生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2011年11月18日

ダーウィンの危険な思想

ダーウィンの危険な思想―生命の意味と進化 [単行本] / ダニエル・C. デネット (著); Daniel C. Dennett (原著); 山口 泰司, 大崎 博, 斎藤 孝, 石川 幹人, 久保田 俊彦 (翻訳); 青土社 (刊)

デネットの進化哲学本。生物学の研究者にとっては、おそらく彼の著作の中で最も重要なものではないでしょうか。

ダーウィンの進化論が人類の思想に与えた影響を分析し、様々な話題、進化生物学上の問題に絡めて提示しています。例えば「種」と系統樹の関係であるとか、適応主義に関する論考など。とにかく大冊ですし、読んでいると色々な考えが浮かんでは消え、なかなか読み進まなかったですが、自分の研究テーマを考える上でも重要なヒントが隠されている気がする本でした(気がするだけかもしれない)。時間のある方はぜひ。

本書から小ネタをひとつ。インプットとしてスクランブルエッグを入れて、アウトプットとして生卵を取り出す装置はどのように作ればいいでしょうか?
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2011年11月17日

High-resolution melting curve analysis for rapid detection of mutations in a Medaka TILLING library.

High-resolution melting curve analysis for rapid detection of mutations in a Medaka TILLING library.
Ishikawa T, Kamei Y, Otozai S, Kim J, Sato A, Kuwahara Y, Tanaka M, Deguchi T, Inohara H, Tsujimura T, Todo T.
BMC Mol Biol. 2010 Sep 15;11:70.

メダカのTILLINGに、融解曲線解析によるスクリーニングを組み合わせたもの。この方法により、スクリーニング自体は非常に簡便かつ高速になっていると思います。分子生物学の部分に関しては、ちょっとこれ以上の高速化は思いつかないくらいです。

Non-modelのハエは、状況がメダカに似ていると思うので(純系は作れる、バランサーはなし、世代時間は数十日、ゲノム配列はある、トランスポゾンは入る)、この方法を使えないかと思っています。違いは、ハエは系統を凍結保存できないので、変異が入った染色体が失われないように維持するのが難しい点でしょうか。
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2011年11月16日

Target-selected mutant screen by TILLING in Drosophila.

Target-selected mutant screen by TILLING in Drosophila.
Winkler S, Schwabedissen A, Backasch D, Bökel C, Seidel C, Bönisch S, Fürthauer M, Kuhrs A, Cobreros L, Brand M, González-Gaitán M.
Genome Res. 2005 May;15(5):718-23.

TILLINGをショウジョウバエに応用した例のひとつ。

彼らは、Cel-Iという、DNAのヘテロ2本鎖を切断する酵素(セロリに由来するらしい)を使い、ヘテロ接合を検出しています。ハエの場合は、種子や精子を凍結保存したりはできないので、変異を入れたライブラリーをいかに保持するかがポイントですが、彼らはバランサー染色体と、熱ショックでアポトーシスを誘導できるhs-hidを使って、比較的簡便に系統を維持する方法を用いています。しかしバランサーを使うと、多くのSNPsを持ち込むことにもなり、それをどのように突然変異と見分けるかが重要になります。Cel-Iを用いた方法なら、ゲル上で突然変異を含むすべてのSNPsを可視化できます。とはいえ、今の時代だったら、すべてキャピラリーシークエンスしたほうが簡便ですかね。

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2011年11月15日

Targeted screening for induced mutations.

Targeted screening for induced mutations.
McCallum CM, Comai L, Greene EA, Henikoff S.
Nat Biotechnol. 2000 Apr;18(4):455-7.

化学物質などでランダムに起こした突然変異を、特定のゲノム領域のみに限定してスクリーニングすることで、逆遺伝学に近い効果を得る方法。TILLING (Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)と呼ぶそうです。この論文が原法で、DHPLCを使ってヘテロ接合を検出していますが、その後、さらに様々なスクリーニング法が開発され、多くの栽培植物やモデル生物に応用されています。明日以降に続きます。
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2011年11月12日

TPPはまったく話題になっていない

アメリカでは、少なくともここマディソンでは、TPPは全く話題になっていませんし、こちらのニュースサイト、テレビなどでも全く聞いたことがありません。もちろん専門家や国際情勢にとても詳しい人は知っているのでしょうが、それでも数多くある政治課題のひとつに過ぎないと思います。日本での報道の多さと比べると対照的だと思います。

アメリカにとってTPPはどういう意義を持っているのか、に関しては、大前研一氏の指摘が納得のいくものです。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20111107/289750/?ST=business

また経済の視点から見たTPPの利点、または反対派の根拠の無さについては、池田信夫氏のコラムが有名だと思います。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/

自由貿易の問題は、グローバリズムをどう考えるかという問題でもあります。TPPがどうなろうとも、世界中で同一労働同一賃金に向かって行く流れは止められませんし、それを制限することにどのような理論的、道義的根拠を与えることができるのか私にはわかりません。
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2011年11月06日

Madの名前の由来

そういえば、Mad (Mothers against dpp)の名前の由来について、長いこと疑問に思っていました。なぜmotherではなくて mothers、ofでなくagainstなのかと。

先日、何気なく同僚に訊いたところ、あっさり教えてもらうことができました。Mothers against drunk drivingという社会運動をもじっているのだとか。それで裏をとろうと調べてみると、確かに「Imaginal Discs」にも同様の記述がありました。

Imaginal Discs: The Genetic and Cellular Logic of Pattern Formation (Developmental and Cell Biology Series) [ハードカバー] / Lewis I. Held Jr (著); Cambridge University Press (刊)
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2011年11月05日

Phosphorylation of Mad Controls Competition Between Wingless and BMP Signaling.

Phosphorylation of Mad Controls Competition Between Wingless and BMP Signaling.
Eivers E, Demagny H, Choi RH, De Robertis EM.
Sci Signal. 2011 Oct 11;4(194). pii: ra68. doi: 10.1126/scisignal.2002034.

Scienceの数少ない姉妹紙であるScience Signalingに掲載された論文。UWでは購読していないので直接は読めないのですが、図書館に複写依頼をしたらその日のうちにpdfがもらえました。紙媒体の雑誌であっても、複写以来をすると電子複写でpdfを送ってくれるのでかなり高速です。このシステムはすばらしい。

この論文は、BMPシグナリングの転写因子であるMad (Mothers against dpp)が、実はWntシグナリングにも関与しているという話です。Madがリン酸化されるとBMP、リン酸化されないとWntの方で働くということで、BMPとWntが拮抗的に働くことが説明できるというものです。これ自体は、けっこう衝撃的なモデルです。

しかし著者らも認めているように、Madの過剰発現はWntシグナリングの機能喪失に似た表現型を示すというデータ(以下の論文)と矛盾するし、何かまだ見落とされている因子があるような気がします。続報に大いに期待しています。

Inhibition of Drosophila Wg signaling involves competition between Mad and Armadillo/beta-catenin for dTcf binding.
Zeng YA, Rahnama M, Wang S, Lee W, Verheyen EM.
PLoS One. 2008;3(12):e3893. Epub 2008 Dec 9.
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