生物学・科学に関する雑感。

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2010年04月04日

The evolution of gene regulation underlies a morphological difference between two Drosophila sister species.

The evolution of gene regulation underlies a morphological difference between two Drosophila sister species.
Jeong S, Rebeiz M, Andolfatto P, Werner T, True J, Carroll SB.
Cell. 2008 Mar 7;132(5):783-93.

D.yakuba-D.santomeaの体色の話を連続して書こうと思っていたのですが、長く中断してしまいました。

さて、Carbone et al. 2005によって、いくつかのQTLが体色の違いをもたらしていることがわかったのですが、そのうち、オスでもっとも効果の大きいQTLの正体はtanという遺伝子のcis制御領域であったというのがこの論文の主旨です。

yakuba、santomeaおよび両者の雑種を用いて体色関連遺伝子のin situを行い、tanの発現が変わっている事を見つけました。tanとは、最近クローニングされた、メラニン合成系の酵素遺伝子の一つです。そしてyakuba由来のX染色体を持つオスでは、yakuba様の発現パターン(腹部末端で強い)を示す事から、原因となる遺伝的変異はX染色体上にあると考えられました。tan自体もX染色体上にあり、またCarbone et al. 2000でもtan遺伝子近傍にQTLがあることから、この時点で、tanのcis領域が原因である事が強く疑われます。

tan近傍のゲノム領域をEGFPにつなぎレポーターアッセイをすることで、腹部末端での発現をもたらすエンハンサーが同定されました。このエンハンサーとtan遺伝子全体を含む領域を、pエレメントでsantomeaに導入すると、腹部末端に着色が見られ、yakubaに近い表現型になりました(完全ではありません)。

さらに、santomeaでは、tanの腹部末端エンハンサーが機能を失っているのですが、その機能欠失は、santomeaの地域系統ごとに独立して何度か(おそらく3度)起こっているようです。というのは、系統により異なった塩基に欠失が見られ、そのいずれでも、エンハンサー機能が失われているからです。

このように、形質を良く見た上で、いきなりcandidate geneで正解を当ててしまうのがC研の真骨頂です。いまだにQTLの解像度には限界があり、普通は数百遺伝子を含む領域くらいにしか絞り込めないようで、そこから具体的な変異にまでたどり着くには何らかの工夫が必要なようです。そこでどういう工夫をするかが研究者の好みの現れるところで、うちのボスはいきなり池に手を突っ込んで鯉をつかみ取るような荒技を好みます。
posted by シロハラクイナ at 08:38| シカゴ ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほどー。
でもさすがに突っ込んだ手が空振りってこともあるんですよね?

それから、いきなりcandidate geneに行くためには、レポーターアッセイと遺伝子導入にどのくらいの労力がかかるのかってのも大事な点だと思うんですが、どうなんでしょう?
ハエだと1年くらいでいく?
Posted by あさの at 2010年04月04日 11:49
そうだね。ふつうレポーターアッセイ(エンハンサーバッシングともいう)はPCRで領域を増やすところから遺伝子導入、結果を見るまでで2ヶ月くらいかな。いくつもの系統を平行してやるけど、この論文の場合は、santomeaっていう珍種に対して遺伝子導入しているので、もろもろの苦労を含めて1年くらいかな。

なぜだかcandidateでアタリが出ないことはあんまりなくて(カンが鋭すぎる?)、問題は、主要なQTLをすべて見つけられるわけではないことかな。その辺の周辺事情も含めて、次の論文に続いていきます。
Posted by シロハラクイナ at 2010年04月04日 12:43
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