生物学・科学に関する雑感。

現在ウィスコンシン・マディソンに研究留学中

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2009年12月12日

Quantitative trait loci affecting the difference in pigmentation between Drosophila yakuba and D. santomea.

Quantitative trait loci affecting the difference in pigmentation between Drosophila yakuba and D. santomea.
Carbone MA, Llopart A, deAngelis M, Coyne JA, Mackay TF.
Genetics. 2005 Sep;171(1):211-25. Epub 2005 Jun 21.

Drosophila santomeaとyakubaは交配できるため、体色の違いをもたらしている変異を、QTLマッピングの手法で染色体上に位置づけることができます。32のSNPsマーカーを用いて、といってもPCR産物を制限酵素で切断して確認するというローテクですが、とにかく染色体全域をカバーするようにマーカーを設定するのは大変だったでしょう。(当時はまだyakubaのゲノムは公開されていませんでした。)

結果、オスとメスで効果は違うものの、体色の違いをもたらしている4つの主要なQTLが同定されました。しかし、それぞれのQTLの近傍には膨大な数の遺伝子があるため、どの遺伝子領域がQTLの実体であるかは、この時点では不明でした。
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コメント承認制

最近スパムが多いので、しばらくコメントを承認制にします。ご迷惑をおかけします。
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2009年12月11日

Evolutionary novelties in islands: Drosophila santomea, a new melanogaster sister species from São Tomé.

Evolutionary novelties in islands: Drosophila santomea, a new melanogaster sister species from São Tomé.
D Lachaise, M Harry, M Solignac, F Lemeunier, V Bénassi, and M L Cariou
Proc Biol Sci. 2000 August 7; 267(1452): 14871495.

この論文により、モデル生物であるキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterに近い数種で構成するmelanogaster subgroupに、新しいメンバーであるDrosophila santomeaが加わりました。

アフリカ大陸の西側にある島、Sao Tomeの、標高が高い場所のみに生息するsantomeaに最も近縁なのは、yakubaという種で、こちらはアフリカ大陸に広く分布しています。これらは交配可能な程度に近縁ですが、分子系統樹では明瞭に分かれます。最も目につく形態上の違いは、yakubaが他の近縁種とよく似た体色(メスは黄色と黒の縞模様、オスはそれに加えて腹部の後端が黒い)であるのに対し、santomeaは黒色の色素がほとんど見られず、黄色一色に見える腹部を持つ、ということです。

明瞭な表現型を持つ姉妹種が見つかり、かつモデル生物にもごく近縁であるので、表現型の進化を解析するのに最高の系となりえます。実際にこの発見をきっかけに、多くの重要な論文が書かれることになります。
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2009年12月10日

てこ入れ?

若手、外国人研究者支援てこ入れ 科学技術予算で首相表明

政府の総合科学技術会議が9日、首相官邸で開かれ、議長の鳩山由紀夫首相は「若手が冷遇され、外国人に狭き門となっている日本の特徴を克服しないと、科学技術で世界をリードできない」と述べ、行政刷新会議の事業仕分けで予算削減を求められた若手・外国人研究者の育成、支援にてこ入れする姿勢を明らかにした。(47ニュース、共同通信)

http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120901000957.html

これで一安心というところでしょうか。


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2009年12月09日

modENCODEとDrosophila8種のゲノム

modENCODEプロジェクトというものがあります。ショウジョウバエと線虫を対象に、ゲノム中に含まれるエレメントをすべて見つけ出し解析するというもののようです。

http://www.modencode.org/

見てみると、ChIP-Chipのデータが出つつあるようで、ハエの転写因子だと、dll,bab1, Enなどの結合サイトが、ゲノム全領域にわたって見られるようになっています。また、Insulatorの位置予測もされており、私がいま行っている解析にも有用な情報でした。(クロマチン制御関係の因子のデータも豊富ですが、それが何を意味するか、残念ながら私にはさっぱりわかりません…。)このまま多くのデータが蓄積されていけば、エンハンサーの解析に非常に強力なツールになりそうです。

modENCODEに関しては、他にも注目すべき情報があり、エレメントを探索するために有用と称して、さらにDrosophila8種(と線虫7種)のゲノムを読む予定のようです。現状でどこまで進行しているのかはわかりませんが、NHGRIのサイトに掲載されているので、近いうちに公開されるでしょう。いまどき、読むのは一瞬なので、アノテーションして閲覧可能にする部分に時間がかかるものと思われます。ハエの場合はすでに12種のゲノムがありますし、自動でどこまでアノテーションできるものか。

NHGRIが関わっているゲノムプロジェクトのリスト
http://www.genome.gov/10002154

Drosophila8種、線虫7種ゲノムのホワイトペーパー
A Proposal for Comparative Genomics in Support the modENCODE Project (pdf)

ちなみに、Drosophila8種とは、biarmipes, bipectinata, elegans, eugracilis, ficusphila, kikkawai, rhopaloa, takahashiiとなっております。このラインナップを見ると、誰が関わっているかバレバレですが…(C研OBのK氏です)。

自分の興味のある生物のゲノム配列が欲しいとして、シークエンス自体の値段は急激に安くなっていますので、読むこと自体よりも、アノテーションをどうするかが課題になってくるでしょう。このような大きいプロジェクトに乗ってしまえば、最高の技術を持った人たちがアノテーションしてくれるわけですから、なんともうまい方法を考えたものだと感心しました。
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2009年12月03日

虹の解体


虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

  • 作者: リチャード ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本




ドーキンスの1998年の著作”Unweaving the Rainbow”の翻訳版で、2001年に出版されています。

メモしておきたいフレーズは数多くありますが、何と言っても、このご時世に、心に響く一節がありましたので長くなりますが引用しておきます。

しばしば狭量な評論家が質問するー科学の役割とはいったい何か、と。いま述べたことが答えだと私はいいたい。誰が書いたのかはっきりしないが、こんな逸話がある。あるとき、マイケル・ファラデーが同じ質問を受けた。科学はいったい何に役立っているのか、と。ファラデーはこう質問しかえした。「では、生まれたばかりの赤ん坊はいったい何に役立ってますか」。別に話の主人公が、ベンジャミン・フランクリンであろうが誰であろうが、この話の謂は、赤ん坊は今の時点では何の役にも立っていないけれども、未来に対しては大きな可能性を秘めているということだろう。私は、この話に別の意味を持たせることができると思う。この世に生まれた赤ん坊の役割は、確かに職を手につけて働くことであろう。しかし、すべてのものごとの判断基準をその”有用性”だけにおき、生を受けたことの有用性は生きていくために働くことというのなら、それは不毛な循環理論にしかならない。生を受けたことの意味を問うのなら、何らかの価値がそこに付与されなければならない。生きるために働くといった目的本意な説明ではなく、生きること自体に何らかの意義づけが必要である。その意義付けとは、芸術支援に税金が使われてよいとする理由にもなろうし、希少種の保存や歴史建造物の維持を正当化する理由にもなろう。野生の象や古い建物を保存するのは、そこから何らかの経済的利益が見込めるからだという輩がいるが、こういった連中に有効に反論できなければならない。科学に関してもまったく同じである。もちろん科学は利潤をもたらし、科学は役に立つ、しかし、それが存在意義のすべてではない。

科学は赤ん坊と同じで、我々の未来そのものです。新しい産業のもととなる、という意味でも、生きる希望をもたらすという意味でも。自信を持って行きましょう。
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2009年11月22日

事業仕分け5

このブログの影響力なんてショウジョウバエの1齢幼虫並みに小さいけれど、読んでくれている人の行動に少しでも影響を与えられたとしたら嬉しいです。草の根の活動が、積もり積もって大きな力になると信じつつ。

さて、色々な学会の公式声明も出たことだし、文科省の意見募集の締め切り(噂されていた実質的な締め切り11/20、確かにこの日までの集計がマスコミに流れた)も過ぎたことですし、若手の皆さんはここで一息といったところでしょうか。

あとはニュースウォッチをしつつ、適切な行動をとっていけばいいのですが、実際に若手支援がどのくらい削られるのかは、予算編成次第ということになります。そして、最後には政治的な決断となるはずです。

では、現状での「つつきどころ」はどこでしょうか?

政府内の構図を考えるに、行政刷新担当大臣の仙谷由人氏、および財務大臣の藤井裕久氏は、科学技術関連予算を削りたい立場、反対に、菅副総理(科学技術担当大臣を兼任)と鳩山首相は、削りたくない(少なくとも大きく削ることには賛成しない)立場のようです。こういう場合には、菅氏および鳩山氏に、「どうかよろしくお願いします」的なメールを送ったらどうでしょう?スパコン事業は、どういうわけか菅氏を見方につけることに成功したようです。

菅副総理スパコン復活に前向き 事業仕分けには異論(産經新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091120/stt0911201808005-n1.htm

鳩山首相は、このところ孤立しがちな菅副総理をたてるような言動が見られますし、首相自身も、科学技術予算増額論者のようですので、私は、スパコンは復活すると見ました。若手支援が復活するかどうかの鍵は、同様に管氏の動きにあると思います。

あとは、ひな壇ではナンバー2の位置にある「ハトを守るカメ」も味方につければ万全かもしれません。彼は財政出動派ですし、発信力もありますし。

研究に忙しいことと思いますが、お時間のある方はメールでも。

首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

菅直人公式サイト「ご意見箱」
http://www.n-kan.jp/contact/index.php

亀井静香公式web ご意見・お問い合わせフォーム
http://www.kamei-shizuka.net/inquiry/index.html

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2009年11月19日

事業仕分け4

Nature Newsに、事業仕分けの件が掲載されたようです。
http://www.nature.com/news/2009/091117/full/462258a.html

過去の記事では、鳩山首相は、科学研究予算を増額すべきと言っているんですがね…。
http://www.nature.com/news/2009/090819/full/460938a.html
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事業仕分け3 (今日、明日のうちに!)

事業仕分け対象事業に関する、文部科学省の意見募集について。

今日、明日中に投稿されたメールの数が、政策決定に重要な意味をもつ、との情報があるそうです。(社会性昆虫コンソーシアムのメーリングリストで流れている情報です。)

http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm

「件名(タイトル)」に事業番号、事業名を記入し、担当副大臣、政務官にメールをしてください。もう一押し、がんばりましょう!
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2009年11月18日

遺伝子の川


遺伝子の川 (サイエンス・マスターズ)

遺伝子の川 (サイエンス・マスターズ)

  • 作者: リチャード・ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 単行本




ドーキンスによる読み物。原著は1994年刊行で、サイエンスマスターズという企画の第一巻なのだそうです。

ドーキンスにしてはさらっとしていて読みやすいほうです。ミトコンドリアイヴやミツバチの八の字ダンスの話など、話題は聞いたことのあるものばかりですが、切り口がおもしろいというか、その現象が真に意味するところをドーキンス風にねちっこく取り上げています。

3章で触れられている、昆虫の視覚とフリッカーに関する記述は未消化。
「また、縞模様はわれわれにとって静止した模様である。そのそばをかすめるように飛ぶ昆虫にとって、それは「フリッカー」に見え、正しい速度で明滅するストロボとそっくりに見える。」
この記述の根拠、特に昆虫とヒトの視覚の違いについてご存知の方がいらしたら教えてください。(ヒトでも、高速で移動する縞模様は明滅したり、融合したりして見えると思うのですが。視覚の仕組みと、フリッカーの出現にどのような関係があるのでしょうか。単に時間分解能の違いとも思えません。それとも、視覚の違いというより、昆虫が高速で飛行しながら物を見ている、というところがポイントでしょうか。)
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2009年11月17日

事業仕分け2

オンライン、オフライン、あちこちで、事業仕分けの研究関連の項目について、どのようなアクションをとるべきか、という議論が起こっているようです。こういう場面ではメーリングリスト、ブログ、ツイッターなどが便利ですね。私はオフラインでの議論には参加できませんが、出来ることを探して行動していきたいと思います。大げさに言えば、我々若手研究者にとって、存亡をかけた戦いですので。

これまでの議論を見ていくと、学会のトップが連名で声明を出す、という流れになりそうなので、その件は当事者の先生方に期待したいと思います。

さて、何の肩書きもない我々ができることは何か、と考えると、署名や、文科省・民主党への個別の意見投稿が思いつきますが、それ意外に、地元選出の民主党議員に意見を送るというのが、ある程度の効果がありそうに思います。特に次回の参院選で改選の予定の議員は、有権者の意見に多少なりとも耳を傾けざるを得ないでしょう。

例えば、東京都選挙区で次回2010年に改選を迎える民主党議員は、小川敏夫氏、蓮舫氏です。東京大学はじめ、東京都内の大学に所属する若手研究者は膨大な数に上ると思いますので、彼らが有権者の一人として、一斉に意見を送れば、何らかの効果が望めるのでは?意見が物理的にかさばるFAXだと、さらに効果的かもしれません。

小川敏夫氏 info@ogawatoshio.com
練馬事務所 FAX:03-3992-5799
議員会館 FAX:03-3593-0577

蓮舫氏 info@renho.jp
議員会館 FAX:03-5512-2214

このブログの読者は東京、札幌の方たちが多いようなので、北海道のほうも挙げておきますと、2010年に改選を迎えるのは、峰崎直樹 財務副大臣です。

峰崎直樹氏 sapporo@minezaki.net
札幌事務所 FAX:011-280-0150
議員会館 FAX:03-3503-3870
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2009年11月14日

事業仕分け

若手研究者養成のための科学技術振興調整費(同125億円)と科学研究費補助金(同330億円)も削減との結論。
(47NEWSより)

行政刷新会議 「事業仕分け」 評決結果 3日目 第3ワークンググループ (pdf)

一番削ってはいけないところをやってしまいましたね。若手の皆さん、生活に困ったらアメリカに亡命しましょう。

<追記>
投げやりなことを書いてしまいましたが、日本の科学研究の将来に関する深刻な問題であるので、なにか自分にできることはないかと考え、文部科学副大臣の先生に深刻な文面のメールを送りました。読んでもらえるといいのですが。

<追記>
鈴木寛副大臣、中川正春副大臣、後藤斎政務官、蓮舫議員にメールを送りました。またNatureの東京事務所に、本件を取り上げてくれるようメールしました。

何もせずに愚痴を言っていてもしかたないので、皆さんも意見を送ってみてはいかがでしょうか。

「行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください」
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm
鈴木寛副大臣、高井美穂政務官宛 suz-tak@mext.go.jp
中川正春副大臣、後藤斎政務官宛  nak-got@mext.go.jp
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2009年11月13日

見える光,見えない光:動物と光のかかわり


見える光,見えない光:動物と光のかかわり (動物の多様な生き方 1)

見える光,見えない光:動物と光のかかわり (動物の多様な生き方 1)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2009/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




動物の視覚や体色、体内時計などに関する総説集。進化学会@札幌の会場で購入、日本国内を移動中に読んで、その後、船便でアメリカまで輸送され、いま再び手元に来ました。

内容が盛りだくさんで、とても勉強になりました。特にロドプシンについての概説や、複眼の構造についてなど、いままで見たどの教科書よりも丁寧でわかりやすいです。
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2009年11月12日

Is genetic evolution predictable?

Is genetic evolution predictable?
Stern DL, Orgogozo V.
Science. 2009 Feb 6;323(5915):746-51.

またプリンストンからのレヴュー。昨年Evolutionに出たものと似ていますが、少し別の例も出して、形質の進化を引き起こした具体的な遺伝的変異をどのように予測するか、について述べています。

こういうメタ解析的なことは最近の彼らの得意とするところで、よく事例をこれだけ集めるなと感心するばかりですが、例えば形態の進化において、種間の違いはcisの変化による場合が多く、種内や家畜化、栽培化の場合はタンパク質のコード領域にnull mutationが入っている場合が多い、というのはなるほどと思いました。

null mutationによってタンパク機能が失われても、ローカルな集団では環境次第で特に問題なく生存してしまうけれど、そのタンパク機能が再び戻ってくることはないわけで、環境適応への柔軟性を失っていると言えるでしょう。このようなローカルな進化には、ドリフトの効果が強く出るわけで、集団遺伝学の視点が欠かせない、と。

近年、彼らは集団遺伝学とEvo-Devoを融合させようという試みをしていると聞いています。関連する書籍も準備している模様です(polyphenismさんによる紹介にリンク)。なぜ集団遺伝学なのかよくわからなかったのですが、このレヴューを読んで、彼らの考えが少しだけわかりました。(ちなみに、我々のボスは集団遺伝学をあまり評価していません。派手好きだからでしょうか。このあたりが、緻密なDLSさんとの大きな違いだと思います。)
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2009年11月11日

「自分の時代」の終わり


「自分の時代」の終わり

「自分の時代」の終わり

  • 作者: 宮崎 哲弥
  • 出版社/メーカー: 時事通信社
  • 発売日: 1998/08
  • メディア: 単行本




宮崎哲弥氏による評論集。主に雑誌に書かれた記事や短い評論、対談などの寄せ集めです。前半部分はサブカルチャーや世相に関する評論が主なので、あまり読んでも仕方ありませんが、第4部の対談集「神なき時代に信仰を問う」が非常に面白いです。

宮崎氏はどの宗教団体に属しているわけでもないけれど、自身を中観派の仏教者としています。前にも書きましたが、この思想は一見ニヒリズムのようだけれどそうではなく、科学や機械論的唯物論とも相性が良い、魅力的な考え方です。般若心経に出てくる、色即是空というやつです。
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2009年11月10日

Deep homology and the origins of evolutionary novelty.

Deep homology and the origins of evolutionary novelty.
Shubin N, Tabin C, Carroll S.
Nature. 2009 Feb 12;457(7231):818-23.

仲良し3人組で、「またなんかやろうぜ」という企画で書いたレビューだそうです。同じ3人で97年にもレビューがあるのですが、それを踏まえて、ダーウィンイヤーの企画として現代版に仕立てたとのことです。筆頭のShubin氏は、ヒトのなかの魚、魚のなかのヒトの著者でもあり、エボデボ界のリーダーのひとりと言えるでしょう。Tabin氏も、魚類やダーウィンフィンチなど幅広い材料を用いてすばらしい仕事を続けている方です。

このレビューの主眼は、Deep homologyという概念を、最近のEvo-Devoの成果を取り入れた上で再考するというものです。概念自体は、97年のレビューで提唱していたものですが、さらに事例を積み上げようということです。

例として挙げられているのは、後生動物の眼、脊椎動物の鰭と脚、甲虫の角、です。個別にどのような議論がされているのかは、本文をご覧下さい。いずれも、古典的な定義では相同と呼べない構造について、遺伝子発現の類似性を示します。さらにはその遺伝子発現は祖先を共有するらしいこと、そして、構造からは相同性を追跡できないほどに時間が経過した器官どうしに、メカニズムレベルでの「相同性らしきもの」を見出し、このような状況を指し示す用語としての”Deep Homology”を再び提唱しています。

ちなみに、97年の論文はこちら。
Fossils, genes and the evolution of animal limbs.
Shubin N, Tabin C, Carroll S.
Nature. 1997 Aug 14;388(6643):639-48.
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2009年11月07日

Real-time DNA sequencing from single polymerase molecules.

Real-time DNA sequencing from single polymerase molecules.
John Eid et al.
Science. 2009 Jan 2;323(5910):133-8. Epub 2008 Nov 20.

こちらも第3世代シーケンサーについてですが、今年の1月に出ていた論文。巷でも期待されているらしいPacific Biosciences社の技術で、ポリメレースを基盤に固定し、蛍光標識したdNTPの取り込みをリアルタイムで見る方法。

製品化にどれだけ近いかはわかりませんが、潜在的には、ひとつのリードが1000 base以上で、読み取り自体は従来の次世代シーケンサーより4桁速いそうです。(いわゆる次世代シーケンサーは、反応と洗いを繰り替えすので、読み取りは超遅く、読み取り部分を大量に並べることで遅さを補っている。)あとはこの方法でも読み取り部分をたくさん並べれば、大量のアウトプットが可能になりそうです。

私が日本に帰る頃には、若手Bで払える金額で、自分の好みの昆虫のゲノムを受託で読んでもらえるようになりそうです。本気で期待しています。ショウジョウバエ120種ゲノムプロジェクトとか、始まりそうな予感も…。
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2009年11月06日

Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays

Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarray.
Radoje Drmanac et al.
Published Online November 5, 2009
Science DOI: 10.1126/science.1181498

報道で知りました。Science Expressに論文が出ているようです。第3世代シーケンサーの宣伝を兼ねた論文のようですが、コストが低いのがポイントらしく、ヒトゲノムが$4400で読めるようになるというふれ込みです。

DNA断片を増幅してssDNAがボール状にまとまったもの(DNA nanoballs)を作り、これを基盤に固着させたうえで、ラーゲーションベースの方法で、ボールひとつにつき62-70 baseを読めるとのことです。

Complete Genomicsというベンチャー企業からの論文ですので、おそらく近いうちに、パーソナルゲノムのシークエンス、解析サービスでも始めるのでしょう。

ヒト以外の生物でも受けてくれるかはわかりませんが、方法からして、まったくゲノム情報がない生物ではアセンブリが無理かな?もう少し一つのリードが長い方法で、1〜2× くらいで読んでおいて、あとはこの方法で量を稼ぐ、というのがいけそうですがどうでしょうか。
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2009年10月29日

Intraspecific polymorphism to interspecific divergence: genetics of pigmentation in Drosophila

Intraspecific polymorphism to interspecific divergence: genetics of pigmentation in Drosophila
Patricia J. Wittkopp, Emma E. Stewart, Lisa L. Arnold, Adam H. Neidert, Belinda K. Haerum, Elizabeth M. Thompson, Saleh Akhras, Gabriel Smith-Winberry, Laura Shefner
Science 23 October 2009:
Vol. 326. no. 5952, pp. 540 - 544

筆頭著者はC研の先輩で、現在はミシガン大学で独立されている方です。北米のショウジョウバエ、Drosophila americananovamexicanaは、姉妹種でありながら体色が大きく異なっていることが知られていました。americanaが黒、novamexicanaが黄色です。先行研究で、いくつかの遺伝子座がこの違いに関わっていることが推定されていましたが、具体的な遺伝子座にまでは落とせていませんでした。

今回、著者たちはintrogression(この場合の適切な訳語は浸透性交雑でOKでしょうか)によって、体色に違いをもたらす遺伝子座をマッピングし、それがebonytanという、キイロショウジョウバエでもよく知られた体色関連遺伝子に強く連鎖していることを示しています(つまりこれらの遺伝子そのものが正体である可能性が高い)。

ebony近傍は逆位があるため、さらに詳細なマッピングは困難なので、ここでtanに解析を絞り、tanの第1イントロン近傍にまで絞り込みました。piggyBacを用いてamericanatan遺伝子座をnovamexicanaへ導入すると、実際に体色が濃くなるとのこと。

実はamericanaには集団中に体色の多型があり西に行くに従って体色が薄くなる傾向があります。そこで由来の異なった複数の系統を調べてみると、novamexicanaのalleleに酷似したものが見つかりました。つまり、novamexicanaの薄い体色は、americanaの集団中に元々存在していた、体色を薄くするalleleを創始者効果で拾い上げたものか、あるいはnovamexicanaのalleleが遺伝子浸透によってamericanaに広まったか、いずれにしろ、種内多型と種間多型をもたらしているalleleが同一のものだった、というのがこの論文のうりのようです。

テクニカルな面でも、pyrosequenceを使ったり、melanogasterではない種で遺伝子導入をしたり、結構攻めているという印象です。
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2009年10月21日

h 指数

Impact Factorについてばっかり書くと怒られるので、今日は別の指数について書こうと思います。

h指数、またはh-indexと呼ばれるもので、恐ろしいことに研究者個人に点数がついてしまいます。計算方法は至って簡単で、「その研究者が公刊した論文のうち、被引用数がh以上であるものがh以上あることを満たすような数値」ということです。

ここで引用件数と論文の本数が同じhを満たさなければいけないところがポイントで、どんなに高いインパクトの論文を書いても、ただ一報しか書いていなければ、その研究者のh指数は1。どんなに沢山書いても、最大で1回しか引用されていなければ1。

年数を経るにつれ、引用件数は増えることはあっても減ることはないですし、論文の本数も徐々に増えていくでしょうから、年長者が有利なのもポイントです。論文自体の引用件数に基づいていますし、年月を経てから評価される論文も数値に反映されてきます。良い仕事をコツコツ続けた結果が反映されるので、良い指標なのではないでしょうか。

数値の最も高い生物学者は、神経科学者Solomon H. Snyderで、h=191だそうです。

その後に書くとギャップがすさまじいですが、私のh指数は6でした。
(これを引き上げるためには、被引用回数が5〜6回の論文を、頑張ってあと1〜2回、自己引用すればいいわけですが…。操作が効くのはレベルが低いからですが…。)

研究者のキャリアは、特にごく若い頃は論文があるかないか、若手〜中堅になってくるとそれなりに高いインパクトが必要で、ベテランは質と量の両方が重要、と思うのですが、h指数はうまくそれにフィットする気がします。
posted by シロハラクイナ at 09:39| シカゴ 曇り| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする