Caterpillars evolved from onychophorans by hybridogenesis
Williamson DI.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Aug 28. [Epub ahead of print]
タイトルを見ただけで絶句してしまいました。チョウの幼虫は、昆虫の成虫とは起源が別で、カギムシなどの別の動物との交雑によって取り込まれた形質だ、という仮説。もう仮説と呼ぶのが不適切なぐらいの超珍説です。エイプリルフール特集かと思ったけどそうではないし、まじめに書いたのだとすればかなりエキセントリックな著者なのでしょう。
内容もずさんで、笑いつつも悲しくなってくるほどの代物です。どうやってPNASに載ったかというと、いわゆる"Communicated by ~"という枠で、要はアカデミーの会員のコネで通したとのこと(なお、この枠は、もうすぐ無くなる予定。)そしてそのアカデミー会員は、…やっぱりあの方でした。エキセントリックな方たち同士、仲が良いようです。
この論文をどのように読めば良いかは、以下の記事によくまとめられていると思います。PNASに掲載されるまでに、7つのジャーナルにリジェクトされたとか。
“Bigwig” ushered “nonsense” paper into top journal, say scientists
生物学・科学に関する雑感。
現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中
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雑誌の権威付けなど何ほどのものでもないし、Natureにも怪しい論文はたくさん載るし、目くじらを立てるほどのことでもないのかもしれません。
しかしこういうものが出てくると、ほかにも査読の意味とか、自ら身を引くべき時期とか、様々な問題を考えさせられます。歴史に刻まれる迷論文になりそうですね。
私が直接に、あるいは間接的に聞いた話では、アカデミーの会員の人たちは自分や身内にも科学的な意味で厳しいので、"Communicated by~"だったとしても、多くの場合、高い質が保たれているように思います。彼らにとっては、この枠が無くなったところで堂々と"Edited by~"で通せばいいわけですから問題ないでしょう。
ジャーナルの役割はすでに、印刷して配る、というものから「論文の格付け機関」にシフトしていると思うので、その格付けの妥当性に疑問符が付くような制度はやめたほうがいいですね。
と、かたいことを言いつつも、けっこう楽しんでいる私です。