生物学・科学に関する雑感。

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2006年02月08日

Evolution of a polyphenism by genetic accommodation.

Evolution of a polyphenism by genetic accommodation.
Suzuki Y, Nijhout HF.
Science. 2006 Feb 3;311(5761):650-2.

気になっていたこの論文。いかにもNijhoutらしいホルモンと閾値と進化の話ですね。既にG-hopさんによる詳しい解説があります。

何点かメモ。
Genetic accommodation: 遺伝的適応、と訳していいのでしょうか?少なくともScienceの日本語サイトではそのように訳していますね。どうやらこの論文ではGenetic accommodationを通じて表現型多型が進化しうるということを示したようなのですが、genetic assimilation: 遺伝的同化との概念的な違いがいまひとつよく解らないです。

今回観察された現象は、単純化して言えば、

タバコスズメガ野生型の幼虫ではJHレベルが潜在的な閾値よりもずっと高いために表現型に多型が現れない(すべて緑色)。

black系統(黒化型)ではJHレベルが低いので、熱ショックやJHA塗布によってJHレベルを上げてやると緑色の個体が出る場合がある。

緑色の個体を人為的に選抜し続けると、熱ショックなしでも高い生育温度では緑色の個体が出るようになる。

ということですね。
そして、進化学的な考察としては、

JHの分泌や受容にかかわる遺伝的多型は、野生型では表現型に現れないために選択を受けずに維持あるいは蓄積され、ある突然変異(ここではblack)が生じることではじめて体色に多型をもたらしうる遺伝的多型になる。その形質が選択にさらされることによって新しい表現型多型が進化した。このような過程をGenetic accommodation: 遺伝的適応と呼ぶ。

ということですね(これであってるでしょうか?)
さらに少し前に話題になったhsp90とのアナロジーで、ホルモンによる制御機構も、遺伝的変異にとってのcapacitorとなりうる、と著者達は言っています。

概念的な部分はやっぱり難しいですね。West-Eberhard (2003)(←オウムが表紙の、有名な分厚い本)を読まないとダメか…。
posted by シロハラクイナ at 00:57| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Genetic accomodationの定義が今回の論文で提案された進化モデルのどこまでをカバーするのか私にはわかりませんでした。黒色変異体の出現の段階までは含まれないのではないかと想像するのですが...。
Posted by g-hop at 2006年02月08日 13:24
コメントありがとうございます。確かに、閾値をまたぐ形質が選択を受けて多型を獲得するあたりを指しているようですよね。どうもWest-Eberhardが表現型進化の機構として重視している概念らしいのですが…。ちょっと勉強してみます。
Posted by シロハラクイナ at 2006年02月08日 13:32
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