生物学・科学に関する雑感。

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2012年08月27日

A comparative analysis of the evolution of imperfect mimicry.

A comparative analysis of the evolution of imperfect mimicry.
Penney HD, Hassall C, Skevington JH, Abbott KR, Sherratt TN.
Nature. 2012 Mar 21;483(7390):461-4. doi: 10.1038/nature10961.

擬態に関する話。ハナアブは毒針を持たないのに、ハチに擬態することで鳥による捕食から逃れていると言われています。しかし、一部の種はハチに良く似ているのに、ちょっとしか似ていない種もいます。似ている方が捕食されにくいのなら、なぜちょっとしか似ていない種がいるのでしょうか。

これに関する仮説はいくつもあって、複数のモデルの中間に似せているからだとか、ヒトが見て似ていなくても鳥から見たら似ているだとか言われてきました。しかしこれらの仮説は、この論文の形態計測/ヒトによる類似性の評価/ハトによる類似性の評価のデータによって明確に否定されています。また、「血縁淘汰によって似すぎた擬態は不利になる」という説も、その仮説から予想されるはずの、個体数の多さと擬態の完成度の(負の)相関が見られなかったことにより、退けられています。

結局、ハナアブの種ごとの体サイズと擬態の完成度に正の相関が見られたことにより(系統関係を考慮した補正をしてもしなくても相関あり)、小さい種では捕食圧が低いために擬態のメリットが低いことが、擬態の不完全さの原因ではないかと結論しています。

もともと他の仮説は根拠が弱かったと思うので、この結論は妥当だと思います。しかし小さい種で擬態のメリットが低くても、よりモデルに似ていた方が捕食圧はさらに下がるわけですから、そうなっていないということは逆方向の淘汰圧…つまり擬態することに何かデメリットがあるはずです。それが、例えば、色素をつくるためのコストなのか、配偶相手の認識に支障がでるのか、その拘束の正体に興味があります。
posted by シロハラクイナ at 16:29| シカゴ ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする