生物学・科学に関する雑感。

書籍の紹介が中心です


2011年06月30日

Impact Factor 2010 (インパクトファクター 2010)

さて、今年も新しいインパクトファクター(IF)が発表されました。ざっと見たところ、あまり目立った変化はありません。2年目のPLoS ONEがほぼ同じ数値を保っているのが良いニュースでしょうか。

<以下、具体的な数字を削除しました。>
posted by シロハラクイナ at 01:00| シカゴ ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月29日

来年の夏に新しい生命科学ジャーナルが創刊される

たぶん研究者コミュニティーにとっては大きなニュースだと思うのですが、Howard Hughes Medical Institute, Wellcome Trust, Max Planck Societyが中心になって、新しい生命科学ジャーナルを創刊するということです。最高のジャーナルを目指し、オープンアクセス、少なくとも最初の数年は掲載料も取らないということです。

Three Biomedical Funders to Launch Open Access Journal (Science)

創刊のモチベーションになっているのは、トップジャーナルでは科学者でない人間によって編集が行われ、採否の決定権は編集者にあるものの、科学的妥当性を巡ってレビュワーと何度もやりとりするために査読が長引き、何度も何度も修正やデータ追加を要求されることに対する不満があるようです。

似たような経緯で創刊されたPLoS Biologyは、生命科学誌のトップであるCellを喰ってしまうほどにはならなかったし、前にも書いたように著者から掲載料を取るモデルで経営的に行き詰まり、中位ジャーナルであるPLoS ONEを創刊することで持ち直しましたが、今となっては圧倒的論文数を持つPLoS ONEのほうが主役になってしまった感があります。(例えば、2008-2009の論文数は、PLoS Biology 214に対し、PLoS ONE 6714です。実に30倍以上。)

今回の試みの新しい点は、この3つの母体が圧倒的な資金力を持つことで、正直なところ、ジャーナルが赤字だろうとまったく構わないのでしょう。なので、査読者にギャラを払うという噂まであるようです。

Natureは相変わらずこの手の動きには批判的で、内部のライターを使って「ビジネスモデルが見えない」と書かせていますが、今回の動きは営利目的ではないので、まったく的はずれでしょう。PLoSのときには、批判的な割にはNature CommunicationsやScientific Reportsなどを創刊して、対抗意識まるだしでしたが、さて今回はどうなるでしょうか。

Three major biology funders launch new open access journal, but why exactly?

私個人的には、やっぱりCellやNatureを喰うところまでは行かず、PLoS BiologyやCurrent Biologyあたりと一緒に団子になると予想しておきます。でも、もしも本当にトップを奪ったら快挙なので応援したいです。
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2011年06月28日

解明される意識

解明される意識 [単行本] / ダニエル・C. デネット (著); Daniel C. Dennett (原著); 山口 泰司 (翻訳); 青土社 (刊)

かなり長い時間をかけて、やっと読了。たいへん面白かったです。

本書では、多くの人が漠然と信じている、人間の意識には中心のようなものがあって、多くの情報を取捨選択し統合してアウトプットしているという考え方を「カルテジアン劇場」と命名して批判し、そのか代わりとなる仮説として「多元的草稿」モデルというものを提示しています。たぶん研究者にとってはおなじみの、書きかけの色んなバージョンの原稿がごちゃごちゃになっている状態、これが人間の意識の状態である、と。

モデルを説明するにあたり、コンピューター、人工知能の研究成果をふんだんに取り入れ、あくまでも現代の科学と乖離しない形をとり(自然主義)、また哲学のジャーゴン(業界用語)をできるだけ排しているので、かなり可読性が高いものとなっています。多くの哲学書に比べれば、ですが。

これを読むと、やはり現代科学の最大の課題は、人間の意識、人間の思考のメカニズムを明らかにすることなのかなと思います。しかし人間の脳はなにしろ複雑すぎて、すぐに取り組むにはまだ科学的手法が十分に確立されているとはいえず、どういう個別研究をするかという大方針を立てるには哲学の力を借りないといけないのかもしれません。一方で、単純なシステムをまず完全に理解する必要があるという意味では、線虫の神経系の研究なんかも非常に重要であるという思いも強く持ちました。
posted by シロハラクイナ at 14:52| シカゴ ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする