生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2011年07月11日

なぜ新ジャーナルはCellやNatureを超えられないか

このあいだ、来年創刊される新ジャーナルについて、私は応援したいけれども、そのステータスはCellやNatureを超えないだろうと書きました。そう考える理由を書きたいと思います。

1. 投稿する側の心理
もしもあなたがCellもしくはNatureに載るくらいのデータを持っていたらどうするか?将来的にどんなステータスになるかわからない新ジャーナルに投稿するでしょうか?履歴書にCellやNatureがあれば、それがベストでしょう。仮に新ジャーナルがCellやNatureと同程度のステータスになったとしたって、同格ならば問題ないです。一番最初から新ジャーナルに投稿する人がいるとしたら、新ジャーナルのほうが将来は高いステータスになると踏んでいる人か、CellやNatureを恨んでいるPIなどが考えられますが、そう多くはないでしょう。創刊直前には、有名PIのもとに「ぜひ投稿してほしい」という案内が行くでしょうが、筆頭著者などの若者の将来がかかっていますから、いくら新ジャーナルを応援したいとしても、はじめから新ジャーナルに、という決断はしにくいでしょう。自分が筆頭で、すでに一流ジャーナルに沢山論文がある人は、バラエティーをだすために新ジャーナルに、ということも考えられますが、これも多くはないでしょう。

2. では、どんな原稿が集まるか
なかなかいいけれども、CellもしくはNatureに載せるのは難しそうな原稿、もしくはリジェクトされた原稿が集まるでしょう。そうすると、Cell姉妹紙、Nature姉妹紙くらいのレベルの原稿が集まるのではないでしょうか。まさにこういうことが起こったのがPLoS Biologyの創刊のときだったと思います。今回も同じことが起こるでしょう。

3. 最初から、トップをとるにはどうしたらいいか
この新ジャーナルがトップを採るためには、入念に作戦を練るべきです。前記のように、たぶん普通に原稿を集めてはだめです。有名PIに、ご祝儀で先端的なレビューを書いてもらい、レビューをたくさん載せる。オリジナル論文は、極端に数を抑制し、ずばぬけたものだけを載せることです。また、メソッドやプログラムに関する論文も、特に厳選して載せるといいでしょう(まれに数千回引用されるお化け論文になる可能性があるため)。これを2年ほど続けると、研究者のコミュニティーのなかで、非常に優れた論文しか載らない雑誌として認知され、また高いIFが付くでしょうから、これでやっと一流紙と互角のスタートが切れるでしょう。

4. 他にも、レベルを下げる要因が
新ジャーナルを立ち上げる大義として、現在の一流紙は査読者による書き直しや追加実験の要求がきつすぎることが挙げられています。裏を返せば、新ジャーナルではこのような要求が弱まるということで、著者にとっては楽になるものの、論文の質の低下につながるでしょう。大義を守りつつ、トップをとるのはとても難しいミッションになるでしょう。
posted by シロハラクイナ at 06:23| シカゴ ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月09日

Multiplexed shotgun genotyping for rapid and efficient genetic mapping.

Multiplexed shotgun genotyping for rapid and efficient genetic mapping.
Andolfatto P, Davison D, Erezyilmaz D, Hu TT, Mast J, Sunayama-Morita T, Stern DL.
Genome Res. 2011 Apr;21(4):610-7. Epub 2011 Jan 13.

同じグループからもう一本。読んでみると、確かに技術的に十分に可能で、そういう意味では驚きはないのですが、とにかくものすごい利点の多い次世代シーケンサーを使ったマッピングの方法です。これを使えばQTLマッピングがものすごい高速でできるうえ、手間も少ないし、レゾルーションが低ければサンプルを増やすのも簡単そうです。

こうなってくると、自分の扱っている種でもやりたいですが、近縁種のどれとも今のところ交配できないので、そこをとにかく乗り越えないと。
posted by シロハラクイナ at 01:13| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月07日

Morphological evolution caused by many subtle-effect substitutions in regulatory DNA

Morphological evolution caused by many subtle-effect substitutions in regulatory DNA.
Frankel N, Erezyilmaz DF, McGregor AP, Wang S, Payre F, Stern DL.
Nature. 2011 Jun 29;474(7353):598-603. doi: 10.1038/nature10200.

DS研、最近好調みたいです。例の、Drosophila sechelliaの幼虫の肌がすべすべ(trichomeと呼ばれる微少突起が少ない)なのはいかなる進化的変化によるかという問題で、shavenbabyという転写因子をコードする遺伝子のcis制御領域の中でも、いよいよ、原因となる塩基の変異にまで踏み込んだ内容です。
posted by シロハラクイナ at 02:38| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月01日

アビエイター

アビエイター 通常版 [DVD] / レオナルド・ディカプリオ, ケイト・ブランシェット, ケイト・ベッキンセール, アレック・ボールドウィン, イアン・ホルム (出演); ジョン・ローガン (脚本); マーティン・スコセッシ (監督)

先日書いた新ジャーナルのスポンサーであり、私の雇い主でもあるHoward Hughes Medical Instituteは、世紀の大富豪Howard Hughesの遺産を基に運営される財団です。もともとは税金対策ための財団でしたが、彼の死後、遺産の多くを受け継ぎ、全米最大の医学研究財団となりました。日本円換算で毎年400億円くらいを拠出しているらしいですが、それでも元本が増え続けているという、まさに巨万の富を持つ財団です。そんな彼の人生を描いた映画が、ディカプリオ主演のアビエイターです。末端の従業員として、見ておかねばと思っていたのですが、ついに先日、DVDを購入して見ることが出来ました。特に飛行機好きにはお薦めできます。
posted by シロハラクイナ at 00:00| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映像作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする