生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2013年05月20日

意識の探求 神経科学からのアプローチ

意識の探求―神経科学からのアプローチ (上) [単行本] / クリストフ・コッホ (著); 土谷 尚嗣, 金井 良太 (翻訳); 岩波書店 (刊)

意識とは何か、というのは脳科学の最も難しくかつ重要な問題のひとつと言われているそうです。著者のコッホは、クリック(*注1)とともに、意識の神経科学的基盤の解明に取り組んできた研究者です。

彼らは、NCC (Neural Correlates of Consciousness) 、つまり意識を生み出すのに充分な神経活動の単位を探ることを目標に、特に視覚意識(何が見えているか)に注目してきたそうです。NCCがあると仮定するということは、脳のどこかに意識の中心になる領域なり回路があるということで、これはデネット(*注2)が批判するカルテジアン劇場のようなものです。コッホはNCCを仮定した上で、今はその実体を科学的なアプローチで探索できるエキサイティングな時代であり、そうすべきというスタンスです。例えば視覚意識に関して言えば、後頭部にある皮質のV1(一次視覚野)は視覚のNCCに含まれないのはほぼ確かで、つまり大脳皮質の全体ではなく一部(おそらく下側頭葉の中やその周りのニューロンを含む)が意識形成の中心になっているはず、と述べています。

意識の問題のように長く議論されてきた課題を解決するためには、とにかく検証可能な仮説を立てて、それを科学的に検証するというスタイルが、唯一の現実的な手法であると私も信じますし、そういう意味では自然科学は最も実践的な哲学なのだと思います。

*注1 Francis Crick、The Astonishing Hypothesis(邦訳:DNAに魂はあるか)の著者で、もちろんDNAの二重らせん構造の提唱でも有名。

*注2 Daniel C. Dennett、Consciousness Explained (邦訳: 解明される意識 )など、とても字数の多い本で有名な人気哲学者です。
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2013年01月04日

解明される宗教

解明される宗教 進化論的アプローチ [単行本] / ダニエル・C・デネット (著); 阿部文彦 (翻訳); 青土社 (刊)

宗教とは何か、どうして人は宗教を生み出し、信じ続けるのか、というとても扱いにくいテーマに正面から取り組んでいる、野心的な作品です。宗教を、人の媒介して複製され伝播する情報「ミーム」としてとらえ、競争の中で生き残る特性は何か、どのような状況下で人の考えを縛り操ることができるのか、また我々は宗教が強い影響力を持っている世界でどのように振る舞うべきか、かなり踏み込んだ議論が続きます。ただし、「はじめに」で著者自身が述べているように、特にアメリカの状況が念頭に置かれているために、主にキリスト教と、ユダヤ教、イスラム教についての言及が多いように思います。

自分がどのような信仰を持っているかによって、本書の捉え方はまったく異なると思います。私のように無宗教で自然科学の研究をしている者には、特に抵抗感はありませんが、文脈によっってはやや攻撃的すぎると感じる部分もあります。アメリカで生活していると、教会関係者や信者の人たちは、いわゆる「いい人」が多く、ボランティア活動などを通じて、地域コミュニティーに好ましい影響を与えているのを実感します。そのような明るい面もあるために、教義に矛盾があるとか、科学と両立しないからといって、簡単に無くせるものではありません。

(なお、これほどの作品を翻訳するのはとても大変であったろうとは思いますが、ところどころ誤訳が目につきます。読んでみてはっきりしない点は原著で確認されることをお勧めします。)
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2012年06月03日

生態進化発生学

生態進化発生学―エコ‐エボ‐デボの夜明け [大型本] / スコット・F. ギルバート, デイビッド イーペル (著); Scott F. Gilbert, David Epel (原著); 正木 進三, 竹田 真木生, 田中 誠二 (翻訳); 東海大学出版会 (刊)

原書はEcological Developmental Biologyで、まさか翻訳されるとは思っていませんでした。うれしい誤算です。

近年、エコデボとして注目されている、生態学と発生生物学の融合分野ですが、実際にどのような研究プログラムが進行しているのか(これは、必ずしも研究者がエコデボをやっているという自覚が無い場合も含め)、概観するのに極めて優れた教科書です。原書が第1版ということもあって、少し生煮えな部分、訂正が必要な部分もあるようですが、とにかくエキサイティング。エコデボに限らず、生物学の未来や今後なされるべき統合に興味のある方も必読だと思います。

ヨーロッパからアメリカに移った研究者のカメムシが変態しなくなった"paper factor"の話、双子の加齢による差異の拡大とメチル化の話、イタリアのソラマメ中毒とマラリアの話など、読み物としても優れ、また研究の実例としても重要なエピソードも多く取り上げられています。
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2012年06月01日

進歩への希望 科学の擁護

進歩への希望―科学の擁護 (1978年) [−] / P.B.メダワー (著); 千原 呉郎,...

引き続き、メダワーの著作を読んでいます。これはいくつかの講演、書評などを寄せ集めたものです。話題は、科学と文学、精神分析について、人類の遺伝的改良、医学研究所における動物実験、など。また、ワトソンの「二重らせん」に対する書評もすばらしいです。
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2012年05月05日

科学の限界

科学の限界 (地人選書) [単行本] / ピーター・ブライアン・メダウォー (著); 加藤 珪...

イギリスらしい、所々に皮肉の利いた、シャープな科学論です。メダウォー(Medawar、メダワー)はドーキンスの作品でよく紹介されているので、手に入るものは読んでおこうと思って集め始めました。
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2012年05月02日

銃・病原菌・鉄

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) [文庫] / ジャレド・ダイアモンド (著); 倉骨彰 (翻訳); 草思社 (刊)

これも大変有名な読み物ですが、最近文庫版を入手してやっと読みました。かなり面白いです。

ヨーロッパとニューギニアでこれほど文明の発達スピードが異なっていたのはなぜか?という問いに始まり、世界各地の文明の相違を、その地域の地理的条件、動植物相の違いなどによって説明しようと試みた大作です。地球上で主要作物、主要な家畜になりうるものは数えるほどしか無く、偶然にそれらを利用できた土地、例えば肥沃三日月地帯(メソポタミアを中心とする地域)は小麦、エンドウ、オリーブ、羊、山羊、中国は米、アワ、コーリャン、豚、蚕を持ち、さらにユーラシア大陸は東西に長いので、作物や家畜が伝播しやすかったため、ユーラシアの諸文明が早くに発達したということです。

私はアメリカに住んでから、七面鳥、カボチャ類(ズッキーニ、スクワッシュ)、キヌアなど、新大陸の食べ物が結構好きなので、それらの歴史も楽しめました。

新しい版では日本に関する章が追加されているらしく、その章の全訳は以下で読めます。

ダイアモンド『銃、病原菌、鉄』2005年版追加章について 山形浩生
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2012年04月02日

脳のなかの幽霊

脳のなかの幽霊 (角川文庫) [文庫] / V・S・ラマチャンドラン, サンドラ・ブレイクスリー (著); 山下 篤子 (翻訳); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)

とても有名な本で、ずっと気になっていたものですが、やっと読みました。事故などによって手足を切断された患者などにみられる「幻肢」という症状をはじめとする様々な症例と、それに基づいて発想された脳機能に関する考察を中心に構成されています。
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2012年02月22日

火星の人類学者

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF) [文庫] / オリヴァー サックス (著); Oliver Sacks (原著); 吉田 利子 (翻訳); 早川書房 (刊)

様々な脳の障害をもつ患者との交流を通して、脳の機能と、人間性の構成要素を考察しています。日本のテレビ番組にも出ていた、見た風景を一瞬で記憶して、後で克明な絵に描くことが出来る自閉症の男性の話など。大変面白く、オリバー・サックスの他の著作も読んでみたいと思いました。
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2012年01月28日

はじめに線虫ありき―そして、ゲノム研究が始まった

はじめに線虫ありき―そして、ゲノム研究が始まった [単行本] / アンドリュー ブラウン (著); Andrew Brown (原著); 長野 敬, 野村 尚子 (翻訳); 青土社 (刊)

C. elegansの研究の初期から、その人材がヒトゲノム計画に関わって行くまでの出来事を追った読み物。たいへん勉強になりました。やはり大きな志を持って研究をしないといけないなと思う反面、線虫の研究のように全く新しい分野が興るというのは現代ではあり得るのかと考えてしまいます。これから先、何か巨大な潮流が待っているとしたら、やはりゲノム科学の先にあるのでしょうか。
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2012年01月16日

偶然と必然

偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ [単行本] / ジャック・モノー (著); 渡辺 格, 村上 光彦 (翻訳); みすず書房 (刊)

本年もよろしくお願い致します。

さて、これはラクトースオペロンで有名なモノーのエッセイですが、生物と人工物の違いから説き始め、自分の研究分野を人類の思想史の中に位置づけていく、非常に壮大かつストイックなものです。その思考の鋭さに、少々息苦しさすら覚えます。

私の現在のボスはエボデボの研究者なのに、好きな論文にラストースオペロンの論文を挙げるほどで、それまで私は退屈な教科書的な研究と思っていたので、大きく考えを改めさせられたものです。確かに彼らの研究は洗練されていて美しく、その結果の投げかけたものは大きいのですが、その背景には、当時の生物学が示すべき科学的事実は何か、という確固とした思想的背景があったことに驚かされます。

古い本ですが、非常に切り口はユニークだし、研究のありかたについての示唆に富んでいて、特に若い研究者にぜひ読んでもらいたいです。
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2011年11月18日

ダーウィンの危険な思想

ダーウィンの危険な思想―生命の意味と進化 [単行本] / ダニエル・C. デネット (著); Daniel C. Dennett (原著); 山口 泰司, 大崎 博, 斎藤 孝, 石川 幹人, 久保田 俊彦 (翻訳); 青土社 (刊)

デネットの進化哲学本。生物学の研究者にとっては、おそらく彼の著作の中で最も重要なものではないでしょうか。

ダーウィンの進化論が人類の思想に与えた影響を分析し、様々な話題、進化生物学上の問題に絡めて提示しています。例えば「種」と系統樹の関係であるとか、適応主義に関する論考など。とにかく大冊ですし、読んでいると色々な考えが浮かんでは消え、なかなか読み進まなかったですが、自分の研究テーマを考える上でも重要なヒントが隠されている気がする本でした(気がするだけかもしれない)。時間のある方はぜひ。

本書から小ネタをひとつ。インプットとしてスクランブルエッグを入れて、アウトプットとして生卵を取り出す装置はどのように作ればいいでしょうか?
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2011年10月17日

自由は進化する

自由は進化する [単行本] / ダニエル・C・デネット (著); 山形 浩生 (翻訳); NTT出版 (刊)

ずっと前に読み始めたものの、これを理解するためには「解明される意識」を読んでおかねばならないと思い、その後に再挑戦してやっと読了。本書は、はたして人間に自由意志はあるのか?という問題に、ユニークな解答を提示しています。

われわれ理系の人間の多くは、人間も動物の一種であり、大腸菌、線虫、ショウジョウバエなどとおおむね同じ動作原理で動いている、と考えていると思います。そして生物の体は完全に物理学的に説明可能な物質のふるまいのみによって動いていて、意識の働きも同様である、と考えるのが自然です(つまり物質に基づかない霊魂のようなものは無い)。これは古くからある機械論と非常に近い立場だと思います。そうすると、我々の脳の活動も他の物体の振る舞いと全く同じで、宇宙の初期状態が与えられれば後は必然的に展開するシナリオ通りに動いているだけということになります。

一方で、われわれは自分に自由意志があることを前提にしてものを考えているような気がします。それが、機械論とは矛盾するように思えるにも関わらず、です。

デネットは、それは矛盾ではなくて、機械論的な世界観と自由意志は両立できると主張しているようです。そのためには、人間の意識というのは進化を経て作られてきた行動シミュレーションツールであるという視点が不可欠で、「解明される意識」や「ダーウィンの危険な思想」で述べられている内容を下敷きにしつつ、本書でさらに自由意志に関する議論に焦点を絞って論じています。予想される反論や、この手の話題にはつきものの量子力学との関係なども、丁寧に論じています。この手の話題が好きな人には、ぜひお勧めしたい本です。

ところで、山形浩生のべらんめぇ口調の独特な訳文は、私にはくだけすぎているように感じられました。
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2011年06月28日

解明される意識

解明される意識 [単行本] / ダニエル・C. デネット (著); Daniel C. Dennett (原著); 山口 泰司 (翻訳); 青土社 (刊)

かなり長い時間をかけて、やっと読了。たいへん面白かったです。

本書では、多くの人が漠然と信じている、人間の意識には中心のようなものがあって、多くの情報を取捨選択し統合してアウトプットしているという考え方を「カルテジアン劇場」と命名して批判し、そのか代わりとなる仮説として「多元的草稿」モデルというものを提示しています。たぶん研究者にとってはおなじみの、書きかけの色んなバージョンの原稿がごちゃごちゃになっている状態、これが人間の意識の状態である、と。

モデルを説明するにあたり、コンピューター、人工知能の研究成果をふんだんに取り入れ、あくまでも現代の科学と乖離しない形をとり(自然主義)、また哲学のジャーゴン(業界用語)をできるだけ排しているので、かなり可読性が高いものとなっています。多くの哲学書に比べれば、ですが。

これを読むと、やはり現代科学の最大の課題は、人間の意識、人間の思考のメカニズムを明らかにすることなのかなと思います。しかし人間の脳はなにしろ複雑すぎて、すぐに取り組むにはまだ科学的手法が十分に確立されているとはいえず、どういう個別研究をするかという大方針を立てるには哲学の力を借りないといけないのかもしれません。一方で、単純なシステムをまず完全に理解する必要があるという意味では、線虫の神経系の研究なんかも非常に重要であるという思いも強く持ちました。
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2009年12月03日

虹の解体


虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

  • 作者: リチャード ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本




ドーキンスの1998年の著作”Unweaving the Rainbow”の翻訳版で、2001年に出版されています。

メモしておきたいフレーズは数多くありますが、何と言っても、このご時世に、心に響く一節がありましたので長くなりますが引用しておきます。

しばしば狭量な評論家が質問するー科学の役割とはいったい何か、と。いま述べたことが答えだと私はいいたい。誰が書いたのかはっきりしないが、こんな逸話がある。あるとき、マイケル・ファラデーが同じ質問を受けた。科学はいったい何に役立っているのか、と。ファラデーはこう質問しかえした。「では、生まれたばかりの赤ん坊はいったい何に役立ってますか」。別に話の主人公が、ベンジャミン・フランクリンであろうが誰であろうが、この話の謂は、赤ん坊は今の時点では何の役にも立っていないけれども、未来に対しては大きな可能性を秘めているということだろう。私は、この話に別の意味を持たせることができると思う。この世に生まれた赤ん坊の役割は、確かに職を手につけて働くことであろう。しかし、すべてのものごとの判断基準をその”有用性”だけにおき、生を受けたことの有用性は生きていくために働くことというのなら、それは不毛な循環理論にしかならない。生を受けたことの意味を問うのなら、何らかの価値がそこに付与されなければならない。生きるために働くといった目的本意な説明ではなく、生きること自体に何らかの意義づけが必要である。その意義付けとは、芸術支援に税金が使われてよいとする理由にもなろうし、希少種の保存や歴史建造物の維持を正当化する理由にもなろう。野生の象や古い建物を保存するのは、そこから何らかの経済的利益が見込めるからだという輩がいるが、こういった連中に有効に反論できなければならない。科学に関してもまったく同じである。もちろん科学は利潤をもたらし、科学は役に立つ、しかし、それが存在意義のすべてではない。

科学は赤ん坊と同じで、我々の未来そのものです。新しい産業のもととなる、という意味でも、生きる希望をもたらすという意味でも。自信を持って行きましょう。
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2009年11月18日

遺伝子の川


遺伝子の川 (サイエンス・マスターズ)

遺伝子の川 (サイエンス・マスターズ)

  • 作者: リチャード・ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 単行本




ドーキンスによる読み物。原著は1994年刊行で、サイエンスマスターズという企画の第一巻なのだそうです。

ドーキンスにしてはさらっとしていて読みやすいほうです。ミトコンドリアイヴやミツバチの八の字ダンスの話など、話題は聞いたことのあるものばかりですが、切り口がおもしろいというか、その現象が真に意味するところをドーキンス風にねちっこく取り上げています。

3章で触れられている、昆虫の視覚とフリッカーに関する記述は未消化。
「また、縞模様はわれわれにとって静止した模様である。そのそばをかすめるように飛ぶ昆虫にとって、それは「フリッカー」に見え、正しい速度で明滅するストロボとそっくりに見える。」
この記述の根拠、特に昆虫とヒトの視覚の違いについてご存知の方がいらしたら教えてください。(ヒトでも、高速で移動する縞模様は明滅したり、融合したりして見えると思うのですが。視覚の仕組みと、フリッカーの出現にどのような関係があるのでしょうか。単に時間分解能の違いとも思えません。それとも、視覚の違いというより、昆虫が高速で飛行しながら物を見ている、というところがポイントでしょうか。)
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2009年05月20日

盲目の時計職人

盲目の時計職人 (単行本)
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆 (監修)
単行本: 529ページ
出版社: 早川書房 (2004/3/24)
ISBN-10: 4152085576
ISBN-13: 978-4152085573



ドーキンスの代表作の一つであるし、良く売れている本なのだと思います。ダーウィニズム擁護のために書かれているということで、内容的には、これといって引っかかるところもないのですが、相変わらず回りくどいというか、論理展開が細かいので、読んでいて疲れます。それでも確かに勉強になるから読むわけですが。やはり個々の事象なり、学問のトレンドについて深く考えて書かれているようで、基本的な概念について改めて考えるきっかけになるセンテンスに満ちています。

特に分類と分子系統について、また適応進化と分子進化の中立説の関係などへのコメントは、独断的でありながら的を射ていて面白かったのですが、原著が1986年に書かれたことを思うと、これらの分野の勃興期にすでに今日とかわらない結論めいたところに到達しているのに感心しました。
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2009年05月15日

遺伝子には何ができないか

遺伝子には何ができないか (単行本)
レニー モス (著), Lenny Moss (原著), 長野 敬 (翻訳), 赤松 眞紀 (翻訳)
単行本: 346ページ
出版社: 青灯社 (2008/02)
ISBN-10: 4862280196
ISBN-13: 978-4862280190



遺伝子概念に関する論考です。遺伝子という概念は、遺伝子Pという概念と遺伝子Dという概念がつぎはぎされたもので、その意味をよく考えろ、という主張のようですが、あまりピンと来ませんでした。遺伝子の実体がかなり正確に把握されつつある現在、あえてその概念の成立過程に立ち返って、複数の方向から到達した概念であることを示すのにどんな価値があるのか、疑問です。もっと言うと、概念をもてあそんでいるだけのように思えます。

がんについての論考もあり、興味深い部分もあったのですが、概念を考え直すばかりで前に進んでいかないようなもどかしさも感じました。例えば、がんは細胞の病気か、組織の病気か、などという問いかけには、現実的な意味があるのか?細胞自体が異常な特徴を示す場合もあるでしょうし、そうでなくて組織レベルでのみ異常がみられるケースもあるでしょう。そもそもここで言う「異常」とはどのレベルの問題を指しているのか?分裂を続けることさえできれば「正常」?何かとても生産的でない議論に付き合わされた気分です。
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2009年04月10日

人間の測りまちがい

人間の測りまちがい〈上〉―差別の科学史 (河出文庫) (文庫)
Stephen Jay Gould (原著), 鈴木 善次 (翻訳), 森脇 靖子 (翻訳)
文庫: 376ページ
出版社: 河出書房新社 (2008/6/4)
ISBN-10: 4309463053
ISBN-13: 978-4309463056



グールドのリベラルな側面が全開の本作。文庫化されたので読んでみました。

つまるところ、学問の世界で主流派である北ヨーロッパ系の人々が「他の地域の人たちがいかに知的に劣るか」ということを示すために、頭蓋の容積を測ったり、IQを考案して広範な調査を行ったりした、ということです。そして、それらの研究の結果は意図的に、あるいは無意識のうちに歪められていたというお話です。外れ値を意図的に外したり、データのグルーピングを工夫(?)したり、手法はいろいろですが、グールドは時折生データも参照しつつ批判をしています。

舞台は主にアメリカであり、自由の国を標榜しつつも、いかに過去に人種差別的な移民政策を行ってきたか、そしてそれが研究者や政治・行政による「善意」によって行われてきたか、考えさせるものです。現代からみるとナンセンス、滑稽にすら見える事例もありますが、それもグールドの狙いなのでしょう。

多変量解析など統計学の歴史が、優生学と不可分であることもわかり、統計学のマメ知識としても面白いかと。しかし、もう少し統計の中身について突っ込んだ解説を加えてもよかったのではないかとも思います。
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2009年03月24日

ニッチ構築

ニッチ構築―忘れられていた進化過程 (単行本)
F.John Odling Smee (著), 徳永 幸彦 (翻訳), 佐倉 統 (翻訳), 山下 篤子 (翻訳)
単行本: 400ページ
出版社: 共立出版 (2007/8/31)
ISBN-10: 4320056477
ISBN-13: 978-4320056473
発売日: 2007/8/31



Lewontinの古い論説などを漁っているうちにたどり着いた本。生物は遺伝によって形質を次世代に渡していくけれど、同時に環境にも働きかけ、環境を改変し、その環境をも次世代に引き渡すことができる。いってみれば当たり前のことですが、著者らがそれをきちんと理論化し、研究プログラムに取り込んできたことが重要なのでしょう。

私が取り組んでいる(と思っている)分野、エヴォデヴォ(Evo-Devo)では、いま、明らかに、生態学との接点を模索していて、特に近縁種間での形質の進化を扱う場合には、それぞれの種の置かれている環境の違い、あるいはニッチの違いというものが決定的な要因になっていると思われます。ここの形質が、どのような選択を受けたことによってそうなっているのか?本書で論じられているように、環境は決して不変のものではなく、生物が働きかけることによって変わりうる。そして、環境側から生物へのフィードバックもあることによって、双方が変化していく、と。

とすると、従来の固定的なニッチの考え方は捨てなければならないのか、あるいは、だいたいの場合は、ニッチを固定したものと(近似として)考えて差支えないのか、研究プログラムによってケースバイケースなのでしょう。とりあえず、覚えておくべき概念だと思いました。
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2009年02月20日

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 02月号

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2009年 02月号 [雑誌]
出版社: 日経ナショナルジオグラフィック社; 月刊版 (2009/1/30)
ASIN: B001P83QTI
発売日: 2009/1/30


スーパーのレジの隣にナショナルジオグラフィックがあったので、パラパラ見てみると、見覚えのあるヒゲもじゃの人が、キリンにすりすりしている写真が載っている…最近マスコミに出ずっぱりのボスです。ダーウィンの生誕200年スペシャルということで、現代の進化生物学者の一人として紹介されているのです。上のリンクは日本語版ですが、たぶん同じ記事が出ていると思います。

また、Discoverのダーウィン特集号にもインタビュー記事が出ています。こちらでは、なぜかフクロウのぬいぐるみを抱えた写真と、スープにハエが入ってしまって困っている写真を掲載されていて、ちょっとカメラマンのセンスを疑いますが…。(もちろんラボ内では大ウケです。)

某有名トークショーにも出ることが決まったそうで(日本で言うと、さんまのまんまとクローズアップ現代を混ぜたような…)、ここしばらくは、時の人ですね。

地元の新聞にも出ているようです。以下のリンクは、インタビュー動画つき。よりによって、ラボでいちばんキタナイ一角で撮影してますが…。実験室っぽくて良い?

Evolutionary biologist Sean Carroll honors Darwin, other naturalists (with video)
posted by シロハラクイナ at 09:22| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする