生物学・科学に関する雑感。

現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中


2011年06月30日

Impact Factor 2010 (インパクトファクター 2010)

さて、今年も新しいインパクトファクター(IF)が発表されました。ざっと見たところ、あまり目立った変化はありません。2年目のPLoS ONEがほぼ同じ数値を保っているのが良いニュースでしょうか。

有名ジャーナル編
Nature 36.101 増
Cell 32.401 微増
Science 31.364 増
PLoS Biol 12.469 減
Curr Biol 10.025 微減
Proc Natl Acad Sci USA 9.771 微増

発生関係
Dev Cell 13.946 微増
Genes Dev 12.889 回復
Development 6.898 減
Dev Biol 4.094 減
Evol Dev 3.075 微減
Mech Dev 2.958 増
Dev Dynam 2.864 変わらず
Int J Dev Biol 2.856 増
BMC Dev Biol 2.781 減
J Exp Zool B 2.373 減
Dev Growth Diff 2.284 変わらず
Dev Genes Evol 2.008 微減

昆虫関係
Insect Biochem Mol Biol 4.018 昨年初の3越えだったのに、なんと今年は4越え。
Insect Mol Biol 2.669 微増
B Entomol Res 1.909 増
Insectes Soc 1.425 微減
Entomol Sci 0.686 微増

その他の優良ジャーナル
Proc Roy Soc B 5.064 増
PLoS One 4.411 微増
BMC Genomics 4.206 増
FEBS Lett 3.601 微増
Naturwissenschaften 2.250 微減
Zoomorphology 1.800 微増
J Morphol 1.773 微増
J Exp Zool A 1.500 微増
Zool Sci 1.087 回復
posted by シロハラクイナ at 01:00| シカゴ ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月29日

来年の夏に新しい生命科学ジャーナルが創刊される

たぶん研究者コミュニティーにとっては大きなニュースだと思うのですが、Howard Hughes Medical Institute, Wellcome Trust, Max Planck Societyが中心になって、新しい生命科学ジャーナルを創刊するということです。最高のジャーナルを目指し、オープンアクセス、少なくとも最初の数年は掲載料も取らないということです。

Three Biomedical Funders to Launch Open Access Journal (Science)

創刊のモチベーションになっているのは、トップジャーナルでは科学者でない人間によって編集が行われ、採否の決定権は編集者にあるものの、科学的妥当性を巡ってレビュワーと何度もやりとりするために査読が長引き、何度も何度も修正やデータ追加を要求されることに対する不満があるようです。

似たような経緯で創刊されたPLoS Biologyは、生命科学誌のトップであるCellを喰ってしまうほどにはならなかったし、前にも書いたように著者から掲載料を取るモデルで経営的に行き詰まり、中位ジャーナルであるPLoS ONEを創刊することで持ち直しましたが、今となっては圧倒的論文数を持つPLoS ONEのほうが主役になってしまった感があります。(例えば、2008-2009の論文数は、PLoS Biology 214に対し、PLoS ONE 6714です。実に30倍以上。)

今回の試みの新しい点は、この3つの母体が圧倒的な資金力を持つことで、正直なところ、ジャーナルが赤字だろうとまったく構わないのでしょう。なので、査読者にギャラを払うという噂まであるようです。

Natureは相変わらずこの手の動きには批判的で、内部のライターを使って「ビジネスモデルが見えない」と書かせていますが、今回の動きは営利目的ではないので、まったく的はずれでしょう。PLoSのときには、批判的な割にはNature CommunicationsやScientific Reportsなどを創刊して、対抗意識まるだしでしたが、さて今回はどうなるでしょうか。

Three major biology funders launch new open access journal, but why exactly?

私個人的には、やっぱりCellやNatureを喰うところまでは行かず、PLoS BiologyやCurrent Biologyあたりと一緒に団子になると予想しておきます。でも、もしも本当にトップを奪ったら快挙なので応援したいです。
posted by シロハラクイナ at 04:45| シカゴ ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月28日

解明される意識

解明される意識 [単行本] / ダニエル・C. デネット (著); Daniel C. Dennett (原著); 山口 泰司 (翻訳); 青土社 (刊)

かなり長い時間をかけて、やっと読了。たいへん面白かったです。

本書では、多くの人が漠然と信じている、人間の意識には中心のようなものがあって、多くの情報を取捨選択し統合してアウトプットしているという考え方を「カルテジアン劇場」と命名して批判し、そのか代わりとなる仮説として「多元的草稿」モデルというものを提示しています。たぶん研究者にとってはおなじみの、書きかけの色んなバージョンの原稿がごちゃごちゃになっている状態、これが人間の意識の状態である、と。

モデルを説明するにあたり、コンピューター、人工知能の研究成果をふんだんに取り入れ、あくまでも現代の科学と乖離しない形をとり(自然主義)、また哲学のジャーゴン(業界用語)をできるだけ排しているので、かなり可読性が高いものとなっています。多くの哲学書に比べれば、ですが。

これを読むと、やはり現代科学の最大の課題は、人間の意識、人間の思考のメカニズムを明らかにすることなのかなと思います。しかし人間の脳はなにしろ複雑すぎて、すぐに取り組むにはまだ科学的手法が十分に確立されているとはいえず、どういう個別研究をするかという大方針を立てるには哲学の力を借りないといけないのかもしれません。一方で、単純なシステムをまず完全に理解する必要があるという意味では、線虫の神経系の研究なんかも非常に重要であるという思いも強く持ちました。
posted by シロハラクイナ at 14:52| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月23日

Juvenile hormone regulates extreme mandible growth in male stag beetles.

Juvenile hormone regulates extreme mandible growth in male stag beetles.
Gotoh H, Cornette R, Koshikawa S, Okada Y, Lavine LC, Emlen DJ, Miura T (2011)
PLoS ONE 6(6): e21139. doi:10.1371/journal.pone.0021139

G君のクワガタ論文、ついに出ました。幼虫期の栄養条件が前蛹期の幼若ホルモンの濃度に反映され、高い幼若ホルモン濃度だと大顎が大きくなるというストーリーです。実際に幼若ホルモンの濃度を測定していること(これまでの類似の研究ではこれが欠けていることが多い)、幼若ホルモン類似体の投与によって、実際に大顎が長い蛹をつくることができていることがポイントです。また、材料のクワガタがやたらとかっこいいことにも注目。詳しい解説は彼のサイトでどうぞ。

https://sites.google.com/site/hirokigotohstag/
posted by シロハラクイナ at 12:31| シカゴ ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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