生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2008年05月02日

Materials for the Study of Variation

Materials for the Study of Variation Treated with Especial Regard to Discontinuity in the Origin of Species. William Bateson (1894)

Google Book Search上の本を紹介するのは初めてです。上記リンクから全文を読むことができます。そもそもGoogleが各地の図書館と提携して蔵書をスキャンして公開する、というニュースを聞いた時、??著作権はどうするんだ??と思ったものですが、始まってみると理屈は簡単で、著作権が切れた古い書籍からどんどん公開していくということだったのですね。新しい本はちょっとしか見られず、購入サイトへリンクで誘導する、と。これで利益も確保されるし利用者にとってもありがたいサービス。

この本は、われらがボスの「From DNA to Diversity」の導入でも紹介されている古典的名著です。著者のBatesonは遺伝学の創始期における偉人で、"Getetics"という言葉を作ったことでも有名であります。本書では、自然界における様々な奇形、特に体の一部がほかの部分に置換してしまう「ホメオティック変異」を網羅的に収集し、そこから読み取れる、生物の形が作られる仕組みについて議論しているものです。百年以上前にホメオティック変異を研究していたとは、なんともすごい先見性です。

なんでこんな古いものを読んでいるかというと。ウィスコンシン大学の図書館は蔵書がすごいため、日本では手に入りにくかった古い文献が読み放題、ということで、昆虫の翅の起源に関する古い議論をたどっていたのですが、その中に、脚が翅に置換している変異体の話題があり、しかしどうしても元論文にたどり着くことができませんでした(のちに、これは引用ミスで、苗字と名前を逆にして引用されていたためとわかるのですが)。

そこでBatesonがすごい変異体コレクション本を書いていたことを思い出し、検索してみると、なんとGoogleのおかげで全文が読める。そして無事に原著にたどり着けたうえに、その標本をBateson自身も自分で調べており、図まで添えられていたのでした(148p)。Batesonおそるべし。

この標本はマダラガの一種の成虫ですが、左後脚が翅に置換しており、したがって左の翅が3枚あるように見える、実に珍しい変異体です。これをもって脚と翅が共通の起源を持つものだ、というのは早計な議論ではありますが、現代の知識に照らせば、脚と翅ではパターニングに使われる遺伝子がいくつも共通しているので、何か間違いがあれば脚を作るべき所に翅ができてしまうのも、まぁ考えられなくはないですね。しかしこのような変異体はめったに見られないことから、点突然変異のような単純な変異で容易にできるものでもなさそうです。

このように、古い図板を眺めているだけでも様々なイメージが広がります。カラー写真の豊富な新しい本もいいですが、古い本には独特の雰囲気があっていいですね。


posted by シロハラクイナ at 12:05| シカゴ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(洋書) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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