好きの方は是非。)

Equus_grevyi.jpg

GrantsZebra.jpg

グレービーシマウマ(上)とグラントシマウマ(下)。いずれも英語版wikipediaより。Creative Commons Attribution 2.0, Public domain.

Bard (1977) J.Zool.によれば、種間の縞模様の違いは、胚発生の特定のステージにおいて、縞(またはその位置情報をもつ分子の分布?)が形成されると考えれば、説明がつくのだそうです。いずれの種でも、同じ幅の縞ができるのだけど、その時期が違うのだと。早いステージで形成されると胚は小さいから縞の数は少なく、遅いステージならば大きな胚に多くの縞ができるのだと。ちょっと話ができすぎのような気もするし、実験的に検証されていないので本当にそうかはわかりませんが、エレガントな仮説です。「Developmental Biology」のサイトにわかりやすい解説がありましたのでリンクしておきます。

The Development of Zebra Striping Patterns
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2009年01月13日

延長された表現型

延長された表現型―自然淘汰の単位としての遺伝子 (単行本)
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆 (訳), 遠藤 知二 (訳), 遠藤 彰 (訳)
単行本: 555ページ
出版社: 紀伊國屋書店 (1987/07)
ISBN-10: 4314004851
ISBN-13: 978-4314004855

Enchosareta.jpg

ドーキンスの「利己的な遺伝子」の続編である本書は、そこそこ有名なのではないかと思います。しかし著者が自ら「読者が〜専門知識を持っていることを前提としている」、と書いているように、内容がやや難解で、著者の「思考実験」とやらがたびたび出てくるので、行動生態学が得意でない私としては、読みとおすには根気が必要でした。知的パズルなどがお好きな方には面白いのかもしれません。そんなわけで、私は、読み物としてはグールドのほうがずっと好きです。

最近のマイブームである“体色の意味を考える”ことに関して、本書に気になる記述があったのでメモ。ルウォンティンの論文の孫引きになります。

Lewontin(1979)
「昆虫のマルピーギ管の黄色い色は、その色がどんな生物によっても見えない以上、それ自体自然淘汰の対象とはなりえない。むしろその色は、適応的かもしれない赤い眼の色素の代謝の多面発現的結果である。」

マルピーギ管の色のように、他の形質の副産物だとすると、淘汰を受けないからといって必ずしも変異に富むわけではないし、やはり「外から見えないから、見た目に淘汰がかかるはずがない」という点からしか、その色じたいの生態的な文脈での無意味さを示す方法はないのでしょうか。

例えば、真っ暗な洞窟にすむ動物は、体色が真白ないし薄い褐色であることが多いようですが、おそらくそれは見た目の色に関する淘汰から解放された結果なのでしょう(しかし同時に、紫外線から身を守る必要性からの解放の効果もあるかも?)。では、普通に外界を歩行している昆虫は、体色について淘汰を受け続けていて、「必然的に」その色になっているのでしょうか。
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2009年01月09日

社会生物学論争史

社会生物学論争史〈1〉―誰もが真理を擁護していた (単行本)
Ullica Segerstrale (原著), 垂水 雄二 (翻訳)
単行本: 360ページ
出版社: みすず書房 (2005/02)
ISBN-10: 4622071312
ISBN-13: 978-4622071310



「社会生物学論争」というものがあったことは、いろいろな本などで言及されているので知ってはいたのですが、誰が、どのような論争を繰り広げたのか、知らずにいました。先日取り上げた「スパンドレル論文」が、その論争のなかでどのように位置づけられていて、現在ではどのように理解されているのかを知りたいと思い、本書に手を出した次第です。(コメントで本書を勧めてくださったmapipiさん、ありがとうございます。)

ウィルソンの「社会生物学」によって提起された生命観・人間観、特に人間の行動がどのくらい遺伝的な基盤によって決定づけられているか、という点について、(左寄りの人たちの政治的な意図を持ったものを含め、)ルウォンティンらから反論が寄せられ、それにウィルソンが再反論、さらにグールド、ドーキンスらを巻き込んで、長い議論になっていく、ということのようです。本書では多くのインタビューや私信に基づいて、その論争の全貌を見渡そうと試みています。

長い論争の中にはいくつものトピックが含まれていて、「適応主義」の是非も、そのひとつ。グールドとルウォンティンによる「スパンドレル論文」は、実際には主にグールドが書いたとのことですが、一連の論争の中でもハイライトのひとつであって、これによってイギリスの伝統でもあった「適応主義」に喧嘩を売り、これが燃料投下となって議論はさらなる盛り上がりを見せた、ということのようです。

この論争は、表面上は純粋に科学的な体裁をとった論説が、実はかなり政治的な意図や信念によって動機づけされているため、本書のような解説本なしに理解するのは困難でしょう。

私自身は、論者たちのような強い動機づけを持っていないため、この論争の個々のラウンドにおける勝敗などには興味はありませんが、しかし論争の中にはところどころ、普通の実験系研究者が見落としがちな観点に気づかされるところも多いです(例えば、適応主義の陥りがちな安易な適応的説明や、科学におけるプランターとウィーダーの関係など)。

がむしゃらに研究生活を送っていると、自分の仕事の歴史的な位置づけや、大局的な視点を忘れてしまいがちです。自分の普段の仕事を、少し突き放してじっくり考えてみるのも悪くないし、たまにはそうすべき、と思わせてくれる本でした。時間のある時に読んでみると面白いでしょう。やたら長いけれど。
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2008年12月29日

視覚の認知神経科学

視覚の認知神経科学 (現代基礎心理学選書) (単行本)
M.J. ファーラー (著), M.J. Farah (原著), 利島 保 (翻訳)
単行本: 419ページ
出版社: 協同出版 (2003/12)
ISBN-10: 4319107063
ISBN-13: 978-4319107063



ここのところ、ひきつづき、昆虫の体色の意味について考え込んでいます。捕食者の視覚系が、どのように物体を認知するのか、ある程度わかっていないといけないと思い、視覚と脳についての勉強です。日本語の教科書があり、こうして外国にいても手に入るのはありがたいことです。

本書は、視覚の教科書としては有名なもののひとつで、原著は2000年刊行ということで、そう古くもないしバランスも良さそうなので、amazon.co.jpで他の本とともに買ってみました。

私たちは、物が見えるのはあたりまえと感じ、むしろ見えた映像そのものが外界とイコールであると思ってしまいがちです。しかし視覚系から入って来る情報は、様々に情報処理されてから認識されるわけなので、適切に重みづけされ、注釈のついた状態で意識にのぼるわけです。

研究手法には様々な切り口がありえるのでしょうが、特に脳に何らかのダメージを負った患者さんの症例は、ヒトの認知過程の、とても興味深い側面を教えてくれるようで、近年はさらにPETやfMRIのデータなどもとれるので、これによって視覚と認知の過程の理解がだいぶ進んでいるようです。医学との境界領域ということになるんでしょうが、生物学の立場で、ヒトも動物の一種として見た場合、言語によって被験者から報告を受けたり、症状を自ら語ってくれたりする動物の種は他にいないわけなので、これはヒトを研究テーマとする大きなメリットなのだと思われます。もちろん、一般的には、我々はヒトの認知の仕組みこそ(他の動物での仕組みよりも)最も知りたいわけなので、直接に調べることが早道ならば当然そうすべきなのですが。

というわけで、ヒトの研究からわかったことを、他の生物にも外挿して当てはめようとしながら読むというのは、よくある研究の順序とは逆転しているというか、倒錯しているようにも感じますが、まぁそこは気にしないことにして。例えば鳥類などでも、物体(餌とか)の認識においては似たような仕組みが働いていることが想像され、そのような認識の特性が、被食者側の体色や行動に対しての選択に大きく関係していることは間違いないでしょう。

おそらく捕食者の視覚、餌の見え方を考える上で注意すべきは、捕食者がヒトと系統的に大きく離れている場合(たとえばクモだった場合)、ヒトの認知の仕組みとの違いが比較的大きいにもかかわらず、その違いにまったく気付かないこともあるのではないかということ。現在まったく知られていないような、とんでもない違いがあるかもしれないと思っています。紫外光が見える動物が意外に多いことが知られる以前は、そんな可能性をまったく考えなかったことでしょうし。

今回はあんまり本の内容の紹介になっていなくてすみません。
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2008年12月05日

ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト

ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト―最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅 (単行本)
ニール シュービン (著), 垂水 雄二 (翻訳)
単行本: 306ページ
出版社: 早川書房 (2008/9/5)
ISBN-10: 4152089555
ISBN-13: 978-4152089557



脊椎動物の進化に関する読み物。著者は、化石から分子発生までこなしてしまうエヴォデヴォ界の大物です。若いころの研究生活のエピソードなども交えつつ、魚やヒトの形態とその進化に関するトピックを紹介していく形式です。初めて知った話題も多く、なかなか楽しめました。

最近ようやくエヴォデヴォの読み物がコンスタントに出版されるようになってきた気がします。まだまだ話題は尽きないと思うので、続編にも期待しておきます。ちなみに帯の推薦文を書いているのはうちのボス。あとがきによれば、著者に執筆をすすめたのも彼のようです。
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2008年11月23日

ダーウィンのジレンマを解く

ダーウィンのジレンマを解く―新規性の進化発生理論 (単行本)
マーク・W・カーシュナー (著), ジョン・C・ゲルハルト (著), 赤坂 甲治 (監修), 滋賀 陽子 (翻訳)
単行本: 401ページ
出版社: みすず書房 (2008/8/20)
言語 日本語
ISBN-10: 4622074052
ISBN-13: 978-4622074052


日本に帰った時に買おうと楽しみにしていた、「The Plausibility of Life」の翻訳書。先月、東京の書店で入手。

進化発生学は分子発生学を取り入れた90年代の華々しい成功によって一大分野を築いたと言えますが、大発展の時代は過ぎて、これからの方向性としてはどうなっていくのか、新しいパラダイムは生まれるのか、ということを、みな考えなければいけない、そして考えている時期なのだと思います。

ひとつの方向性としては、自然選択の働き方や、表現型変異の起こり方自体に、何らかの方向性や法則のようなものがあるんじゃないか、という考え方で、このところそのあたりの議論を本業とする論客が増えてきたように思います。本書では、探索的挙動やコアプロセスなどをキーワードとして、新規形質がどのような条件のもとで進化しうるのか、ということが論じられているようです。「いるようです」というのは、私はあまり理解できなかったというか、どこがポイントなのか、つかみかねています。

最近の議論をなぞって、著者らの研究分野(微小管の探索行動など)もふまえつつ、「促進的変異理論」なるものを提唱していますが、この理論のどこが新しいのか良くわかりません。理論の要点として12項目のまとめがありますが、従来の理論が繰り返されているだけのように見えます。本当に新しい理論であれば3項目ぐらいで明確に述べられないものでしょうか?

本来の(というのは著者らが望んでいるような)読み方ではないかもしれないですが、最近の議論のトピックをなぞった読み物としては、価値があると思います。

(日本の出版事情は厳しいとよく聞きますが、それでも、このようなマニアックな本もきちんと翻訳出版されることはありがたいですし、日本における出版文化の豊かさを示しているのではないかと思います。皮肉ではなくて、素直な意味で。)
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2008年03月08日

ミトコンドリアが進化を決めた

ミトコンドリアが進化を決めた (単行本)
ニック・レーン (著), 斉藤 隆央 (翻訳)
単行本: 524ページ
出版社: みすず書房 (2007/12/22)
言語 日本語
ISBN-10: 4622073404
ISBN-13: 978-4622073406


恩師M先生に薦められた翻訳書。原題はインパクト抜群の「Power, Sex, Suicide」ですが、これでは何について書かれた本かわかりにくいので、改題もやむなしか。

真核生物の起源、性の起源、老化などにおけるミトコンドリアの役割についてのレビューと考察。特に老化に深くかかわっているというところは面白かった。ミトコンドリアから漏出するフリーラジカルが、老化に決定的な役割を果たしているのは間違いなく、そのあたりのメカニズムが解明されると、老化をコントロールできるかもしれない、と。
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2007年12月23日

時間・愛・記憶の遺伝子を求めて

時間・愛・記憶の遺伝子を求めて―生物学者シーモア・ベンザーの軌跡 (単行本)
ジョナサン ワイナー (著), 垂水 雄二 (翻訳)
単行本: 426ページ
出版社: 早川書房 (2001/12)
ISBN-10: 4152083883
ISBN-13: 978-4152083883



先日惜しくも亡くなったベンザーの伝記。著者はあの「フィンチの嘴」のワイナーです。物理学から転向したベンザーが、様々な課題を見つけながらそれを最後まで追うことなく、次々テーマを変えていく過程に、行動の分子遺伝学の歴史を重ねて描いています。前半はショウジョウバエ遺伝学の勃興と、ベンザーのファージの仕事、後半はperiodの話を中心に、行動の分子遺伝学に関わった人々(多くはベンザーの弟子)のエピソード。さいごは人間の意識の問題に持っていっていますが、これはすこし無理があるかも。しかし、とにかく伝説的人物が次々に出てきてすごい。読み応えアリ。


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2007年12月08日

眼の誕生

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く (単行本)
アンドリュー・パーカー (著), 渡辺 政隆, 今西 康子 (翻訳)
単行本: 384ページ
出版社: 草思社 (2006/2/23)
ISBN-10: 4794214782
ISBN-13: 978-4794214782



しばらく前に話題になっていた本。jkjに借りて、少しずつ読んでいましたが、昨日読了。全体としてストーリーのまとまりに欠けるし、タイトルからすぐに結論が読めてしまいます。なのでなかなか結論に至らない展開にはちょっとガッカリ。読み物としての完成度はいまひとつかな?
(こういうタイプの本では、著者自身の中から湧き上がってくるような膨大な薀蓄から構成するグールドのようなタイプと、ジャーナリスティックな視点で茶化しを入れながら聞き書きするジンマーのようなタイプがありうると思うのですが、どっちつかずになっているのが問題かと。)

しかし個々の情報には面白いものが多く、ヘラクレスオオカブトの鞘翅の色が変化する仕組みや、三葉虫の複眼の種類と構造に関する話など、とても勉強になりました。ときどき読み返すことになるかもしれません。
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2007年10月27日

バイオ研究に役立つ一歩進んだ遺伝学

バイオ研究に役立つ一歩進んだ遺伝学―変異体の解析法から遺伝子マッピングまでモデル生物を例に原理からわかる (単行本)
R.Scott Hawley (著), Michelle Y.Walker (著), 芹沢 宏明(訳)
単行本: 268ページ
出版社: 羊土社 (2005/02)
ISBN-10: 4897064783
ISBN-13: 978-4897064789


大学生協にて購入。遺伝学の教科書は入門用のものが多く、実際の研究をイメージできるものが今まで見つけられなかったのですが、これは良い。

モデル生物とその遺伝学上の特性から、遺伝学用語とその概念、研究上のストラテジーまで書かれていて、とても勉強になりました。章立ては、変異体の獲得(放射線、突然変異誘発剤、トランスポゾン、おまけにRNAiも)、相補性試験、抑圧、遺伝子機能発現の時期と位置の決定、など。用語としてはエピスタシスや抑圧、トランスベクションなど、技術としてはFLP-FRTシステムが、自分にとっては重要。注意点は、例として挙げられているのがハエと酵母ばかりであることと、翻訳がやや硬いことでしょうか。
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2007年10月20日

脳は美をいかに感じるか

脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界 (単行本)
セミール ゼキ (著), 河内 十郎 (監訳)
単行本: 443ページ
出版社: 日本経済新聞社 (2002/02)
ISBN-10: 4532149606
ISBN-13: 978-4532149604


著者は視覚の専門家らしいのですが、本書では芸術作品を見るときの脳の状態、機能について、様々な実験結果を結びつけるかたちで論じています。かなり沢山の絵画、彫刻などを引用し、芸術のモチーフや技法の変遷が、脳科学から見てどのように位置付けられるのかを考えていきます。特に素人目には意味不明の現代アートに、かなりそれらしい解説を加えているところがすごい。キネティック・アート(動きを表現した絵画や彫刻)は、物体の運動を知覚する脳のV5野を刺激するなど、芸術の進歩と共に、より高次の中枢が刺激されるようになってきているのだとか。ふーむ。
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2007年09月10日

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 (単行本)
ウェンディ・ムーア (著), 矢野 真千子 (翻訳)
単行本: 382ページ
出版社: 河出書房新社 (2007/04)
ISBN-10: 4309204767
ISBN-13: 978-4309204765


ただいま読了。たいへん面白かった。原題は「The Knife Man」。18世紀、スコットランドの農家に生まれたジョン・ハンターが、歴史に残る外科医・博物学者になり、膨大な標本のコレクションを残していく過程が丁寧に書かれています。

彼の業績は多岐にわたり、膝窩動脈瘤の手術法の開発、「性病大全」の出版、カンガルーやデンキウナギの解剖、などなど。彼のクジラについての論文が、メルヴィルが「白鯨」を書くきっかけだったとか、その手のエピソードも豊富。ハンターの死後数十年たって、彼のコレクションにダーウィンが標本を追加し、リチャード・オーウェンが調査を開始する…という風に歴史は続いていきます。コレクションはいまでもロンドンで見られるらしいので、いつか行ってみたいですね。しかし、200年以上の昔の人物について、改めてこんな詳細な伝記が書けるほど資料が残っているイギリスはすごいなぁ。
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2007年07月15日

ワンダフル・ライフ

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (文庫)
スティーヴン・ジェイ グールド (著), 渡辺 政隆 (翻訳)
文庫: 602ページ
出版社: 早川書房 (2000/03)
ISBN-10: 4150502366
ISBN-13: 978-4150502362


言わずと知れたグールドの傑作のひとつ。いま読むと少し古い情報もありますが、解釈を次々に塗り替えて行くこの分野の進展も本書があってこそのものでしょう。バージェスの化石に基づいて、カンブリア紀の動物の圧倒的な多様性を広く知らしめ、またそこにグールド独自の断続的な進化観を重ねて論じたものです。動物の体制の多様性はカンブリア紀が最大であり、あとは選別が進んで限られた系統だけが繁栄した、とする見方は極端すぎるとの批判もありますが、読み物として大変に面白いのも確か。このブログでも本書には何度も言及しているのに、なぜか紹介していなかったのであわててこのエントリを書いた次第です。

なお、本書で明らかに古くなってしまっている情報は、
◎ハルキゲニア逆さま。
◎単枝類(有爪+多足+昆虫)はさすがに支持されない。有爪動物は節足動物に含まれない。
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2007年07月14日

カンブリア紀の怪物たち

カンブリア紀の怪物たち―進化はなぜ大爆発したか シリーズ「生命の歴史」〈1〉 (講談社現代新書) (新書)
サイモン・コンウェイ モリス (著), 松井 孝典 (翻訳)
新書: 301ページ
出版社: 講談社 (1997/03)
ISBN-10: 4061493434
ISBN-13: 978-4061493438


バージェス頁岩の動物群の中でも「蠕虫類」(実際には雑多な動物をすべて含む)を担当し、ウィワクシア、ハルキゲニアをはじめ、多くの“異常な”動物を記載したコンウェイ・モリス自身によるバージェス動物群の解説書。グールドによればコンウェイ・モリスはかなり過激な性格の人物のようですが…。確かにキャラが立っています。

研究の経緯を含めなかなか詳しく書かれており、もしかしたら「ワンダフル・ライフ」を上回る出来かも…。合わせて読むと面白さ倍増です。講談社現代新書のために書き下ろされた、とのことですが…英語版が出ないなんてありえるのだろうか??
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2007年07月01日

パラサイト・レックス

パラサイト・レックス―生命進化のカギは寄生生物が握っていた (単行本)
カール ジンマー (著), 長野 敬 (翻訳)
単行本: 356ページ
出版社: 光文社 (2001/03)
ISBN-10: 4334961053
ISBN-13: 978-4334961053


ジンマーの第2作。今度は寄生生物の話。特に身近なところではトキソプラズマの話題が印象に残りました。全世界の3分の1の人が感染しているのだとか。本来の宿主はネコで、ネコの排泄物に含まれる接合子嚢を飲み込むと感染するのだとか。ってことは我々もおそらく…。

扉絵にはあまりじっくり見たくない、寄生状況の写真が多数。そっち方面が好きな方は是非。
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2007年06月11日

動物の発育と進化

動物の発育と進化―時間がつくる生命の形 (単行本)
ケネス・J. マクナマラ (著), 田隅 本生 (翻訳)
単行本: 410ページ
出版社: 工作舎 (2001/04)
ISBN-10: 4875023502
ISBN-13: 978-4875023500


いわゆる「ヘテロクロニー」を真正面から取り上げた読み物。うーん、個々の話題は面白いのですが、全体としてひまひとつなのは何故なのか。そして、やはり化石を扱っている人ならではの洞察もあるのでしょうが、なんでもかんでもヘテロクロニーで説明しようとしていて、無理を感じる部分があります。

ある進化の系列を目にしたときに、これはヘテロクロニー、という括り方は、その時点で説明がついた気になって思考停止になるおそれがあるのではないでしょうか。化石屋さんはそれでOKかもしれないけれど、なまものを扱う我々は、そこで止まることなく、より具体的なメカニズムを明らかにしていかなければいけないのではないでしょうか。例えば昆虫の無翅型はプロジェネシスあるいはネオテニーと言ってみたところで、何も理解が進んだわけではなく、その背後にある遺伝的、内分泌的なメカニズムに踏み込まなければ無意味ではないかと。なんでもヘテロクロニーって言うな、もっと見て、よく考えろ、というのはブライアン・ホールも言っていたことなわけですが。それでも、やはり色々な進化的現象を整理するうえでは重要な概念なのかな。
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2007年06月10日

シマウマの縞 蝶の模様

シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源 (単行本)
ショーン・B・キャロル (著), 渡辺 政隆, 経塚 淳子 (翻訳)
単行本: 405ページ
出版社: 光文社 (2007/4/23)
ISBN-10: 4334961975
ISBN-13: 978-4334961978


発売と同時に購入。「Endless Forms Most Beaufiful」の翻訳版です。近年のEvoDevoの面白いところを、自分の仕事を中心に(笑)、概観しています。訳もとてもいいし、一般向けで読みやすく、内容はもちろん文句なしに面白いです。ひいきを差し引いても、最近のEvoDevo関連の読み物としては一番じゃないかと。皆さんの感想はどうですか?

残念な点がひとつ。原著にあった際どいジョーク、彼へのファンレターの話題が削除されています。英語版を見かけたら探してみてください。

なお、「The Making of the Fittest」の訳本も別の出版社で準備中だそうです。これは確かな筋から聞いたので間違いない話。
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2007年05月28日

水辺で起きた大進化

水辺で起きた大進化 (単行本)
カール ジンマー (著), 渡辺 政隆 (翻訳)
単行本: 394ページ
出版社: 早川書房 (2000/01)
ISBN-10: 4152082593
ISBN-13: 978-4152082596



脊椎動物の話ということで今までスルーしていましたが、もっと早くに読むべきだった一冊。前半は上陸前後の話(肉鰭類〜原始両生類あたり)、後半はクジラの祖先が海に戻る話。自分としては、上陸前後の前肢のパターニングの進化が圧倒的に面白かった。進化発生学に興味のある方は是非。
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2007年04月15日

DNAに魂はあるか 驚異の仮説

DNAに魂はあるか―驚異の仮説 (単行本)
フランシス クリック (著),中原 英臣 (翻訳)
単行本: 374ページ
出版社: 講談社 (1995/12)
ISBN-10: 4061542141
ISBN-13: 978-4061542143


クリックによる脳科学の入門書。原題は"The Astonishing Hypothesis"です。訳本のタイトルはどうしちゃったのかと思いますが、おそらくクリックと言えばDNA、という知名度を生かして部数を出そうと狙った結果かと。このタイトルでは一瞬キワモノ本かと思ってしまいますが、どっこい、内容は非常に真っ当です。

(なお、何が驚異かといえば「あなた ―つまりあなたの喜怒哀楽や記憶や希望、自己意識と自由意思など― が無数の神経の集まりと、それに関連する分子の働き以上の何ものでもないという仮説である。」とのこと。これはもしかしたら読者の文化的・宗教的バックグラウンドによるのかもしれませんが、私はこれは当たり前で、とくに驚異とは思いません。問題はもっと先、どのようなメカニズムでそのようになっているか、にあると思います。)

論旨がわかりやすく、脳科学の概略を知るにはとても良いです。専門的にどのように評価されているかはわかりませんが、おすすめ。
posted by シロハラクイナ at 14:37| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする