龍樹 (講談社学術文庫)
中村 元 (著)
文庫: 459ページ
出版社: 講談社 (2002/06)
ISBN-10: 4061595482
ISBN-13: 978-4061595484
ちょっと宗教の話を。
実験がうまくいかなくてもケロッとしている私を見て、NY育ちのイラン系アメリカ人ポスドクT氏が、「その平静さは、東洋思想に関係しているんじゃないか。禅か?」と言い出しました。T氏に言わせれば、彼を含め他の人は、実験が不調だとかなりはっきり態度に出るが、私はそうではない、と。単に、日本人だから感情表現が控えめなだけのような気もしますが。
しかし、思想的というほどのものではないけれど、努力をするだけしてして、あとの結果はなるようにしかならないと思っています。もっと一般的なことを言えば、そもそも人は、それぞれに与えられた環境の中で本人なりにベストの選択をしているわけで、そしてその選択も、生まれつきの素養と、本人のこれまで過ごしてきた環境に依存しています。つまり自分というのはパッシブなもので、どんな行いにも、その結果にも、究極的な意味での因果的責任をもたない(というか自分という実体が幻想である)ということです。どんなひどい失敗も、「そうなる運命にあった」というだけです。こういう考え方を東洋思想のなかに探すとすれば、仏教の中観派(ちゅうがんは)の考えに近いと思います。
評論家の宮崎哲弥氏は自分の思想は中観派だとして、以下のように述べています。
「『自分』とは独立的実体ではなく、他の『流れ』に依存しながら生起し、一時すらも留まることなく流動している無数の『流れ』の、たまさかの『淀み』に他ならぬ」
[宮崎哲弥(wikipedia)]
中観派の開祖とされるのが龍樹(ナーガールジュナ、西暦200年前後のインドの人)で、大乗仏教の祖とも言われます。仏教を哲学的に突き詰めた人の一人のようです。その考えは、一切は空である、というもので、現代風に噛み砕けば、すべての存在は、関係性のなかで成り立っていて、個別的な存在は重要ではない、ということになるでしょうか。
このような考え方は、現代的にブラッシュアップすれば、科学との相性も悪くないのではないでしょうか。ちなみに私は仏教徒というわけではなくて、実家は神道です。しかし仏教哲学はなかなか深いというか、そこから学ぶべきものは多いと感じています。
生物学・科学に関する雑感。
現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中2009年05月17日
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